コボちゃん20話脚本~愛情には愛情で返す贈り物~
のっけから、特徴である紙のどアップ。
この話はホワイトデーの話だが、まさに同氏特徴の「その人に合った贈り物」が発揮されている。
冒頭では、竹男(同居している親戚)とコボちゃんが、ホワイトデーにクッキーを焼く計画を立てている。
竹男は想い人の花田先生に心をこめたお返しをしたいと思い、手作りのチョコに対し手作りクッキーを贈ることに決める。また、コボちゃんも一緒に、チョコをくれた女の子達のために作ることになる。
これも、真の贈り物とは何か、という高屋敷氏のテーマが入っている。台詞でも、「愛情には愛情で返さないとね」というのが出て、これはこの話のキーとなる。
一方、実際のホワイトデーが日曜なので、職場のホワイトデーは金曜であることをすっかり忘れていた耕二(コボの父)は、部下へのホワイトデーのお返しをまだ買っておらず焦る。そこへ、早苗(コボの母)が、もう買ってあると言って部下用のホワイトデーのお返しセット(ハンカチ)を渡してくれる。これも、同氏特徴である「その人が必要とする贈り物」。
感激する耕二だが、ホワイトデーの大きなお返しを早苗に期待され焦る。
また、ミネ(コボの祖母)も岩夫(コボの祖父)に大きなお返しを期待し、岩夫も焦る。
職場にて、耕二は部下に義理チョコのお返しプレゼントを渡し終えたつもりだったが、一人分足りないことに気付き慌てて補充を買いに行く。その際、貴金属コーナーを見て早苗の期待を想い出し(特徴:高速回想)、奮発してネックレスを買うが、それと、補充の部下へのお返しプレゼントを取り違え、ネックレスは部下(姫野)の手に渡ってしまう。
終業後、友人の若林と飲みに行った耕二は愚痴るが、若林は、この事件は自業自得だから飲んで歌って忘れるようにと、耕二をカラオケバーに連れていく。そこで偶然、部下や同僚とはちあわせし、一緒に飲むことに。その際、ミラーボールのアップが、色々な心情を表すようにアップになる。また、耕二と若林の居酒屋のシーンも、特徴であるランプ(提灯)のアップがあり、二人の友情(特徴)を示してしる。
これらは、同氏の、物や自然=キャラの一人であり、物事を見ているというポリシーが表れている。ちなみにミラーボールのアップは、監督作の忍者マン一平にも出る(同氏コンテ回)。
プレゼントを取り違えた相手である姫野はすっかりその気になっており、耕二とのデュエットも周りにおだてられて歌おうとするが、彼女に惚れているらしき部下(岡)が嫉妬し離席する。これは昼間に伏線が張ってあり、原作によくある台詞「ンモー」一発で表現されている。
深夜、すっかり飲んだくれて帰宅した耕二は、早苗から、ホワイトデーのお返しが義理チョコのお返し程度(ネックレスと取り違えたハンカチ)のものであることを怒られる。
一方バレンタインデー当日、竹男とコボちゃんは見事な手作りクッキーを完成させる(特徴:飯テロ)。
そして竹男とコボちゃんのクッキーは非常に心がこもっていることが描写される(特徴)。
また、コボちゃんはどれが誰のためのクッキーか名前を書いており、分け隔てない愛情がある(特徴:博愛)。
その際コボちゃんが竹男の受け売りで「愛情には愛情で返さないとね」と言っており、耕二は反省する。
また、岩夫は一輪の花を心を込めて用意していたが、ミネが商店街の福引きで見事な花束を当ててきたのを見て物怖じしてしまう。
そこへ、姫野から耕二へ電話がかかり、大事な話があるので、これから耕二の家に行くと言われる。その際姫野が電話コードをねじっているのが同氏特徴。
コードをねじるのは、色々な作品で出てくる。下はジョー2脚本とめぞん一刻脚本。キャッツアイ脚本にもあった。他にも出てきそうである。
焦る耕二だが、訪ねて来たのは、姫野と岡だった。
カラオケバーで、酔った若林から事情を聞いた姫野は、ネックレスを返しに来たのだった。
