カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

MASTERキートン14話脚本:孤独を癒し、命を救う「歌」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

MASTERキートンは、かつて英国特殊部隊SASで活躍したキートンが、ある時は保険調査員として、またある時は考古学者として世界を周り、様々な事件に遭うドラマ。

今回の舞台はドイツ。
冒頭、キートンの依頼人であるシュレイダーの娘・クララと、ベビーシッターのハンナが人形遊びをしており、高屋敷氏特徴である「魂があるような物のアップ」が早速出ている。
今回、ベルばらコンテ、ルパン2期演出、カイジ脚本と比較。

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シュレイダーの依頼は、冷戦時に東ドイツから西ドイツに亡命した際、身重のため置いていかざるを得なかった妻・ルイーゼと、その子供を探して欲しいというもの。
ルイーゼは強制収容所に収容されたが、そこで子供を産んだことが、冷戦後に判明したためである。

ルイーゼは出産を待たずに死亡したという、東ドイツの情報をシュレイダーは真に受けていたため、その知らせを受けた10年後、一緒に亡命した助手・テレサと結婚。娘のクララを授かった。
一見幸せそうだが、テレサは「彼の心の壁は残ったままだ(特徴:心の病)」と言う。

依頼を受けたキートンは、シュレイダーと共に収容所の元看守・コールに話を聞くことに。
コールによれば、残念ながらルイーゼは収容所で亡くなったとの事。だが、出産した娘・ローザは生きているらしい。

ルイーゼは、よくローザのためにオルゴール(特徴:魂のこもる物)を聞かせ、歌っていたという。
愛あふれる母の描写は、同氏作品によく出てくる。ど根性ガエル演出、ベルばらコンテ、はだしのゲン2脚本と比較。

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オルゴールも歌も、かつてシュレイダーがルイーゼに贈ったものだった。歌を覚えていたコールと共に、シュレイダーは歌を口ずさむ。
話を通して「歌」が活躍する所は、元祖天才バカボン演出と、はだしのゲン2脚本の「東京ブギウギ」の替え歌が思い出される。 

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ルイーゼの死後、ローザは笑顔を見せなくなり(特徴:心の病)、やがて収容所から消えたとコールは証言。
その後のローザの消息を追うため、キートン達は収容所の元所長、クラウゼ宅を訪ねる。
だが、キートン達はクラウゼから門前払い同然の扱いを受ける。

そんな折、クラウゼの運転手であるゴットロープは、収容所から強制的に養子に出された子供達のリストをくれる。同氏特徴である、味のあるおじいさんと、魂を持つ紙がまた出た。
エースをねらえ!演出と比較。 

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ゴットロープは、息子を収容所で亡くしており、シュレイダーに同情する。
やさしい運転手といえば、めぞん一刻の、明日菜の運転手が思い出される。どちらの声優も名演。また、高屋敷氏特徴の優秀モブでもある。

リストのお陰で、キートン達はローザの養父母を突き止める。
だが、ローザの引き取り先の家は売りに出されていた。
近所の婦人によれば、ローザはいつも一人ぼっちで、笑顔を見せない子供だったという。
同氏特徴の、ぼっち描写。ど根性ガエル演出と比較。

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婦人の証言は更に続き、それによると、ローザは思春期に養父に怪我を追わせ、養父母の家から出て行ってしまったという。
意気消沈するシュレイダーだが、キートンは調査を続け、ローザが最近まで付き合っていた友人を見つけだす。シュレイダーは早速、キートンと合流。

ローザの友人・ライザは不良っぽいが、割と面倒見がよさそうな性格。めぞん一刻脚本の朱美を彷彿とさせる。

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ライザは、ローザがくれた(母の形見の)オルゴールを見せる。ライザの前から姿を消す前にくれた、との事(特徴:贈り物)。

ライザによれば、シュレイダーが載った新聞を見た際、ローザは珍しく笑みを浮かべたという。

ローザは、シュレイダーが自分達母子を見捨てたと思い込み、シュレイダーを恨んでいた。
邪な笑みということで、カイジ2期脚本の班長と比較。

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ライザはローザの写真をキートン達に見せる。ローザはなんと、クララのベビーシッターであるハンナだった。
キートン達は、シュレイダー宅へ急ぐ。
キートン達が危惧した通り、ローザはクララに殺意を抱いていた。同氏特徴の豹変。カイジ2期脚本と比較。 

