カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

めぞん一刻82話脚本:原作を踏襲しつつ表現される、高屋敷氏独自の「愛」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館の管理人で未亡人・響子と、一刻館住人である青年・五代のラブストーリー。

前回まで:
保育士を目指す五代は、バイト先のキャバレーで子守係をしている。そんな折、ホステス・かすみが子供達を五代に預け何処かへ消えてしまい…

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五代は、かすみの子供達・太郎と花子を連れ、とりあえず一刻館に帰る。
響子と対面した太郎は、響子にキャラメルをくれる。同氏特徴の、心のこもった贈り物。ジョー2脚本でも、サチ子が葉子を気遣い、カイロをくれる。

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五代から事情を聞いた響子は、子供達を歓迎し、母親が見つかるまで一刻館で保護する事を許可する。同氏特徴の疑似家族愛。画像は今回・ど根性ガエル演出(ひろしの夢想)・家なき子演出。家なき子では、血の繋がらないマチヤをレミの兄弟として迎え入れようとする。

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夜更け、月や物の意味深なアップが入る(特徴:自然や物をキャラとして捉える)。家なき子演出・元祖天才バカボン演出コンテと比較。
元祖天才バカボンでは、月が震えたり、気分を悪くして落ちたりする。監督作の忍者マン一平では、月や太陽に顔があったりして明確。

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太郎と花子の面倒をみる響子と五代は、いい雰囲気に。五代を父・響子を母とした、疑似家族愛を前回脚本(81話)に引き続き前面に押し出している。カイジのシリーズ構成でも同氏は、カイジとおっちゃんの疑似父子愛を前面に押し出している。

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とりあえず五代がバイトに行っている間、響子・一ノ瀬・五代の祖母(上京中)が太郎や花子の面倒を見る。洗濯をする響子は、子供用の靴下を見つめ、今回のトラブルは「五代さんらしい」と呟く。同氏特徴の、キャラとしての「物」のアップ。カイジ脚本と比較。 

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太郎と花子の母・かすみの行方を探す五代は、客とデキる度にかすみが駆け落ちを繰り返すという情報を、他のホステスから得る。ホステスの存在感が原作より強い(特徴:優秀モブ)。更にバイト先の先輩(飯岡)が、かすみのアパートの場所を教えてくれる。
この先輩も、存在感が強め。

一方、五代のライバル・三鷹は、見合い相手の明日菜とは別の人(響子)と結婚したいと、父母に打ち明けていた。三鷹の両親は、それをあっさり受けとめる。ここのやりとりも、三鷹が原作より幼い(特徴)。三鷹響子の結婚を望む響子の母は、三鷹と結託し、両家の会食を計画する。

五代の方は、かすみのアパートを訪ねる。覗き魔と勘違いされた五代は、かすみからシャワーをかけられ濡れ鼠になり、半裸に(特徴:脱衣演出)。
かすみは子供達の父になってくれる男を探し回っており、今度の彼氏は有望なので1週間時間をくれと、五代に懇願する。

かすみは、必ず一週間で戻ると言い残し逃げる。五代は半裸のままかすみを追いかけ、散々な目に。チエ2期脚本でも、テツが半裸で走り回る回あり。とにかく同氏作品は、脱ぐ機会が多く、大抵はアイデンティティの如何を問うことが多い。別室カイジの全裸描写然り。

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五代達は、かすみが帰るまで、そのまま子供達を預かることにする。
一方響子の母は、三鷹親子が来る事を伏せて響子を食事に誘い、響子は承諾する。それを響子の母から聞いた三鷹は愛犬と共に大喜び(特徴:幼い)。エースをねらえ!演出と比較。 

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太郎と銭湯に出かけた五代は、帰り道にて太郎と語り合う。かすみは一週間で帰ってくると、お星様と約束したから寂しくない、と太郎は無邪気に言う。「お星様と約束」を強調し、星をキャラとして捉えるのが同氏特徴。元祖天才バカボン演出コンテと比較。 

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かすみと子供達の間に、ちゃんと絆がある事を確認できた五代は安堵するも、その「お星様」が流れ星となり落ちてしまう。五代は更なる波乱を予感するのだった。ここでも、星をキャラとして捉える同氏特徴が出ている。元祖天才バカボン演出コンテでも、星が悲鳴をあげて落ちる。 

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  • まとめ

前回81話脚本に引き続き、疑似家族愛が前面に出ている。また、響子の母性も引き出されている。この「母性」を描くことも同氏特徴の一つ。「母性」は年齢性別問わず表され、カイジの脚本・シリーズ構成においてもカイジに「母性」がある事が表現されている。

カイジの持つ「母性」の強調は、例として挙げれば2期5話脚本、カイジが石田息子をビンタする場面。ど根性ガエル演出にて、ひろし母がひろしをビンタする場面や、ベルばらコンテにて、ジャンヌ母がジャンヌをビンタする場面と通じるものがある(母の厳しい愛)。

また、家なき子演出においては、レミの育ての母や実母が、血の繋がりを越えた愛を示している。
一方で、カイジとおっちゃんのような疑似父子愛の側面も、今回表れている。
ところで五代の声=カイジにおける、おっちゃんの声(二又一成氏)なので、色々面白い。

今回、花子がおもらしし、響子と五代が面倒をみるが、カイジでは、失禁したおっちゃんの面倒をカイジがみる。声優の二又氏の立場が逆になっていて笑った。
疑似父子愛については、ジョー1・2脚本における、段平と丈の関係がルーツと思われる。

高屋敷氏の本作最終シリーズ構成において、恋愛というより疑似家族愛が強調されていると以前書いたが、今回もそれが色濃くなっている。
あと、愛する家族(夫)と死別し独りとなった響子が、再び家族を得るという、ぼっち救済ポリシー(同氏特徴)も見受けられる。

じゃりん子チエ脚本で見せたような「原作通りでありながら個性を出す」技が、本作でも段々顔を出している。ジョー2脚本はオリジナル部分が多く、同氏の出したいテーマは明確だったが、本作やチエのように、原作の話に隠れた同氏のテーマを探るのも面白い。