カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

元祖天才バカボン21話A演出コンテ:アイデンティティ喪失の危機を乗り越える

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

本官さんの誕生日の話。
本官は、ケーキを持ちながら町中で自分の誕生日をアピールするが、誰からも祝って貰えず一人落ち込む。それを偶然見たバカボン達は、本官の誕生日を祝う。同氏特徴のぼっち救済。カイジ2期脚本と比較。
f:id:makimogpfb:20170424232032j:image

更に、バカボン宅で本官の誕生日会を開くことに(特徴:義理人情)。
だが、ママから一つ条件が出される。条件とは、この日を境に発砲をやめて優しいお巡りさんになること。これは、同氏作品によく出るアイデンティティを保てるかどうかの試練と取れる。

話を聞いたパパは、銃を撃たない本官など価値が無い、と反対。どうにか本官を怒らせて銃を抜かす計画を立てる。そして夕刻となり、全てを見ているかのような夕陽のアップ・間が出る(特徴)。画像は今回とベルばらコンテ、家なき子演出、ジョー2脚本。 

f:id:makimogpfb:20170424232209j:image

バカボン宅に着いた本官は、本官を怒らせようとするパパから、数々のトラップや挑発を受ける。それになんとか耐え、本官は、パーティーの席に着く。特徴の飯テロ出現。画像は今回と、ど根性ガエル演出、カイジ2期脚本。 

f:id:makimogpfb:20170424232253j:image

それでもなお、パパのトラップと挑発は続く(特徴:知略)。なんとか耐えた本官は、今度こそ皆から誕生日を祝ってもらう。家なき子演出の誕生会場面と比較。

f:id:makimogpfb:20170424232331j:image

皆から誕生日を祝ってもらい、本官は感際まって泣く。
下記画像は義理人情に触れ感際まって泣くシリーズ。今回、ど根性ガエル演出、家なき子演出、カイジ2期脚本。
f:id:makimogpfb:20170424232432j:image

だが喜びも束の間、パパのトラップによりケーキは爆発。ついに堪忍袋の緒が切れた本官は銃を乱射し、パパを追いかけまわす。パパは喜び、追いかけっこの末に二人は交番にて酒を酌み交わす(特徴:男の友情)。アカギ・ルパン3期脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20170424232013j:image

二人が酒を酌み交わすのをコッソリ見守ったママは、本官の帽子を、そっと交番に置く。特徴の、アイデンティティを表すもののアップ。画像は、今回と家なき子演出。

f:id:makimogpfb:20170424232606j:image

ママは、「きれいな星空」と夜空を見上げる。星の一つがパパの顔となって「これでいいのだ」と〆る。特徴の、自然や天のキャラ化。監督作の忍者マン一平と比較。忍者マン一平でも太陽や月に表情がつく。つかない場合も、魂があるかのような間が発生する。
f:id:makimogpfb:20170424232646j:image

  • まとめ

脚本は吉田喜昭氏。この組み合わせも多い。吉田氏が鬼籍なのが悔やまれる。吉田氏との組み合わせでは、可愛い話が多め。
今回も、特徴であるぼっち救済が序盤から炸裂。「一人じゃないよ」精神。画像は今回と、ど根性ガエル演出、カイジ2期脚本。

f:id:makimogpfb:20170424232724j:image

そしてもう一つは、アイデンティティを保てるかどうかの試練。パパによれば、銃を撃たない本官なんて、この番組に出る意味が無い、というほどの、本官のアイデンティティの危機。ママは悟り、本官のアイデンティティを示す帽子を、優しく交番に置く。

アイデンティティを保てるかどうかの試練は、裸や脱衣といった形で描かれることが多い。チエちゃん奮戦記脚本でもテツが脱衣や着替えをしてアイデンティティを問われるし、カイジ脚本の、別室での全裸描写も然り。ど根性ガエル演出でも銭湯戦闘がある。

銃を撃たない本官=アイデンティティの喪失であると本能的に察知したパパは結果的に本官を救う。これは男同士だから理解しあえる所もあり、ラストでパパと本官は酒を酌み交わす。また、男同士の世界に、あえて立ち入らないママの配慮も光る。

アイデンティティを失うというのは、場合によっては生きる意味を失うほどの危機。ギャグとはいえ、本官にとっては作品内での存在を問われるほどの危機でもあった。そういった試練を裸一貫から乗り越えるキャラも、同氏作品には多い(カイジ含む)。

同氏作品は、今回含め、アイデンティティ喪失の危機をどう乗り越えるかを問う展開が多い。ジョー2最終回脚本では、試合後にグローブを脱ぐことが非常に印象的に描写される。この時ボクサーとしての丈は終わり、新しい丈となる。(→そして旅立つ)

ジョー2最終回脚本の、丈のグローブはボクサーとしての丈のアイデンティティ。それを「脱ぐ」ことは「あしたのジョー」という作品世界から丈が去ることを意味する。
今回の、銃を撃たない本官も、本官が作品から消える危機だった。

このように、キャラのアイデンティティを失うという事は、とても重い。その試練を課すことも、とても重い。思えば、カイジ1期の人間競馬で、他人を落とすか否かの選択を迫られたカイジが、他人を落とさない選択をした回の脚本も高屋敷氏である。

他人を落とさない決断をしたカイジは、自分のアイデンティティ(優しさ)を保った。
もし非情な決断をすれば、それはカイジではなくなるくらいの危機だったと言える。
そのくらいアイデンティティを保つというのは重い、というのに気付く回だった。