また、この一連の事件がきっかけで、岡と姫野はくっついたので、二人は耕二と早苗にその報告をしに来たのだった。耕二の焦りは解消され、めでたしめでたし。ちなみに同氏はジョー2脚本でも、のりちゃん・西が段平に結婚予定の報告に来る話や、結婚式の話を担当している。
夜、ランプのアップ(特徴)。
せっかく早苗の手に渡りそうだったネックレスだが、早苗は返さなくていいと、姫野にそのままあげてしまっていた。あのネックレスは、あの二人のキューピッドみたいなものだから、とのこと。
これもネックレス=キューピッド、つまり物=大事なキャラである同氏の特徴がよく表れている。
そして、早苗は、耕二の気持ち(早苗のために奮発した気持ち)がわかったから、ふつうのハンカチのお返しで十分と言ってくれる。つまり、夜の場面冒頭のランプは、二人の温かい気持ちを照らし見守るキャラとなっている(特徴)。
一方、岩夫達の寝室では、岩夫がミネに贈った花のアップが映る(特徴)。
ミネも同様に岩夫の気持ちを理解し、おでこにキスしてくれる。
その頃竹男は、留守である花田先生宅の前で、花田先生を待ち続けていた。耕二や岩夫たち成熟カップルに比べ、竹男の恋はまだまだ発展途上であることを、吹きすさぶ風が伝えるのだった(特徴)。
- まとめ
ホワイトデーという題材からして、高屋敷氏の特徴である「贈り物」が存分に生きている。
これは元祖天才バカボン演出にて「プレゼントを渡す喜び」が描かれていたり→
アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡を巡る旅、元祖天才バカボン32話A演出コンテ - Togetterまとめ
忍者マン一平監督でのクリスマスエピソードで明確になっている。→
アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡を巡る旅、忍者マン一平監督12話:本当の神、本当の贈り物とは何か?と自己犠牲とカルマ - Togetterまとめ
また、じゃりん子チエ脚本もお土産・菓子折りなど(誠意や謝罪のものが多い)の描写が多い。
カイジでも、石田さんを救った星2つは、別室で人間の心を忘れなかった石田さんにカイジが贈った、とてつもないプレゼントでもある。また、2期の、地下の仲間を救う6千万や、やさしいおじさんの3万も、とてつもないプレゼント。
シリーズ半分の演出を同氏がこなした家なき子でも、人に施した愛や親切が巡り巡って自分にも返るというビタリスの教えが出てくる。
今回の話でも、ネックレスが巡り巡って耕二・早苗夫婦の愛を深め、二人の部下をくっつけた。
カイジのエスポワールでの星も、勝負や悪意、善意を行ったり来たりして、巡り巡って、石田さんを救うという、カイジの博愛の象徴となった。
下は今回と、色々な同氏作品で出た贈り物。他にも沢山ありすぎる。
画像は今回+エースをねらえ演出、カイジ脚本、忍者マン一平監督、元祖天才バカボン演出、めぞん一刻脚本。
これらはじめ、物がキャラクターとなって人を結びつける役割を担う話は多い。
また、今回も出てきたランプのアップ。頻出するので挙げきれないが、下の画像はカイジ1期・2期脚本、ジョー2脚本と今回。どれもキャラクターとして物事を「見ている」ため、静かな殺気がある。これについても監督作の忍者マン一平1話(コンテ・脚本も担当)で正体が明確になっている→アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡を巡る旅、忍者マン一平監督・1話脚本・コンテ:OPから炸裂、自然や物がキャラという作家性の種明かし! - Togetterまとめ
コボちゃんは、ファミリー向け15分エピソードな分、元祖天才バカボン演出や脚本と同じく、高屋敷氏の特徴がわかりやすく凝縮されている。話も、いい話。竹男のオチが気の毒ではあるが。
フォローすれば、竹男と花田先生は後に結婚する。これもクッキーに込めた愛が時間をかけて報われたということか。
ともあれ同氏特徴である、ランプや贈り物が大活躍する貴重な回だった。