カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

チエちゃん奮戦記11~12話脚本:同氏作品に散見される中性要素が、男臭さを中和。女性キャラ無しでもニャンとかなる?

 (Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくならないですが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見えます)

前回でも、同氏の描く精神疾患描写はリアルで対処も凄いと書いたが、今回も冒頭で、ジュニアが季節性鬱を発症している(毎年の事で、春に多い)。そのせいで、何日もジュニアと小鉄が帰宅しない。心配になった百合根はチエを伴い二匹を探しに行く。

ジュニア達を探しに行く際、百合根がチエの頭をなでる(同氏特徴)。無印の高屋敷氏脚本回にて、百合根に別れた妻子がいる話があり、実は彼は子供の扱いが上手い様子が見て取れる。画像はXMEN脚本と今回。 https://t.co/hmSjFt2RFM

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桜が美しいひょうたん池周辺で、チエ達はジュニアらを探すが見つからず。百合根によると、ジュニアは花見が嫌い(春鬱によくある)。

その頃、ジュニアは隅っこに立つ桜の下で酒盛りをしていた。(精神疾患→アルコール依存)。小鉄はそれを見てあきれる。

ジュニアはぽつんと立つ桜を「こいつ」と呼び、俺らのために待っていたみたいだと言う(特徴:自然もキャラ、ぼっち救済)。小鉄は、百合根もぼっち(特徴)だと指摘し、帰るよう促す。小鉄は先に帰る。https://t.co/FOhvkjndhH

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小鉄と入れ違いに、ジュニアはエイハブという、ただならぬ雰囲気の猫と会う。エイハブはモービーディックという恐ろしい猫に復讐するため旅をしていた。ところでエイハブ、元祖バカボン同氏演出に出るガンクツ王に格好が似てる。彼も復讐鬼。https://t.co/cxVxqhOXsx

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ジュニアは、モービーディックとは、過去に様々な異名を持っていた小鉄のことかもしれないと思い、エイハブに小鉄のことを教える。ところで1期の小鉄とジュニアの過去話も高屋敷氏脚本。その時の小鉄の異名は「月ノ輪の雷蔵」。滅茶苦茶ハードボイルドな話。

この話も猫パートはハードボイルドで、台詞まわしもドスが効いてる。異色ハードボイルド回だったルパン3期脚本に近い:https://t.co/jJ6RiB9avh
どこを切り取っても渋い。

一方帰宅した小鉄はチエに怒られ、ジュニアが帰るまで百合根の所へ行けと言われる。
入れ違いにエイハブはチエのホルモン屋に着き、銛で襲撃。銛はテツの顔のそばをかすめたので、テツも百合根の所に避難する。テツの避難場所が百合根の家なのも、1期からの継承。

百合根はテツ対策として、隠し持っていたウイスキーで酒乱モードになっていた。酒乱状態なら百合根は西萩最強クラスなのも1期からの継承。+着物を脱ぐと酒が出て自己が豹変するのも、同氏特徴の脱衣演出?https://t.co/AFMVw2i0Fn

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結局、百合根、テツ、小鉄、悪いタイミングで帰宅したジュニアで百合根家は大騒動になり、ミツルも巻き込んでカオスに。一方チエは、銛で破損した食器棚を粘土で補強し、ヒラメに塗装を頼みに行く。ヒラメとチエが到着すると、エイハブが店に陣取っていた。

エイハブの異様さに押されたチエ達は一旦百合根の所へ行くが、テツ達は騒動の末2階から落下し気絶していた。ジュニアは小鉄がモービーディックではないのかと小鉄に問うが、小鉄は完全否定。その頃、桜の下、本物のモービーディックがやって来ていた。

小鉄はジュニアに、チエ家に行って真相を説明しろと叱る。その際、ジュニアが拾ったエイハブの銛を、小鉄が預かる。その頃、背中に銛が刺さった姿のモービーディックは「春の陽気がこの痛みを忘れさせてくれる」(特徴:自然もキャラ)と桜の中を歩いていた。

