コボちゃん24話B脚本:鳥は希望や絶望を運ぶ重要キャラ
今回は、鳥の話。
冒頭もカナリアのアップ。同氏作品の冒頭は、言葉を喋らない物・者のアップから入ることが多い。これも物言わぬ自然・無機物・動物が重要なキャラであるという、同氏ポリシーが出ている。
コボは、鳥を飼っている友達を羨ましがって、鳥を飼いたいと言い出す。
おじいちゃん(岩夫)は、じゃあ巣箱を作ろうと折衷案を出し、二人は巣箱を作って公園に設置する。
ここでも、喜ぶ姿が幼く可愛い特徴が出ている。演出時代から得意分野っぽいが、脚本でも、絵の管理ができないのに、ほぼ同じ演技が行われていることが毎回怖い。下記は今回と怪物くん「脚本」。
怪物くんは、ど根性ガエル、柔道賛歌、元祖天才バカボンなど、福富博監督と馴染みなのもあるが…とにかく過去~現在まで頻出する特徴の一つ。
巣箱設置直後、コボは怪我をした鳥(四十雀)を発見する(特徴:ぼっち救済)。
コボと岩夫は四十雀を家で介抱することにする。
家族の温かい手当てや世話(特徴:疑似家族・義理人情)で、鳥は順調に回復。
回復したので、コボは友達に自慢しようとし、友達を自宅に招くことにする。
一方その頃、エサをやるため岩夫が籠の扉を開けた隙に、鳥は逃げ出してしまう。
コボ帰宅後、鳥が逃げてしまったことを言い出せない岩夫は、毛布を被ってガクブルする(特徴:かわいいおじさん・おじいさん)。
しかもこのシーン、同氏怪物くん脚本と超絶シンクロ。脚本なのにここまでシンクロするのが恐ろしい。
鳥を見にきた友達もコボも失望。ここも、鳥が逃げた鳥篭の意味深な間がある(特徴)。
そんなコボを見かねて、父の耕二はバードウォッチングにコボを誘う。
しかし、目的地の野山は開発により失われていた。仕方なく耕二はコボを養鶏場に連れて行き、バードウォッチング(?)は終了。
浮かない顔で二人は帰路につくが、夕陽が見守る(特徴)。
この夕陽は伏線で、ジョー2同氏脚本のように、願いを聞き届けるキャラとなっている。ここからの展開は、非常に高屋敷氏的。
最寄り駅に帰ったコボ達に、岩夫が、鳥が見つかったことを知らせにくる。巣箱を設置した公園にいるという。
コボは公園へと走り、それを夕陽が見ているようなシーンが続く(特徴)。
公園に着くと、確かに鳥がいた。足に、とれかかった絆創膏がついており、コボは、自分が拾った鳥だと気づく。
喜ぶコボは夕陽が見守る中(特徴)、鳥と戯れる。夕陽に同氏特徴の、意味深な間があり、夕陽が意思を持つキャラとわかる。
つまりこの話では、失意のコボを見た太陽が、鳥とコボの再会を演出した。
同氏がシリーズ構成・脚本を担当した蒼天航路1話脚本でも、月が曹操と夏侯惇の再会を演出した。その直前の場面でも、許褚(キョチョ)が「お月さまは15個ある」と、月に個性や意思があることを述べていた。
はじめの一歩3期脚本では、月が、孤独だった沢村のもとに、よきライバル(一歩や千堂)を連れてくる。そして一歩も沢村も同じ月を見上げる。いや、月が一歩や沢村を見ている。
監督作忍者マン一平では、太陽や月に顔がついていて、様々な表情をするので、演出意図がわかりやすくなっている。
下記は夕陽が見守るシリーズ。最上段が今回、他は家なき子演出、ベルばらコンテ、じゃりん子チエ脚本。これに限らず、数えきれないくらい頻出する。そして、どれもが、意思を持つかのような存在感や間がある。
これを見るに、高屋敷氏は、師匠かつ長年一緒に仕事した出崎兄弟の巨大夕陽演出に、キャラクター性を持たせたのではないだろうか。
話を戻すが、鳥は、コボ達が設置した公園の巣箱に、つがいで住み着き、産卵の準備をしていたのだった。コボは、今後は巣箱を見に行くことを楽しみにする。
すっかり元気を取り戻したコボは食欲も復活(特徴:飯テロ)。一方、岩夫と耕二は喜びにかこつけて泥酔(特徴)。鳥と千鳥足のダジャレでシメ。
今回の話の軸である「鳥」、これも同氏作品によく出てくる。脚本上からでも、よく出崎鳥を飛ばすし、鳥が希望や絶望を象徴するキャラとなっている。
非常に戦慄したが、シリーズ構成であるので画に手が出せないはずの二舎六房、カイジ破戒録ともに、OPで、希望の象徴である光の鳥が出てくる。
監督は二舎六房が神志那氏、カイジは佐藤雄三氏である。なのに出てくる。OPやEDにもストーリーがあるコンセプトも同じ。監督との意思疏通がうまくて、映像になると似てくるのだろうか?
ちなみにカイジ1期1話(直接脚本回)冒頭にも、不吉を告げる鳥が出るし、2期冒頭の1期おさらいでも、この鳥の映像から始まる。
これらについても、出崎鳥にヒントを得て、鳥にキャラクター性を持たせたのではないだろうか。
ルパン2期同氏演出コンテでも、鳩が活躍する話がある。
鳩はもともと不二子が使っていたが、ルパンが餌付けする(特徴で手つきが優しい)。これが伏線となり、終盤には、裏切ろうとする不二子やゲストキャラのもとへ、鳩がルパンを連れて行ってくれる。
これも今回のコボちゃんと同じく、鳩に個性づけが成されており、ルパンをアシストする。
また、不二子達に見捨てられ気絶した鳩をルパンが優しく抱き上げたり、五右衛門が、鳩を見捨てた天罰だと不二子に言ったりと、皆、鳥に優しい。
もっと過去を遡れば、まんが世界昔ばなしで同氏が演出コンテした「幸福の王子」に辿り着く。
これも一人ぼっち(特徴)かつ動けない王子の、唯一無二の友達がツバメ。
原作通り、ツバメは力つきて死んでしまい、王子も親友のツバメが死んだ途端、「心にぽっかりと穴が開いて」絶命。ツバメと王子の魂は太陽に回収され、両者は太陽となって人々を見守る。
この話におけるツバメ・王子・太陽が、今回の四十雀・コボ・太陽、ルパン二期の鳩に反映されているのかもしれない。コボちゃん・ルパンともに、鳥は死なない。
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そして、「家や建物が意思を持ってキャラクターを見守り、育てる」特徴。
今回と、はだしのゲン2脚本、元祖天才バカボン演出。他も、めぞん一刻(最終シリーズ構成・脚本)など多数。 今回、コボ達が作った巣箱が鳥の住処となり、次世代を育てることになる。
元祖バカボン演出では、ウナギ犬のための小屋として、家全体が改造された。そして、顔がついているので演出意図がわかりやすい。
はだしのゲン2脚本では、なんと原爆ドームが鳥に住処を提供し、その卵が、ゲンや隆太の空腹を満たす。そしてドームは最後まで、ゲンや子供達を見守り、育てる温かいキャラとなっている。しかもエンディング直前では、逞しく育っていくゲンの後ろに原爆ドームと太陽が映っている。 同氏が最終シリーズ構成を務めた、めそん一刻も、アパートである一刻館が住人達を見守り、五代と響子を引き合わせる。(最終的に五代と響子は結婚し、次世代が育っていくことになる。)
- まとめ
- 前回のコボちゃんに関する記事はこちら。