カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

MASTERキートン5話脚本:学問にも適用される「不屈の精神」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

MASTERキートンは、かつて英国特殊部隊SASで活躍したキートンが、ある時は保険会社調査員として、またある時は考古学者として世界を周り、様々な事件に遭うドラマ。

今回の舞台はフランス・パリ。キートンはシモンズ社会人学校にて考古学の講師をしていた。
授業内容は、ヨーロッパ文明の起源について。
授業は活気があり、ど根性ガエル演出の町田先生の授業風景と重なる。 

f:id:makimogpfb:20170813155422j:image

生徒もキートンも、ヨーロッパ文明の起源はエジプトだけではないのではないか…という論で盛り上がる。
優秀モブは、高屋敷氏の作品で頻出。
授業風景ということで、ど根性ガエル演出・はだしのゲン2脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20170813155455j:image

キートンは生徒達に人気があり、理事長も満足している。
だが、学校は廃校が決まっており、著名な画家の壁画以外は取り壊される運命。
めぞん一刻脚本の一刻館や、はだしのゲン2脚本の原爆ドームはじめ、建物=キャラと捉える高屋敷氏のポリシーに合った話と言える。

様々な思いを抱えてキートンが自宅に帰ると、そこには娘の百合子が来ていた(妻とは離婚)。
お転婆な百合子は、アパートの屋根に上る。
風景が綺麗ということで、キートンも上り、二人は屋根の上でランチ。特徴の飯テロ。ロックフォールチーズ等美味しそう。

f:id:makimogpfb:20170813155558j:image

キートンは今の勤め先が廃校になることを嘆くが、「弱気なお父さんなんて大きらい」と百合子に叱られる。
めぞん一刻脚本で、自分の将来を真面目に考えろ、と五代を叱った響子が思い出される。

f:id:makimogpfb:20170813155634j:image

百合子と話すうち、キートンは大学時代を思い出していく。

ヨーロッパ文明の起源は、エジプトだけでなく、ドナウ川周辺にもあるのではないか…という論は、キートンが大学時代から考えていたもので、今でもライフワーク。

キートンは、その説を授業で発表する。
ここで、同氏作品頻出の地図が出る。ジョー2脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20170813155722j:image

授業は盛り上がるが、壁画の調査のために来た役人のせいで邪魔されてしまう。残り時間が僅かなこともあり、キートンは渋々授業を終えるが、百合子は憤慨。
キートンは、考古学に対する思いを、百合子に話す。ベルばらコンテと比較。どちらも夕暮れのパリ。

f:id:makimogpfb:20170813155752j:image

キートンは、一生考古学を続けたいと言う。そのきっかけの一つが、大学の恩師・ユーリー先生だった。
先生は、新婚で忙しかったキートンが卒論で赤点を取った時も、「夜学べばいい」と書庫の鍵を渡してくれたりした。
これも、同氏特徴の、心のこもった贈り物。

f:id:makimogpfb:20170813155836j:image

キートンはユーリー先生を尊敬し、百合子の名前も先生の名前から取った。
だがしかし、キートンより前に、ヨーロッパ文明の起源=ドナウ説を唱えていた先生は、説を発表した後辞職してしまう。この論が異端であるためだ。
置き手紙がカイジ2期脚本とシンクロ。

f:id:makimogpfb:20170813155922j:image

先生の置き手紙には、学ぶことを続けなさい、立派な学者になったならまた会おう、と綴られていた(特徴:主人公に人生の何たるかを教える中高年)。
百合子は、会いに行けばいい、とキートンに提案するが、年齢を考えればもう亡くなっている筈との事だった。

だが、先生との思い出を話すうち、キートンは、最後の授業で先生の話をしようと思い立つ。
そして最後の授業の日。キートンが先生の話をしようとした時、再び役人達が邪魔しに来る。キートンは、今回は「静かにしなさい」と彼等を一喝する(特徴:豹変)。

キートンは、ユーリー先生の過去の話を紹介する。先生は、第二次大戦中にドイツ軍の爆撃を受け瓦礫と化した校舎でも、授業を続けたという。向上心を削がれたら、それこそ敵の思う壺だ、と。
はだしのゲン2脚本にて、穴だらけのボロ校舎で授業をしていた先生と比較。 

f:id:makimogpfb:20170813160008j:image

ユーリー先生は、人間の愚かな性を学び、またそれを克服することこそ人間の使命だと説いた。
キートンは生徒達にそれを伝え、学ぶことを止めないように伝える。
生徒達は拍手し、かつてヨーロッパ文明=ドナウ起源説を説いた講師がもう一人いたことを伝える。

キートンはすぐに、それがユーリー先生だと悟った。
後日、生徒達は、キートンにお礼がしたいと、パーティーに誘う。そこには、年老いた(90代)ユーリー先生がいた。
味のある中高年ということで、ど根性ガエル演出・めぞん一刻脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20170813160055j:image

ユーリー先生は、キートンを「立派になったな」と褒める。キートンは目を潤ませるのだった。
温かく見守るモブ達が、めぞん一刻脚本と重なる。

f:id:makimogpfb:20170813160121j:image

  • まとめ

まず、今回も「キャラとしての建物」が出てきた。はだしのゲン2脚本の原爆ドームは、子供達や次世代の動物達(鳥)を育て見守り、めぞん一刻脚本(+最終シリ構)では、一刻館は「皆が帰ってくる場所」として存在している。 
だが今回の校舎は取り壊される。

めぞん一刻脚本・最終回のサブタイは「この愛ある限り!一刻館は永遠に…!!」。 
愛ある限り永遠に一刻館は「生きる」わけだが、今回の校舎も、取り壊されはしたが「皆の学ぶ心がある限り」、皆の胸で「生きている」。

一刻館の「愛」も今回の校舎の「学」も、人間の営みという点では同じ。
また、第二次大戦中のユーリー先生は、校舎どころか街そのものが死にかけた状態でも「学ぶ心」を忘れなかった。

今回はユーリー先生という、学問でも人生でも師と言える年上男性が出て来るわけだが、高屋敷氏の演出・脚本作とも、こういった存在が非常に多く出る。また、そういった存在を「強調する」同氏の手腕が見えてくる。

また、戦時下でも学ぶ事を忘れないユーリー先生は、不屈の精神の持ち主でもある。
こういった「不屈の精神」も同氏の作品にはよく出て、カイジでも出てくる。カイジ9話脚本では、「絶対に諦めねえ…!最後まで…!」という台詞を、かなり強調している。

こういった「不屈の精神」ポリシーのルーツも、あしたのジョー1、2脚本(1は無記名)にある気がする。
丈も、倒れても倒れても起き上がる。
今回の「学問」でも、それが適用されている。

今回のラストでは、ユーリー先生とキートンは再会を果たす。
ど根性ガエル演出では、見舞いに来てくれたひろしを抱きしめて「教師生活25年、町田は報われた」と泣く町田先生の話があり、それが思い出された。ユーリー先生も多いに報われている。

MASTERキートンは1998年制作なので、高屋敷氏の引き出しも大分豊富な状態。
あしたのジョーど根性ガエルはだしのゲン2、ベルばら、めぞん一刻など、担当して来た作品の要素がどんどん出てくる。その引き出しの豊富さにも驚かされた回だった。