カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

めぞん一刻93話脚本:二人の心をつなぐ「雪」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回まで:

様々な誤解・すれ違いが元で、管理人業務を停止し実家にこもった響子だったが、色々なドラマを経て、ようやく一刻館に戻って来た。

冬の朝、響子は惣一郎(犬)と散歩する。

そんな中、響子は五代の真摯な告白を回想する。
並木道や鳥の表現が出崎演出的。脚本でも時々生じる怪現象。エースをねらえ!演出や、

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家なき子演出と比較。この回は吉永監督のコンテ。

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一方五代は、皆に送り出され、大学の卒業試験の結果を見に行く。

結果は合格。五代はその結果を受け、以前バイトしていた保育園を訪ねる。園長は、求人している保育園を紹介してくれる。
また、バイト先のキャバレーの面々は、五代を祝福してくれる(特徴:仲間愛)。

バイト先の面々の祝福と、家なき子演出での皆の祝福との比較。どちらもモブの温かさが印象深い(特徴:優秀モブ)。ちなみにホステス役の一人を、TARAKOさんが演じている。

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色々タイミングが合わず、五代からの連絡を受け取れなかった一刻館の面々は、五代が試験に落ちたのだと思っていたが、帰ってきた五代から直接吉報を聞く。一刻館の面々も祝福の宴を開く(特徴:疑似家族)。そんな中、朱美は、五代と響子の関係がじれったいと言い出す。

朱美は響子に、亡き夫の事が忘れられないのか、と問い詰める。響子は、忘れられないのは事実だと言い、自室に逃げる。

自室にて響子は、震える手で口紅を引き、口紅を取り落とす。物の意味深なアップ・間が同氏特徴的。ルパン演出・ジョー2脚本と比較。

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翌日五代は、紹介された保育園の面接に行く。そこで五代は、同じく面接を受けに来た中本と、その息子に会う。五代は、中本が面接している間、息子の面倒を見てあげる(特徴:義理人情)。
ブランコが出てくるが、同氏担当作品によく出る。エースをねらえ!演出と比較。

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中本は、妻に逃げられて、男手一つで息子を育てていた。それでも中本は、五代が採用されるはずだと言う。

人生の苦渋を舐めた中年と、未来を掴もうとする青年との出会いは、よく同氏作品に出る。カイジ(シリーズ構成・脚本)と比較。 

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五代は複雑な思いで帰路につく。途中、雨が降ってきて、そしてどしゃ降りとなる(特徴:天もキャラクターとして扱う)。
駅に着くと、響子が傘を持って待ってくれていた。
ジョー2脚本の、丈を待つ葉子と比較。葉子の場合、丈に会えないが。 
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五代は響子に、面接で出会った中本の話をする。そんな折、面接結果の電話がかかってくる。結果は、五代が不合格、中本が採用だった。
五代は複雑な心境ながらも、どこかホッとする。五代はそんな思いを、響子に話す。ポットのアップが同氏特徴的。XMEN脚本と比較。 
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五代と響子は話し込み、響子の亡き夫・惣一郎の話をする。響子は、自分の中から惣一郎を消すことはできないかもしれない、惣一郎と過ごした日々は幸せだった…と語る。
五代は、同じ幸せはあげられないけど、自分なりのやり方で、違う幸せを響子にあげたい、と言う。

響子は、そんな五代の手を握り、同じものが欲しいなんて思っていない、と言う。
手から手へ想いを伝える描写も、同氏作品によく出てくる。挙げればキリがないが、ワンナウツ脚本と比較。 

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そこへ、朱美から電話がかかってくる。スナック・茶々丸(皆のたまり場)で一刻館の皆と飲んでいるので来ないか、という要件だった。また、朱美は素直に、昨晩の事を謝った。
外を見ると雪が降っており、五代と響子は感嘆する(特徴:天もキャラ)。家なき子演出と比較。

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響子は惣一郎(犬)のことを口走る。単にご飯がまだだった事を思い出しただけだが、一瞬五代は、響子の亡き夫の方の惣一郎と勘違い。響子は「犬の事ですよ」と言い、二人は可笑しくなって笑い合う。ジョー2脚本で、丈と葉子が無邪気に笑い合う場面を彷彿とさせる。

