カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

MASTERキートン7話脚本:「もの言わぬもの」の声を聞け

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

MASTERキートンは、かつて英国特殊部隊SASで活躍したキートンが、ある時は保険調査員として、またある時は考古学者として世界を周り、様々な事件に遭うドラマ。

今回の舞台は日本の田舎。
冒頭からして、同氏特徴である自然(今回は入道雲)のアップ・間が出る(自然をキャラと捉える)。
入道雲のアップから始まるのは、チエちゃん奮戦記脚本にもあり、ほぼ同じで驚いた。
画像は今回と、チエちゃん奮戦記・めぞん一刻脚本。

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夏休み、キートンと百合子(娘)は、キートンが幼少期を過ごした田舎の家に遊びに来ていた。また、百合子の誘いで、キートンの父・太平もやって来る。太平は女好きであるが可愛いお爺さん(特徴)で、キートンとのやり取りが幼い(特徴)。ワンナウツ脚本と比較。

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キートンと太平は、ともに離婚した身。百合子は、この機会を利用し、女心がわかっていない事への反省を二人に促す。
そして百合子は、隣家の新庄さんの家を訪ねるが、そこで村田さんというお婆ちゃんと出会う(特徴:味のあるお年寄り)。めぞん一刻脚本と比較。

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百合子は、村田さんと話し込む。
村田さんは昔、太平の妻だったパトリシアが、森の中で寂しそうに佇んでいる所を見たという(特徴:ぼっち)。そしてその後すぐに、パトリシアは故郷に帰ってしまったそうだ。
ちなみにパトリシアは健在で、実業家としてロンドンで活躍している。

一方、キートンと太平は、パトリシアが作ってくれた料理の中で、どれが美味しかったかという話をする(特徴:食いしん坊、飯テロ)。太平の場合は、新鮮なわさびと共に食べる手打ち蕎麦で、キートンはサマープディング。
二人は早速、それらを作り始める。

サマープディングを作ってみたキートンだったが、何かの香りが足りないことに気付く。
そこで、パトリシアが昔書いたメモを探すことに。
捜索の末、キートンは彼女のノートを発見する(特徴:魂のこもった紙)。

魂を持つ紙(ノートや本、手紙)は、同氏作品で多く見られる。
画像は今回と、監督作忍者マン一平エースをねらえ!演出、チエちゃん奮戦記脚本。
特にエースをねらえ!音羽さんのノートは、色々な思いが込められている。 

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ノートを手にしたキートンは、幼少の頃を思い出す。母は、サマープディングの香りを「妖精の香り」と言っていた。
それは、女神プロセルピナが、妖精ミンスを草に変えてしまったという話が元ネタ。
画像は菓子テロ集。今回、怪物くん脚本、元祖天才バカボン演出。 

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神話から、香りの元がミントであることが判明するが、それはただのミントではなかった。
キートンは、ノートに挟まっていた葉から、それがペニロイヤルミントである事を突き止める。
ここでも、葉をキャラとして扱う同氏の特徴が出ている。めぞん一刻脚本と比較。

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ペニロイヤルミントは、パトリシアの故郷・コーンウォールのもの。
キートンは、太平の愛犬・太助の力を借り、パトリシアが植えたペニロイヤルミントの畑を発見する。
犬の描写がめぞん一刻脚本を思わせる。 

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そこに太平も来て、二人でパトリシアのノートを見る。

ノートには、故郷のペニロイヤルミントを植えた、と書かれていた。
ここも、同氏特徴の、「紙に書かれた思い」が出ている。エースをねらえ!演出と比較。

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だが畑は、水が来なくて干上がりかけていた。そこで太平と太助は、寝食を忘れる勢いで、畑に水を引く装置を作り始める(二人とも工作が得意)。
後に装置は完成、起動の日を迎える。
特徴であるランプのアップ・間が出てくる。カイジめぞん一刻脚本と比較。 

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装置は、発動機と風車、ホースなどを組み合わせたもの。まるで生き物のような描写に、同氏特徴が出ている(物もキャラクター)。
また、ピタゴラスイッチ的描写も、同氏作品によく出る。ルパン三世2期演出と比較。 

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装置は見事に水を運び、畑は生き返る。
二人の技術に村人も盛り上がり、百合子は父と祖父を見直す。
風車ということで、カイジ2期脚本と比較。家なき子演出にも、よく出ていた。
これもまた、生きているかのような「間」が発生している。

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生き返った畑を見つめ、キートンは太平に、ミントの神話の別説を紹介する。

別説によれば、プロセルピナは、ミンスが運ぶ故郷の香りが辛くてミンスを草に変えたが、それでも故郷が忘れられず、遂には故郷に帰ってしまったという。
また、ミントには、思い出を保つ働きがあると言われる。
ペニロイヤルミントによって望郷の念にかられたため、パトリシアは故郷に帰ってしまったのではないか…とキートンは説く。
画像は、父子(今回)と疑似父子(カイジ脚本)。どちらも距離を縮める。

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その後、旧友と会うため、太平は先に東京に帰る。
キートンと百合子は親子水入らずで、ペニロイヤルミント入りのサマープディングを作るのだった。ラストも、二人を見守るかのようなペニロイヤルミントのアップ・間がある(特徴)。チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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  • まとめ

自然が豊かな田舎が舞台になっているため、同氏の「自然をキャラとして扱う」ポリシーが、ふんだんに発揮されている。
おまけに機械も出て来て、こちらも「生きているような物」の描写が強く出ている。
更に飯テロ。
同氏特徴の宝庫になっている。

「ぼっち」が悲劇を招いたり、果ては世界の危機に発展する話は、同氏作品によく出る。
パトリシアは孤独ではなかったが、ふるさとを離れた寂しさには勝てなかった。
そういう寂しさは本人にしかわからず、孤独な悩みとも言える。

また、ミントが元は妖精だったという神話は、自然をキャラと捉える同氏にうってつけ。植物であるミントに「魂」があることの裏付けになっている。
神話のプロセルピナも、今回のパトリシアも、ミントによって「故郷へ誘われた」とも取れる。

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そしてキートンと太平は、故郷を想うパトリシアの寂しさを、料理やノートといった「物」に「導かれて」知ることとなる。

これも、同氏特徴である「意思を持つ物の活躍」が出ている。

こういった、「意思を持つ自然・物の活躍」が、あらゆる同氏作品に出て来るのが毎度不思議(特に脚本)。
思えば、めぞん一刻(脚本・最終シリ構)でも、自然の描写がアニオリでよく出ていた。画像は今回と、めぞん一刻脚本との比較。 

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枯れかかったミント畑に関しても、まるでキートンに助けを求めていたかのようにも取れる。
アカギ1話脚本でも、南郷に切られようとした牌を助けるように、アカギが南郷を止める。その結果、南郷は生き残る。

アカギもカイジも、ワンナウツの渡久地も(いずれも脚本・シリ構)、物の声を聞き、自然の助けを借りる術を知っている。特に渡久地が雨を利用したり、カイジが地盤を利用したりする場面によく出ている。
今回のキートン然り。

元祖天才バカボン演出では、物を粗末にしたパパに恐ろしい罰が下される回がある。
そこから考えるに、アカギ・カイジ・渡久地らには、自然や物の声を聞ける主人公であってほしい…という願いが込められているのかもしれない。

ちなみにサマープディングの作り方は、ネットで検索すると出てくる。食パンを容器に敷き詰めて、そこへ果汁と果肉を煮詰めたものを流し込み、冷やし固めたものらしい。今回のは、焼く工程があるので、ちょっと普通と異なり、難しそう。

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