モービーディックは銛の痛みを癒すため、桜前線に沿って旅をしていた。春がダメで心にダメージを受けるジュニアと、身体的外傷を春で癒すモービーディックは対照的。そして遠近で銛だけを発見したモービーディックは、小鉄をエイハブと間違え石を投げつける。

ここも銛がアップになっており、銛がエイハブを表すキャラと主張している(1枚目)。

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一方、石がヒットした小鉄は気絶、次回へ。舞い上がる花びらが、らんま脚本とシンクロ(2枚目)。https://t.co/dzQ6lJa0Dt

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このモービーディック、桜と陽気を「おまえ」と呼び、おまえだけが癒してくれる、と言う。一歩3期沢村戦脚本での、「信じられるのは自分の拳だけ」を彷彿とさせ、孤独気味(特徴)。しかもモービーディックは共食いまでする。一歩を肉に例える沢村と被る。

https://t.co/a8pG6HrJAO

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  • 12話

気絶した小鉄を見てエイハブでないとモービーディックが気付いた頃、エイハブはジュニアから、小鉄がモービーディックではないと説明を受ける。エイハブはジュニアを伴い、現地まで確認しに行く。入れ違いにヒラメとチエがチエ家に戻り、食器棚の修繕に入る。

エイハブは、モービーディックは白猫でサイズも巨大なので、小鉄とは違うとすぐ理解する。
その頃ヒラメはチエの食器棚を修繕。二人は塩せんべいとサイダーでおやつタイムに入る(特徴:飯テロ)。そこへモービーディックが来て、チエの店のホルモンを盗む。https://t.co/SuyfTeGAoX

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チエ達はモービーディックを追いかけるが、迫力に押され、逆に追われる。そして、言い争いをしている小鉄・ジュニア・エイハブと合流。モービーディックは自分でホルモンを焼き食べている所、エイハブと対峙する。台詞の応酬が渋く、ルパン3期脚本ぽい。https://t.co/QKerLwtEfN

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エイハブは、ジュニアと小鉄に決闘の邪魔をするなと宣告。エイハブはモービーディックに仲間を殺され、自身の片足を食われるという壮絶な過去を持っていた。過去の壮絶さは、ジュニア・小鉄も半端ない(1期高屋敷氏脚本)が、小鉄達もドン引き。

仲間を殺され、傷だらけになり復讐…はカイジ脚本にも生きる。エイハブは片足を失い顔に傷、カイジは耳を切り指を切られる。https://t.co/P0WQMPaTgS

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エイハブとモービーディックの決闘が始まるが、本家の白鯨と同じく、モービーディックは水中戦が得意。カナヅチのエイハブはボートで応戦。どこにいるかわからない水面の「間」が同氏特徴的。そしてエイハブのボートはモービーディックに転覆されてしまう。

ヤケクソになった小鉄とジュニア、チエとヒラメもボートを借りる。結局ボート代はチエが払った。エイハブはモービーディックに殺されかけるが、小鉄の必殺玉潰しが炸裂、モービーディックは片玉を取られる。片玉を取られたモービーディックはオカマになった。

その日、モービーディックにホルモンを取られたので、チエは店を臨時休業にする。罰としてチエは猫達を縛って外に出す。オカマになったモービーディックに全猫が迫られ気持ち悪い思いをするのだった。同氏監督作、忍者マン一平でもオカマに迫られる話あり。

https://t.co/fJpr56kzhP

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  • まとめ

とにかく、グループ毎の平行行動と合流点の設置場所の数が凄く多く、緻密。説明するには字数が足りない。あと、1期含めて同氏脚本の猫主体話は、重くてハードボイルド。長年の出崎統作品の演出・脚本経験が生きる?あと宝島D経験も生かしてそう。

そんなハードボイルドな話でも、可愛いシーン(特徴)は沢山ある。

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あと飯テロ。

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 これは、出崎統作品の演出・脚本でも入っていた要素。むさすぎないよう中和する効力があありながら、男の世界は残すようにしている。https://t.co/YzmFFot9Ig

同氏は長年、出崎統作品演出・脚本で男の世界を描いたのに、この話では、ラスボスがオカマになるというのが興味深い。もともと小鉄の必殺玉潰しは、色々な猫をオカマにしたが…。出崎統作品で、男臭すぎる所を中和してきた結果が出てる?