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ローザは、クララの首を絞めようと、ままごとに使うネクタイを手にとる。
ここもネクタイのアップになり、ネクタイが、養父に性的に虐待されそうになったローザの記憶を呼び起こす(特徴:意思を持つ物)。意思を持つ物ということで、ルパン3期脚本と比較。

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だが間一髪か、何も知らないクララは、シュレイダーから教わった歌を無邪気に歌い出す。
クララは、この歌は「パパが、一番大切な人に贈ったもの」だとローザに言う(特徴:“人ではないもの”の活躍)。
それを聞いたローザは、母や自分が父から愛されていた事を知り、殺意が消える。

そしてローザも、その歌を口ずさむ。
急いで帰ってきたシュレイダーとキートンに向かって、ローザは振り向く。その目には涙が浮かんでいた。
かくして、親子の再会は果たされたのだった。
指定時まで顔を映さない…は、結構同氏作品で出てくる。カイジ脚本と比較。

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  • まとめ

今回もまた、オルゴールや歌といった、“人ではないもの“が活躍。
オルゴールが人から人へ伝わっていくのは、多くの人間の手に渡りながらも、カイジにより正しく使われた(石田さんを助けた)「星」を彷彿とさせる。
偶然にも、今回の歌も「星」の歌 。

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今回の「キーキャラクター」である「歌」は、なんと人の命を救う程の活躍を見せる。
歌は、人の思いがこもるため、同氏が動かす「人ではないもの」の中でも魂が強い傾向にある。
はだしのゲン2脚本でも、歌が、子供達に元気をつける役割をしていた。

また、手がかりとなる書類をキートン達に渡してくれるゴットロープという老人も、強烈な印象を残している。
めぞん一刻最終回脚本にて感動的だった惣一郎の父もだが、同氏は老人を強く印象づける話作りや演出がうまく、挙げればキリがない。

はだしのゲン2脚本の構成では、「おんぶ」と「子供達を見守る原爆ドーム」が柱となっている。今回の柱は、「オルゴール」と「歌」。なので、クライマックスもラストも、台詞ではなく「歌」で〆る。
ラストにローザが涙声で歌う歌は、非常に胸を打つ。

毎度のことながら、脚本という立場になっても、台詞に頼らない話作りが同氏の強い個性になっている。
しかも演出時代より脚本の方が、それが出来ているのが非常に謎。
そして原作つきでも、同氏が出力するテーマは似通う。

もともと私が高屋敷氏に注目し始めたのも、同氏が多く演出を手がけた「家なき子」の再放送がきっかけ。その時も、「カイジのルーツ的なもの」を強く感じた。
それだけ、同氏が出力したいテーマには共通性がある。

高屋敷氏のテーマの中でも強烈な物の一つが、「ぼっち・ぼっち救済」。
今回も、母に死なれ、父に捨てられたと思い込んだローザの孤独が描かれ、ついには殺人を犯す寸前まで行ってしまっている。
だが、間一髪で彼女の孤独は救済された。

一方で、ぼっち救済失敗の悲劇も多々ある。監督作忍者マン一平の、海辺に住む孤独な怪物は、人間達を砂像にしてしまった罪のため一平達に退治される。
また、XMEN脚本でも、息子のために一人で頑張りすぎた女性科学者が悪者に手を貸してしまう。

カイジ脚本・シリ構でも「孤独」はしっかり描かれており、原作通りだが、全人類の抱える孤独について触れている。そして孤独を救うのは「人と人の通信」であり「人間が希望そのもの」とカイジは悟る。
高屋敷氏が強調したいものと非常に相性がいい。

ただ、相性の良し悪しは、脚本家や演出家が選べる領分ではない(Pや監督が絡む)。
その中で、自分の強調したいテーマを押し出す技に、高屋敷氏は長けているのだと感じてきた。だから、参加作の映像から受ける印象が似通うのだと感じた回だった。