カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

チエちゃん奮戦記36話脚本:頻出する「像」演出の解答

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

冒頭、何故かチエとテツのコテコテ漫才がある。何故か棒読みで、わざとつまらないノリになっている。謎演出。食い倒れ人形にまつわる話だからかも?脚本というより、テツ役の西川のりお氏などによるアドリブかもしれない。

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本編開幕で、早くも同氏特徴が出ている。太陽のアップの間。らんま脚本と比較。どちらも太陽がキャラとして機能し、無言なのに何か言っているような不気味な間がある。 

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残暑厳しい中、謎のおっさんが勝手にチエ宅に上がり込む。テツを除くチエ一家は、おっさんの顔に記憶があるのに、思い出せなくて悩む。おっさんは厚かましくもビールを飲みくつろぐ。同氏特徴のビールテロ。挙げればキリがないがカイジ脚本と比較。

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帰宅したテツは、おっさんの顔が食い倒れ人形に似ているだけだと気がつき、気がつかなかったチエ達を散々バカにする。

それはそれとして、テツは食い倒れ人形そっくりなおっさんが来てると町内に言いふらし、見せ物にしようとする。像が出てくるのは同氏特徴。

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高屋敷氏の作品には、像が出てくることが多い。これも、もの言わぬものでも、キャラとしてカウントする特徴。今回の食い倒れ人形にそっくりなおっさんは、食い倒れ人形がまんまキャラとして出たようなもので、同氏演出の解答的なものがある。

下記が、同氏作品に出る像の数々。これも挙げればキリがない。

今回、ルパン三世2期演出、ジョー2・ルパン三世2期・じゃりん子チエ1期脚本。カイジでも、帝愛の女神像が意味深に描写される。

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食い倒れ人形のおっさんを見に来た百合根とカルメラ兄弟が可愛い(特徴)。今回は相当不気味な話なのでオアシス。

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一方チエは、なぜテツ以外の家族が、おっさんが食い倒れ人形に似ているだけだと気がつかなかったのか悩む。
(おっさん自体は、ミツルに連行された。)

かき氷を食べながら、チエは拳骨に愚痴をこぼす。特徴の飯テロ。カイジ脚本と比較。

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ミラクル☆ガールズ脚本でもチエ1、2期脚本でも、愚痴をこぼす時に食べ物をよく食べている。

拳骨は、チエ一家は、常にテツが何処かで誰かに迷惑をかけているのではないかと思っているから、おっさんが食い倒れ人形に似てるだけという事に気がつかなかったのだと解説。言うなればテツのせいだと気が付いたチエとおバァはんは、段々テツにムカついて来る。

その頃テツは、カルメラと百合根に、おっさんを見る見物料をせびる。稼いだ見物料で、おっさんに食い倒れ人形の衣装を着せ、更に見せ物にしようという魂胆。半ば強引に金を巻き上げたテツだが、帰宅すると、チエが食い倒れ人形の衣装を既に作っていた。

チエとおバァはんは、テツにムカついていたので、テツに食い倒れ人形の格好をさせる。

そこへミツルが、おっさんが逃げたと知らせに来る。おっさんの妻も同行。妻によると、おっさんは家で気に食わない事があると、他人の家に上がり込む癖があるのだという。

そこにヒラメが来て、おっさんがヒラメ宅にいると報告。今度こそ確保されるだろうという事で、拳骨は一見落着と宣言。一方で、テツは食い倒れ人形の格好で店の呼びこみをさせられるのだった。食い倒れ人形の衣装を着る・着ないは、同氏特徴の脱衣演出かも。

  • まとめ

とにかく、おっさんが不気味すぎてホラー。食い倒れ人形に似ているためか、おっさんはほとんど喋らない。だが高屋敷氏作品で出てくる多くの像の「不気味な間」は、像を生きているキャラクターと捉えているからだ、という解答が得られた感じ。
また、食い倒れ人形の服を着せる・着せないは、同氏特徴の「アイデンティティの着脱」の意味での「脱衣演出」とも見て取れる。
ところで、不気味な人物を泊める話は、同氏担当回ではないが、ど根性ガエルによくある。

おっさんが、知り合いのフリをしては他人の家に上がり込むのは、今の視点で見ると不気味すぎるが、西萩の面々は義理人情に厚いということかもしれない。また、家で面白くない事があると他人の家を渡り歩くというのは、それだけおっさんが孤独だということか。

おっさんが家に居場所がなくて孤独なのかもしれない(同氏特徴:ぼっち、ぼっち救済)、というのは、テツが、おっさんの妻に「お前がちゃんと世話してなかったからやないか」と抗議する所からも見て取れる。ぼっち→救済失敗のケースかも。

同氏演出コンテ脚本すべて、何かしら像が出てくるのは、状況を「見て」「何らかの意思を持っている」からなのだと考えられるが、そのルーツは、まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」演出コンテからだと思われる。あれこそ意思を持つ像である。

幸福の王子」演出では、原作通りツバメと王子が絶命するが、王子にはツバメという親友がいたため、ぼっちが救済されてはいる。一方で今回のおっさんは、孤独なままであるので悲劇でもある。同氏の作品での悲劇話は、ぼっち救済が失敗するケースが多い。

カイジ脚本・シリーズ構成では、女神像が意味深に映るが、「偽の神」になろうとする帝愛の、禍々しい理念を象徴するキャラとして女神像が「出演」している。また、兵藤会長は、人から裏切られた経験も多く、ある意味孤独。だから他人の命を欲する側面がある?

そう考えると、カイジにおける、高屋敷氏の帝愛の解釈が見えてくる。「偽の神になろうとする孤独な老人と、その部下達」という所か。これは、ここまで同氏のことを調べなくても、アニメカイジを見ていて気付いたことでもある。見れば解るよう設定されている。

話単体は不気味だが、今回、いわば「像」が動いて喋る、ということから、カイジについてもう一度考察できる機会が得られた。
あと、テツの無責任で純粋な感性が、おっさん=食い倒れ人形に似ているだけ、を見抜いたわけで、テツの重要性が見れる回だった。