また、これはチエ世界の「白鯨」パロ。後に、同氏と長年仕事した出崎統氏が「白鯨伝説」を監督することになるのが面白い。
白鯨がオカマになってエイハブに惚れるという結末は、漫画原作ならではの奇抜さで、出崎統氏なら卒倒しそう。

このオカマ要素や、男子同士のイチャイチャは、結構同氏作品に出て来るが、それが効じたのか、アカギやカイジのシリーズ構成・脚本では、女性キャラが殆ど出ないのに、ムサくなりすぎない作品世界になっている。これも長年の経験からか。

この「中性要素」、アカギ・カイジ原作(というか福本作品全体)にもあり、それが高屋敷氏の持つ中性要素・男臭さ中和要素と、良い化学反応を起こしたと思う。また、猫がいくら男の世界であっても、チエの一喝で話が終わるのも男臭さを中和している。

帽子やマントを着ていたエイハブは、水中では服を脱がされ、猫らしさを出している。これも同氏特徴「脱衣演出」か。また、小鉄がモービーディックの片玉を取ったのも「脱玉」。結果どちらも自分が変わっている。今回も脱衣演出が活躍していた。

こぼれ話だが、12話は全話中、初めてテツが出ない話だったらしい。11話予告でテツが散々愚痴っていた。こういう、テツ役の西川のりおのアドリブがいちいち素晴らしいw

チエちゃん奮戦記7~8話脚本:テツから学べる!?鬱や過労の対処法

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくなりませんが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見えます)

冒頭、テツが見る夢がシュール。ホルモン型宇宙船に乗ったチエ達に置いていかれる夢。働かない奴は乗せないと言われる。どう見ても同氏脚本参加の、忍者戦士飛影のセルフパロ。今回と飛影脚本回(下段)を並べると凄い https://t.co/CRWRJHXnSH

 とにかく、ぼっちになるのが嫌(同氏特徴:孤独は万病の素)なテツは、一念発起してホルモン屋の切り盛りを再開する。エプロン・ホウキ姿が、これまた同氏脚本・最終シリ構の、めぞん一刻のセルフパロ的。 https://t.co/4UA6QGwhBb

チエはテツのエプロン姿が嫌で、お好み焼き屋にて、テツは病気だと百合根やヒラメに嘘をついてしまう。そして、チエ達と入れ替わりに、相撲取り達がお好み焼き屋に入って行く。こうして今回も、安定気味の西萩にゲストが来ることで話が動いていく。

テツがホルモン屋で働くのを再開しようとするのは、1期にもあった。その時も今回も、おジィはん(テツ父)が喜び、そして心配する。女性陣が圧倒的に強い西萩組において、おジィはテツの意外な繊細さを知る数少ない人物(もう一人はミツル)。これも1期からの継承。

だがテツがホルモンをどんなに焼いても、びびって客が来ない。ところでホルモンを焼きすぎるのも、1期にてチエがヤケクソになった時にやっていて(これも高屋敷氏脚本)、親子そっくり。これも1期を覚えてないとならない。ちなみに1期は50話近いから凄い記憶力

そこへ百合根がやって来て、相撲取りがお好み焼きを食べ続けているのでチエに手伝ってほしいと言う。テツが病気という嘘を信じ、ホルモン屋が休みと思ったからである。嘘はばれるが、チエは百合根のヘルプに行く。嘘がばれるとシラを切るチエの性格も1期からの継承

その頃、百合根の店では相撲取り達がお好み焼きを食べまくり、猫のジュニアや小鉄まで店を手伝っていた。猫達も可愛い(特徴)。高屋敷氏特徴、飯テロの嵐! https://t.co/03HB1ni87X

下記はカイジ脚本との比較。どちらも、物凄く食べたくなる。

関取は連敗続きで、ゲン直しのための飲食店を探し求めていたのだった。関取の名は鰻谷 。ヒラメとチエの会話が幼く可愛い(特徴)。画像は可愛い集。 https://t.co/YNqYdT3PaF

