カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

MASTERキートン8話脚本:「義」を貫くには「理」を

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

MASTERキートンは、かつて英国特殊部隊SASで活躍したキートンが、ある時は保険会社調査員として、またある時は考古学者として世界を周り、様々な事件に遭うドラマ。

舞台はイギリスのウェールズ
日本企業・ヤザワエレクトリック社のウェールズ工場長・滝田修二と、その運転手ギアが誘拐される事件が発生。
誘拐話は、元祖天才バカボン演出回にもある。また、カイジ2期脚本も、拉致まがいの方法でカイジが地下に落とされる。 

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事件は、イギリス警視庁のコスナー警視と、誘拐犯罪担当のダグラス警視が取り仕切ることに。
キートンも、保険会社からの交渉人として派遣される。一見柔和な凡人のキートンだが、すぐに有能ぶりを発揮(特徴:豹変)。カイジ脚本と比較。 

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今後、修二の夫人・ダグラス警視・コスナー警視(とその部下)・キートン・孝三(修二の父)・久山(ヤザワ英国支社長)が一同に会し、犯人との交渉にあたることに。犯人との唯一のつながりは電話。ジョー2脚本の、葉子が丈に電話しまくる回が思い出される。 

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キートンは、犯人と電話で話す役を、夫人に振る。
だが犯人と話した夫人は、すっかり怯えてしまう。カイジ2期脚本と比較。どちらも、電話相手が冷酷無比な人間。

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コスナー警視は、キートンの判断に疑問を持つが、ダグラス警視はキートンを称賛。近親者が相手をする方が、人質の生存率が上がるという統計があるためだ。ダグラス警視は、キートンがプロ中のプロだと見抜く。煙草を吸う姿が渋い(特徴)。カイジ2期脚本と比較。

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ただ、犯人が提示する身代金は2500万ポンドと、法外。
キートン達は、何とか相場の300万ポンドまで下げるよう交渉しなければならない。
カイジ(シリーズ構成・脚本)での、“命の値段”を彷彿とさせる。

キートンは、最初の判断通り、犯人からの電話を全て夫人が取るよう指示。怖がる夫人だったが、キートンの説得に応じ、その役を引き受ける。
その後もキートンは的確な指示を出し、交渉は進む。画像は覚醒する人達。元祖天才バカボン演出、カイジ脚本と比較。

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犯人との会話で、修二の生存が確認される。また、犯人がアキレスとアポロの伝説内容を知っていたことから、犯人に教養がある事が判明。
だが、身代金の値下げ交渉は難航。しかも、もう一人の人質である運転手は殺されてしまう。

それでもキートンは、犯人との信頼関係を築く事が大事だと、皆を落ち着かせる。カイジ(シリーズ構成)の「オレは(利根川を)信頼したんだ」が思い出される。
だがしかし、保険会社は誘拐保険金の支払を拒否。誘拐前日に修二が辞表を出していたためである。

そのため、キートンがいる意味が無くなってしまう。孝三は、どうか残ってほしい、とキートンにすがりつく。
キートンは、そんな孝三の手を握って落ち着かせる(特徴:手から手へ思いを伝える)。
ジョー2・めぞん一刻カイジ2期脚本と比較。 

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キートンは居残りを決意。まず、憔悴しきった夫人の面倒を見る。
夫人は、次々と駐在員が帰国したことや、夫が多忙すぎることで、孤独感を覚えたと吐露(特徴:孤独は万病の元)。夫の誕生日にケーキを用意しても、夫の帰宅が早朝だった事などを話す。

その時夫人は、我慢の限界に達し、夫に誕生日ケーキを投げつけてしまったという。
誕生日ケーキが台無しになってしまう場面は、元祖天才バカボンの演出回にもある。

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それでも夫を助けて欲しい、と夫人はキートンに懇願。キートンはそれを快諾。 

キートンは、保険会社の半分の日当で、個人として交渉業務を続行する(特徴:義理人情)。
しかし、身代金の値下げ交渉は、またも難航し、犯人は「人質の指を切った」と宣言、写真を送りつける。だがその写真がインチキであることを、キートンはすぐに見抜く。

キートンは、犯人が手詰まりになってパフォーマンスに打って出ている現況を利用し、自陣もパフォーマンスをしようと提案(特徴:知略)。
そこでヤザワ社の労組リーダー・キャロルに、大規模なストを行って欲しいと頼む。
キャロルは作戦を理解し、ストを実行。