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五代は素直に、惣一郎と響子の事を考えると不安になると吐露する。
五代の不安な心を、窓が映す。特徴の、真実や状況を映す鏡演出。ジョー2脚本と比較。ジョー2では、金竜飛の不安な心を、鏡が映し出している。五代も金竜飛も、映し出された真実に目線が行っていない。 

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響子も響子で、「どうしていいかわからない」と不安を吐露する。五代は響子を優しく抱擁し、響子も、応えるようにその手に触れる。二人は自然にキスし、部屋の灯りはいつしか消える。
ベルばらコンテと比較。どちらも天(雪や風)がキャラクターとして二人をアシスト。 

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窓の灯りでの情感の表現を、家なき子演出(下記画像中段)と比較。家なき子では、家の中の温かさを表現。
今回(下記画像上段)は、家の中での二人の恋愛を表現。
原作では事後シーンがあるがカットされている。
ベルばらコンテ(下記画像最下段)では、恋愛描写をイメージとして処理している。

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翌朝、上機嫌な響子を見て、朱美は五代と響子の仲の進展を察する。原作では、より直接的な台詞があるがカット。

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一方五代は、以前バイトしていた保育園の園長が、ぎっくり腰で入院したと聞き、お見舞いに行く。園長は、保育園の男手が不足しているため、五代を本採用したいと告げる。 

ここでも、花のアップ・間があり、同氏特徴が出ている(物もキャラとして扱う)。ルパン三世2nd演出と比較。

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五代の就職が決まったことを電話で聞いた響子や一刻館の皆は喜ぶ。五代はそのままプロポーズしようとするが、公衆電話の硬貨が切れてしまうのだった。

  • まとめ

今回印象深いのは、ゲストキャラであるシングルファーザー、中本の存在。声も大塚芳忠氏で、個性的。モブや地味キャラに個性を持たせる所に、高屋敷氏の個性が出ている。
また、天候や電話など「人ではないもの」が重要な役割を担っている所にも特徴が出ている。

特に天候の移り変わりは重要で、冬晴れの早朝、曇天、雨、雪、冬の快晴、と心情や状況と連動する作りになっている。

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天候を味方につけるといえば、蒼天航路1話脚本や、ワンナウツ脚本が思い出される。
台詞よりも視覚情報優先なのも、同氏特徴。

脚本なのに演出時代とやっていることが一緒・または過去・未来作と映像が似てくる怪現象についてだが、脚本段階で、映像であるところの「アニメ」をよく意識した脚本だからかもしれない…と推測している。
それくらい、同氏作品は視覚情報に訴えることが多い。

これは、同氏の師匠かつ長年一緒に仕事した出崎統氏による所が大きいかもしれない。出崎統氏は、コンテ段階で脚本を大幅に変えたり削除したりする事で有名だが、それは、「映像でわかること」に余計な情報を付加しない、というこだわりの表れでもある。

そんな出崎統氏と長年一緒に仕事した高屋敷氏なので、演出でも脚本でも、視覚情報に大きく比重を置いているのかもしれない。
今回「雪」は五代と響子が結ばれる場を盛り上げる大きな役割を担っている。
ただ、視覚的情緒に拘ったため、響子の告白はカットされた。

カットされたのは、

「ずっと前から五代さんの事好きだったの」

「ずっと前っていつから?」

「忘れちゃった!」

という、響子と五代のやりとり。事後という事情もあるだろうが、じゃあどこに入れるか?というと難しい。それくらい、「雪の情緒」を優先している。

朱美の「下半身に張りがある」もカットされたが、朱美の表情一つで、五代と響子に何があったかわかる作りになっている。これもアニメならではの表現。

脚本といえば、台詞や構成に目が行きがちだが、高屋敷氏の脚本は、映像に個性が出る。これが毎回面白い。

あと、同氏の最終シリーズ構成としての方針も最終段階に入っている。いつもは幼く無邪気な五代だが、「違う幸せをあげたい」と響子に語る場面では、大人の顔になっている(特徴:豹変)。青年の成長を、人・天・物が見守っているという、同氏の方針を感じさせる回だった。