下記はDays脚本との比較。Days脚本の話になるが、言葉では建前を言っていて、ボールに本音をこめて渡している。心を伝えるキャラクターとしてボールが活躍しており、非常に高屋敷氏らしい特徴。 

話を戻すと、関取達は未だ連敗続きなので、今度はホルモンを食べに来るという。一方テツは、知り合いやヤクザを脅して予約を取り付ける。カルメラや百合根の本音として、テツが働いたりすると迷惑…というのが出てくる。これも1期から続く、西萩連中によるテツの飼い殺し。

テツの強制招集と関取の分の準備で、おジィはんとテツは張り切る。準備のやり方について説教するチエと、カイジ脚本のおっちゃんの動きが奇跡的にシンクロw 

https://t.co/a2lqeuH6Ru

そうこうするうち、関取達がやって来て、ホルモンを食べまくる。 

関取達のせいで店は貸切になり、テツが集めたヤクザ達は外でホルモンを食べさせられる。ヤクザ達の(ぬか)喜び方が可愛い(特徴)。画像は今回、カイジ・飛影・ワンナウツ・Days脚本、忍者マン一平監督 https://t.co/StFSDyp1mN

チエ・テツが外にいる客にも正規の値段を請求するネタは、1期高屋敷氏脚本にもあった。百合根とカルメラが、それに慣れているセリフも出てくる。 かくしてテツは店の繁盛をチエに自慢するのだった。8話へ続く

  • 8話

前回からの続きということでチエのナレが入る。ナレの上手さも高屋敷氏の特徴で、監督作の忍者マン一平では、学校仮面という、ナレーターとしてのキャラが出てくる。まさにナレとキャラがかけあいをするかのような妙技は、カイジ脚本・シリ構にも生かされている。

テツのホルモンを食べまくった関取の鰻谷は勝利する。皆で見ている相撲中継、白黒なのもあり、ジョー1高屋敷氏脚本疑惑回に似てる。スローになるのもシンクロwまた、試合実況や解説の上手さも同氏特徴。 https://t.co/cybaAbyuBu

関取の鰻谷は、連日勝ちまくり、その度にテツのホルモンを食べに来るようになる。連日のホルモン焼きに、テツは疲弊するようになる。今問題になってる、ワンオペ先取りw他作品の鬱病対処の見事さや先見の明といい、同氏作品の精神疾患描写は何故か鋭い。

さらに追い討ちで、他の相撲取りも、ゲンかつぎにテツのホルモンを食べに来る。そして全員勝ち続け、まさに野獣のようにホルモンを連日貪り食うようになる。画像は食べカスのシンクロ。今回・らんま・カイジ脚本 https://t.co/7Kdp00sIGl

テツは疲弊し、昼間は寝込むようになる。相撲取りが勝つ度チエ達は喜ぶが、おジィは喜べなくなり、テツを心配する。テツの繊細さがわかるおジィだからこそで、1期の同氏脚本でも、喧騒を離れて二人でラーメンを食べる名場面がある https://t.co/xxIFzGTWIF

テツは疲弊しつつも、天丼やホルモンで無理にスタミナをつけ、連日店に立つ。そのうち相撲取りのばらまいた串がテツの頭に刺さり、段々テツの様子がおかしくなる。そして大阪場所が終わりに近付いた日、鰻谷達が弟子をいじめているのを、テツが目撃する。

テツは弟子の浴衣を奪い、弟子に変装する(特徴:脱衣演出)。そして、弟子をいじめた連中を一気に倒す(特徴:大逆転)。かくして相撲取り達は全員負傷・不戦敗に。自分を取り戻したテツは満足するのだった。 https://t.co/yCs55wwnwq

  • まとめ

テツが働こうと思った、もともとの目的はチエに見捨てられて一人ぼっちにならないようにするためだった。なのに、働きマシーンとしてテツは一人ぼっちになったあげく、「テツの焼くホルモンを食べに来るんやで」とチエにすらワンオペを強要される。