夫人は、犯人に対し「ストで会社が傾き、金が無い」と話す。そして「既に夫は死んでいるのでしょう」と号泣(演技)。犯人は、人質が生きていることを伝え、また連絡する事を確約。再度電話をかけて来た犯人は、交渉の末、身代金を292万ポンドにする事を了承する。

犯人は、修二の解放を約束。丁度、その日は夫人の誕生日。犯人によれば、「プレゼントは自分の身一つで我慢してくれ(特徴:贈り物)」と修二が言っているという。
夫人は、夫に愛されている事、自分が夫を愛している事に気付き、身代金を置く役を買って出る。
ジョー2脚本と比較。葉子も、丈を愛している事に気付き始める。

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久山は、そんな夫人の手を握り、身代金の入ったアタッシュケースを渡す。
ここも特徴の、手から手へ思いを伝える場面。ど根性ガエル演出と比較。

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その後、修二自身から電話がかかって来て、彼が無事に解放された事が確認できた。

交渉チームは喜び、孝三はキートンに礼を言おうとするが、既にキートンは何処かへ消えていた。そしてキートンの座っていた椅子が映り、間が発生する(特徴:魂のこもった物)。
家なき子演出と比較。 

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ダグラス警視は、誘拐交渉人というキートンの立場を理解する。交渉人は、犯人との直接交渉や身代金運びなどはやらない。そして自分の正体を隠すものなのだと…
そして、これからが(犯人捜索など)警察の仕事。

車が巻き起こす風のせいで、一旦キートンは足を止める。めぞん一刻脚本と比較。どちらも、「風」が引き止めるように吹き(上段)、「天」が事象を見守っている(下段)。

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キートンは少し振り向いて微笑むも、また歩を進めるのだった。

  • まとめ

まず、キーキャラとして「電話」が活躍する(特徴)。
そして殆どの場面が、犯人と電話で話す部屋なのだが、緊迫感が持続する構成になっている。
カイジ2期脚本7話の、班長が実質3回サイコロを振るだけなのに緊迫感が凄い回を思わせる。

そして、またまた「お年寄りに優しい」という同氏のポリシーが出ている。やはりこれも、はだしのゲン2脚本の、孤独なお爺さんをゲン達が救う話と比較したい。

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とにかく、優しい中高年・または主人公に優しくされる中高年は、挙げればキリが無いほど出てくる。

あと、「孤独は万病の元」というポリシー。どんどん一人ぼっちになっていく夫人の過去話も、その一つ。下記画像でも、夫人が一人で食事をしているが、「皆で食べるご飯は美味しい」という同氏のポリシーと逆の状況で、夫人の孤独感を強く表現している。

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また、「身代金」という「命の値段」。身代金相場は1億円を超えているが、カイジ(脚本・シリ構)の鉄骨編では、一人頭1000万。会長編では、指4本+2千万と、1億円を賭けての勝負となる。
更に利根川曰く「金は命より重い」。
中々正解は見えない。

これもまた、同氏特徴である「単純ではない善悪の判断。
(参照: )

キートンカイジも、「その時設定された値段」に、ある程度従う。特にカイジは、命の値段が変動しても、助ける行動に出ている。

だがキートンカイジも、「根拠のある論理」に基づき行動して知略を巡らす。ただただ正義論をわめく行動には出ない。しかしカイジは会長戦ではこれを忘れ、激しく悔やむ。
元祖天才バカボン演出・脚本でも、善悪問わず、知略に長けた者が勝つ展開が多い。

元祖天才バカボン演出や脚本は、誰が一番悪いのかを断定しない話が多い(1980年版アトム脚本も、その傾向があるようだ)。
アカギも、ある程度は相手に敬意を払う。カイジは、利根川の焼き土下座を見て涙を流す。
これも、対戦相手が絶対悪ではない、あしたのジョーの脚本の経験が生きている。

今回キートンは、犯人と信頼関係を築き交渉を成功させる努力を、具体的な手段を駆使して行った。
カイジの場合、「勝つってことは、具体的な勝算の彼方にある現実だ」と言い、具体的な作戦を立てる。
一見、全然違う二人に共通項があるのが面白い。

一方、温かい義理人情も特徴の一つ。キートンは半額の日当で、カイジは全てを失って、人を救う。
だがそういった義理人情も、具体的な手段を行ってこそ達成できるもの。つまり、義を貫くには理が必要ということ。
そういったシビアさも感じた回だった。