カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

コボちゃん56話B脚本:もの言わぬ物・者の活躍を描く「脚本」

耕二(コボ父)が自宅に忘れた、仕事用の大事な書類を、コボと茂(コボの友達)が会社に届けようとして、冒険する話。 

まずサブタイの「都会のジャングル」、高屋敷氏が演出参加した「ジャングル黒べえ」から来ていると思われる。これをはじめ、コボちゃんが制作された90年代ともなると、過去作からの引き出しが膨大になっている。

冒頭、コボと茂が留守番をしていると、耕二から電話がかかってくる。仕事用の大事な書類を忘れたから、早苗(コボ母)が帰って来たら、その旨を伝え、書類を4時(重要な会議の時間)までに会社に届けて欲しいというものだった。

その頃、早苗とミネ(コボ祖母)は買い物帰りに甘味処に寄ろうとしていた。早苗とミネの会話と態度が幼く、高屋敷氏の特徴が出ている。食いしん坊なのも同氏特徴。また、雰囲気が、同氏演出参加のエースをねらえ!の、ひろみとマキっぽい。画像は今回と、エースをねらえ!演出。

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早苗とミネが中々帰ってこないので、コボと茂は退屈し、早苗の代わりにコボと茂の二人だけで耕二の勤務先に書類を届けに行くことにする。

こうしてコボと茂は、小さな冒険の旅に出るわけだが、子供だけの旅といえば、同氏演出多数の家なき子のレミとマチヤ。コボ・茂の雰囲気が、レミ・マチヤに似ている。相方の茂・マチヤともに、いい奴で有能なのも同じ。下記画像は今回と家なき子演出。

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駅構内で、コボ達は耕二の勤務先と反対方向に進んでしまい、食品売り場に来てしまう。ここぞとばかりに試食品を食べまくるコボ達。同氏特徴の飯テロが今回も出ている。試食品を食べまくるのは、元祖天才バカボン同氏演出回にもある。

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二人が試食品を食べまくっている最中、書類が失くなってしまう。書類は、搬送中の段ボールに紛れてしまっていた。慌ててコボ達は追いかけ、騒動の末、なんとか書類を取り戻す。だが、二人が警備員から逃げた先はトラックの荷台だった。トラックは二人を乗せたまま走り出してしまう。ちなみに、家なき子同氏演出回にも、追手からレミとマチヤが逃げる話が多々あり、また、馬車の荷台にレミ達が乗って逃げる場面もある。

トラックが走り出していることに気付いたコボ達は怖くなり、泣き出してしまう。幼児だから当たり前だが、同氏特徴で幼い。この幼さが、同氏にかかると大人にまで適用されているのが面白い。

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そして、二人の泣き声を偶然聞いた警察官が出動する事態となる。味のある名無しキャラが活躍するのも同氏特徴。また、警察官といえば、元祖天才バカボン演出・脚本の本官さん、じゃりん子チエ脚本のミツルなど、同氏担当作で多数活躍している。

その頃大人達は、コボ達が耕二のもとへ向かったことに気づき大騒ぎする。コボの置き手紙が出てくるが、手紙は同氏作品で頻出。下記画像は今回、家なき子演出、じゃりん子チエ1・2期脚本。

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 連絡を受けた耕二は会社のエントランスで待つが、コボ達が来ないので心配する。また、会議開始時間の4時も迫り、焦る。焦る姿がカイジ脚本と被る。カイジのエスポワールも、タイムリミットがあるのが同じ。

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そして、迫り来るタイムリミットを描写する時計のアップ・間に、同氏特徴が出ている。時間が迫る度に時計のアップ・間が挿入され、針がタイミングよく音を立てたりする。つまり時計をキャラクターと見なし、意思を持たせている。ここでも、物や自然をキャラクターとする、同氏ポリシーが出ている。

更に、時間が迫る度に時計は段々アップになり、最終的に、どアップになる。これは、カイジ脚本でも使われている。画像は今回とカイジ脚本。

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あと、同氏特徴の出崎演出持ち込みも出ている。脚本からどうやるかは毎度、謎なのだが、確かに色々な作品で「脚本」からでも出る。下記は今回とジョー2脚本・家なき子演出(ジョー2と家なき子出崎統監督作品)。

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ただ、今回作監の本木久年氏はジョー2で多数原画を描いているので、その辺りも関係しているのかもしれない。だが、出崎作品に関わりの無い作品でも、高屋敷氏の脚本から出崎演出が出力されているのは、やはり怪。演出やコンテなら、まだ解るが…

話を戻すと、コボ達は警察官に救い出され、耕二の勤務先に辿り着くことが出来た。警察官がツンデレで優しく、カイジ脚本の、やさしいおじさんと被る。優しいおじさん・おじいさんは、同氏作品で頻出。画像は今回とカイジ2期脚本。

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書類が届けられたおかげで、耕二は会議に間に合う。騒動は一見落着となり、コボ達はご褒美としてステーキを食べるのだった。とどめに同氏特徴の飯テロが出てきた。画像は今回とカイジ2期脚本。

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  •  まとめ

今回も「書類」、「時計」、「食べ物」と、脚本なのに、物言わぬ物達がキーキャラクターとなっている。

思えば、今回の警察官はじめ名無しのキャラが同氏作品で活躍するのも、普段もの言わぬ者だから、かもしれない。モブがよく喋ったり個性があったりするのも、同氏特徴である。

同氏作品では、物言わぬ物はアップや間で無言で語る。普段もの言わぬ者は、よく喋る。理由は不明だが、そういうポリシーがどの作品でも、役職問わず出ているのが面白い。

また、今回のキーとなる、書類を届けに行くというコンセプトは、同氏特徴の1つ、「相手のことを考えた贈り物」と言える。だから、そのご褒美としてコボ達は警察官に助けられたり、ステーキを食べることが出来たのかもしれない。

今回は、同氏の膨大な引き出しを体感し、名無しキャラが活躍する理由が垣間見えた回だった。