この、自分がやるしかないという疲弊→寝込みは、過労による鬱病手前の状態。他作品含め、高屋敷氏が、精神疾患について何故ここまで先見の明があるのかは、多いに興味深い。もっとも、チエ世界は原作からして、猫のジュニアすら季節性鬱にかかっている。

同氏「はだしのゲン2」脚本では、ゲンや孤児達は、鬱病老人を家族として迎え、何も強要せず、ゆっくり自主的に動けるようになるよう見守る。
今回の場合、テツは体力と強さと無責任さに長けているので、自分を取り戻すことができた。無責任であることも鬱対処の一つ。

また、「自分の道を行く」のも高屋敷氏ポリシーである。なんだかんだ、いじめられてる人を鉄拳で救ったことになったことこそテツの道であり、最後にテツは「ただのホルモン焼き屋やと思うなよ」と高らかに笑う。これは社蓄脱出にも使える理屈。

ただ問題なのは、1期からある、テツの「飼い殺し」。ミツル、ヨシエ、渉などは変わったのに、テツだけが、変わろうともがいても、周囲が、テツが変わるのを許さない。1期のボクサー化計画も、あまりにも竹本家が非協力的で、地獄組ボスは激昂した。

今回も、テツは関取級3人をKOした。つまり東洋チャンプと互角で、関取より強い。ところで1期の、東洋チャンプとテツがスパーリングする話は高屋敷氏脚本である。作品の都合で変われないテツだが、なんとか自分の道を見つけて欲しいと願って同氏は脚本を書いているのかも。

ところで同氏作品には名実況・名ナレーターが多いのも魅力の一つ。今回は相撲中継や、チエのナレーションが該当する。画像は名実況・解説達。今回、ジョー1脚本疑惑、ジョー2・らんま脚本。他も多数。 https://t.co/nRD2ebVzyP

今回は、前編でテツが変わることに成功し、後編で悲惨な方へ変わり、最後は元に戻るという構成。変わることを原作者や監督から許されないテツだが、私は可哀想に思う。高屋敷氏脚本回は、そんなテツが変化しようとするため、私は応援したくなるのである。

  • 補足

書き加えると、いじめられていた相撲部屋の弟子はテツに浴衣を脱がされたことにより、弟子というアイデンティティを喪失、いじめられる理由がなくなった。テツは、弟子に化けて相撲取りを倒すことで、店主ではなくなった。これも高屋敷氏的脱衣演出か?

つまり「かわいがり」や「ワンオペ過労」から脱却するには、「世間に求められている自分」を「脱いで」、本来または新しい自分になることが大事とも言えそう。数十年前から高屋敷氏の作品に精神疾患描写・対処が鋭く盛り込まれているのが面白い。

これに関しては、ジョー1脚本疑惑・演出手伝い疑惑にて力石の死と向き合う丈の精神崩壊を描いたのがルーツか。少なくとも、力石の死後、街を徘徊するジョーの回は高屋敷氏が制作進行。演出手伝い疑惑箇所もある。ジョー2脚本でも丈は力石の魂と向き合っている。 

そして同氏脚本のジョー2最終回、丈は真っ白になると決めて満足したからこそ燃え尽きる。そしてボクサーの証、グローブを脱ぎ(特徴:脱衣演出)、新しい自分になり旅立つ。そんな風にも取れる。前にも書いたが、代わりにグローブは死ぬ。

高屋敷氏シリ構・脚本のアカギにて、アカギは「まだだ。まだ終わってない。限度いっぱいまで行く」と言う。これもジョー2高屋敷氏脚本「まだだ。まだ真っ白になってない」という台詞とシンクロ。もともと破天荒なアカギの生き方を丈と重ねている。

だからこそアカギ後期EDが、自由そうに旅をするアカギなのではないだろうか。アカギも丈のように、鷲巣とは限界までやりきったから、新しい自分となって旅に出たとも取れる。ちなみに服もはだけてるw(脱衣演出?) 

精神疾患の治療過程として、「過去の元気な自分」に戻ろうするのではなく、「新しい自分」になるのを目指そうというプロセスがある。高屋敷氏の「脱衣演出」や精神疾患対処はそれに近い事を描写している。理由は不明だが時代先取りすぎて驚かされる。