カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

MASTERキートン4話脚本:「天」が招く縁

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

MASTERキートンは、かつて英国特殊部隊SASで活躍したキートンが、ある時は保険会社調査員として、またある時は考古学の大学講師として世界を周り、様々な事件に遭うドラマ。

舞台は極寒のポーランド東部。
冒頭からして、高屋敷氏の特徴である自然(雪)の静かな間がある。監督作の忍者マン一平と比較(コンテ疑惑もある)。こちらも、冒頭から雪の崖の「間」がある。 

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雪の中、車を走らせていたキートンは、危うく老人を轢きそうになる。
幸い老人は無事。
老人は、自分は不死身だと豪語する。
彼もまた、高屋敷氏作品によく出る、味のある老人。忍者戦士飛影めぞん一刻・DAYS脚本と比較。

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キートンは老人を車に乗せる。老人はセミョーノフという名の在米ロシア人。
寒さをしのぐため、キートンはブランデーをセミョーノフにあげる。
これも特徴の、「相手を思いやる贈り物」。ルパン三世3期脚本と比較。

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セミョーノフは、スリルの無い人生などつまらない、と語る。スリル=人生のスパイス的なテーマは、元祖天才バカボン高屋敷氏演出・山崎晴哉氏脚本の話によく出てきた。アカギやカイジでも出てくるテーマ。

セミョーノフはロシアンマフィアに追われる身で、キートン達はロシアンマフィアの襲撃を受ける。
しかしセミョーノフの手荒な機転と知略で、二人は危機を脱する。特徴である火+煙草(葉巻)演出が、カイジ2期脚本とシンクロ。 

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マフィアを撃退するために車を犠牲にしたキートン達は、雪の中を歩くしかなくなる。だが天候は悪くなり、吹雪に。強がっていたセミョーノフは倒れてしまう。演出参加した家なき子にてビタリスが凍死した場面を思い出す。
また、チエ脚本ともシンクロ。

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セミョーノフが目を覚ますと、そこはキートンの作ったカマクラの中だった。
たき火場面は、演出でも脚本でもよく出てくる。家なき子演出でもよく出ていた。
画像はジョー1制作進行(脚本または演出手伝い疑惑あり)、ジョー2・チエ脚本。 

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キートンはセミョーノフに、コートに残っていた、たった一つのチョコレートを差し出す。これも特徴の、「手から手へ想いを伝える」場面。カイジ脚本・シリーズ構成と比較(他も多数)。キートンと同じく、カイジも自己犠牲の精神で石田さんを助ける(1期9話脚本)。 

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セミョーノフは、チョコレートのお礼に、ロシアの秘宝伝説キートンに聞かせる。
キートンは、父の話を聞く息子のような顔になって、その話を面白がる(特徴:疑似父子)。
チエ脚本でも、ジュニアが小鉄の昔話に聞き入る回がある。 

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伝説は、ロシア革命の折、皇帝の命を受けたニキータ卿が、大量の金塊を英国へ運ぶことになった…という話。だが道中、鯨をUボートと勘違いして大きく迂回した折、船は氷山に激突。金塊もろとも船は沈没したとのこと。
あらゆる作品で頻出の地図が出てくる。チエ脚本と比較。 

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ニキータ卿は命からがら生き残るも、息子に航海日誌を遺し亡くなる。だがニキータ卿の妻も革命の折に亡くなり、孤児となった息子はアメリカに渡ったという。
セミョーノフの話が、早口長台詞名調子(特徴)。セミョーノフ役の大塚周夫氏も名演。

なんとか吹雪を乗り切ったキートン達は、朝を迎える。ここでも、特徴である「全てを見ているような太陽」の間が発生する。
家なき子演出と比較。 

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キートン達は、再びマフィアの襲撃を受ける。マフィア達によれば、金塊伝説に乗せられ、セミョーノフに10万ドルだまし取られたとのこと。
セミョーノフは、キートンをかばうも、狙撃されてしまう。
体を張る年上男性はよく出る。忍者戦士飛影ルパン三世3期脚本と比較。 

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キートンは、昨夜の話は楽しかったのに…とセミョーノフを抱き上げ、悲しむ。
だがセミョーノフは、胸ポケットに入れていた日記に助けられ生きていた。これも特徴である「魂を持つもの」の活躍。監督作忍者マン一平でも、本が人の姿に変化する話がある。

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日記は、金塊を運んだという、ニキータ卿のものだった。セミョーノフは、本当にニキータ卿の息子なのかもしれない。
セミョーノフは、「スリルが無くて何が人生か」と言い、キートンと二人で街を目指すのだった。
雪原を行く二人が、家なき子演出とシンクロ。 

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  • まとめ

まず、演出参加作の家なき子とのシンクロが激しい。まるで、家なき子のビタリスの生存ルートのようだ。
ビタリスもセミョーノフも、主人公に人生の何たるかを教える役割を持つ老人。
暗黒ではあるが、カイジ(シリ構・脚本)の兵藤会長も該当する。

あと、「スリルが無いと人生は面白くない」というテーマ。
元祖天才バカボンの演出でも出てきたテーマだが、アカギやカイジでも、よく取り上げられている。予想だが、レースに命を賭けるF-エフ-(シリ構・脚本)でも出てくるのではないだろうか。

この「スリルのある人生こそ面白い」というテーマは、長年一緒に仕事した出崎統氏の作風がルーツかもしれない。
そして、一つしかないチョコレートを差し出すキートンの「無償の愛」は間違いなくカイジにも息づいている要素。

高屋敷氏の作品では、可愛かったり、優しかったりする中高年がよく出てくるが、今回のセミョーノフも、歌を歌ったり、茶目っ気があったりして可愛い老人。
シリ構・脚本のワンナウツも、可愛かったり大人気なかったりする中高年男性の宝庫である。

また、自然=キャラの一人、としての描写も今回大きい(特に雪)。セミョーノフは「いまいましい雪」と言うが、演出参加の家なき子も同様の台詞が出てくる。
雪は、キートン達を危機に陥れるが、キートンとセミョーノフが仲良くなる切欠も作っている。

めぞん一刻脚本では、雪の降る日に五代と響子が結ばれ、雪が丁寧に描写された。
今回は、雪がセミョーノフとキートンを引き合わせる。そして(カマクラで)二人の命を守り、仲を深める役を担った。
然るに、雪は重要なキーキャラクターと言える。

カイジでも、物語冒頭、カラスが鳴く曇天の日が不吉を予感させる。また、会長戦時には外が嵐になっている。
アカギは更に明確で、「嵐」がアカギと麻雀を引き合わせる。また、この「嵐」が無ければアカギは南郷や安岡と会っていない。

このように、太陽・月・天候等「天」が重要キャラであることが今回も描写された。
今回は、全編が雪景色であり、メインキャラはセミョーノフとキートンしかいない。だが「雪」という、もう1つのキャラがいた。ここに同氏の大きな特徴が出ていた回だった。