カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

太陽の使者鉄人28号41話脚本:自分とは何か

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。 少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。 監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

━━━━

インカ帝国ゆかりの都市・ペルーのクスコが、ロボット蜂の大群と、それを率いる謎の円盤に襲われる事件が発生。

首謀者・エスコは、自らを甦ったインカ帝国の女王と名乗り、クスコをインカ帝国再建のため明け渡せと迫る。

この事件を受け、正太郎・大塚警部・敷島博士(正太郎の父の友人)・鉄人はペルーへ飛ぶ。ここで、地図が表示される。高屋敷氏の作品で地図は頻出。挙げればキリがないが、ルパン三世2nd脚本・演出、マッドハウス版XMENと比較。

f:id:makimogpfb:20171216204523j:image

ペルーに到着した正太郎達は、現地警察のベラ警部に歓迎される。彼もまた、高屋敷氏の特徴である、味のあるおじさんキャラの一人。ルパン三世2nd脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20171216205047j:image

ベラ警部によると、エスコはインカ帝国時代の女王像に瓜二つで、その女王像は何者かによって盗まれてしまったという。

この説明場面でプロジェクターが使われるが、プロジェクターを使う場面はよく出てくる。ルパン三世2nd演出と比較。

f:id:makimogpfb:20171216205557j:image

プロジェクターを使う場面は、あしたのジョー1脚本疑惑回(無記名)にも出ており、益々疑惑が強まる。

ベラ警部は、エスコが操るロボット蜂のうち、墜落した1機の修理を敷島博士に依頼する。直れば、エスコのもとへ戻る筈だから、彼女の居場所が掴めると踏んだためである。敷島博士は快諾。

ここで、時間経過を表す夕陽が映るが、夕陽も高屋敷氏の作品には付き物。太陽を重要なキャラクターと捉えているためと思われ、スタッフや年代が違っても映像が似てくる。 コボちゃん花田少年史蒼天航路脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20171216210707j:image

ロボット蜂は直るが、直った途端にビルを突き破って飛び立ってしまう。正太郎達は、急いでヘリで追いかける。

ヘリや発信器描写も、高屋敷氏の作品によく出てくる。1980年版鉄腕アトム脚本・ルパン三世2nd演出と比較。

f:id:makimogpfb:20171216211331j:image

エスコの居場所がマチュピチュの神殿と判明するも、エスコも鉄人が向かって来るのを察知、ロボット蜂の大群を差し向ける。

鉄人はロボット蜂の群れに対し善戦するも、数匹のロボット蜂がブースターに入ったトラブルで墜落。

正太郎達は何とかロボット蜂の群れから逃走。ロボット蜂達はエスコのもとへ帰る。

鉄人の故障は軽微のため、敷島博士がすぐに直してくれることに。

そこへエスコが現れ、近くの街・サンピエに対し、女王の力を見せると言い放つ。

正太郎達がサンピエに赴くと、サンピエが忽然と消えてしまう。

クスコに戻った正太郎達は、サンピエが消えたことに戸惑う。
一方、敷島博士は鉄人の修理を完了。また、敷島博士は、エスコがフローレという博士にそっくりな事を指摘。

フローレ博士はタイムマシンの開発を進めていたが、行方不明になっているという。

敷島博士は、フローレ博士が過去に行き、サンピエを破壊したため、サンピエが消えてしまったのでは、と仮説を立てる。

その時、エスコが現れ、クスコを明け渡せと迫る。正太郎は鉄人を操り、エスコの円盤と戦闘。

エスコの円盤は回転ノコギリのような攻撃をしてくるが、回転ノコギリはしばしば高屋敷氏の作品に出てくる。元祖天才バカボン演出と比較。

f:id:makimogpfb:20171216214521j:image

戦闘の最中、エスコの円盤はタイムマシン機能を発動。タイムマシン機能は周囲を巻き込む仕様で、鉄人と正太郎も、インカ帝国時代にタイムスリップしてしまう。

タイムスリップした鉄人が、太陽を背に降りてくるシーンが、高屋敷氏の色々な作品と似てくる。挙げればキリがないのだが、忍者戦士飛影脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20171216215038j:image

これもまた、同氏が太陽を重要キャラと捉えているためと思われる。エスコの部下が「太陽の中から現れた」とも言うので、脚本段階から意図されている画と言える。

正太郎と鉄人が降り立ったのは、インカ帝国時代のサンピエだった。町は破壊されており、長老によれば、エスコがいきなり襲って来たらしい。

それを聞いた正太郎は、現代のサンピエが消えた理由を理解。そこで、鉄人を使い町の復興を手助けする。

「まんが世界昔ばなし」における高屋敷氏脚本の「ガリバー旅行記」でも、ガリバーが原作通り小人の国のために色々貢献するのだが、それが思い出される。

鉄人によるサンピエの復興を知ったエスコは、再度サンピエを襲いに来る。

そうはさせじと、正太郎は鉄人で迎え撃ち、エスコの円盤を半壊させる。

だが、墜落した円盤に近付いた正太郎は、エスコの部下に捕らえられてしまう。

エスコに対面した正太郎は、彼女の正体がフローレ博士なのではないかと問い詰める。

エスコはそれを認め、過去に盗んだ女王像を見せる。像がよく出るのも、高屋敷氏の特徴。ルパン三世2nd演出と比較。偶然にも、ルパン三世2nd演出回でも、盗む対象が像である。

f:id:makimogpfb:20171216222031j:image

 エスコ(フローレ博士)は、ペルーに旅行中、自分にそっくりな女王像を見て、自分がタイムマシンを完成させてインカ帝国時代に行き、女王になったのだと悟る。

タイムマシンを完成させてインカ帝国時代に降り立ったフローレ博士は、自分のテクノロジーを見せ、一気に女王となったのだった。

だが、インカ帝国の史料を調べるうち、自分が鉄人に殺される未来を知る。

ここで、不吉を知らせる鷲が映るが、こういった鳥演出も、高屋敷氏の特徴。長年一緒に仕事した出崎統氏の影響と思われる。高屋敷氏の鳥演出は、物語性があるのが特色。ルパン三世2nd演出と比較。

f:id:makimogpfb:20171216223421j:image

エスコは、自分の運命を変えるには鉄人を倒すしかないと言い、鉄人と戦うために正太郎を解放する。なかなか男気のある行為で、性別問わず男気を描写する高屋敷氏らしい。

これを受け、鉄人とエスコは戦う。死闘の末、鉄人はエスコの円盤に勝つ。正太郎は、一緒に現代に帰ろうとエスコに呼び掛けるが、彼女は女王としてのプライドを見せ、最後の力でタイムマシン機能を発動。正太郎と鉄人を現代に帰す(特徴:単純ではない善悪)。

f:id:makimogpfb:20171216224505j:image

エスコの円盤は爆発四散し、正太郎と鉄人が現代に帰ると同時に、円盤の破片が降ってくる現象が起きる。不思議な光景に、大塚警部達は驚き、また、正太郎と鉄人の帰還を喜ぶ。

正太郎達が現代に帰って来た時も、太陽が重要キャラとしてクローズアップされている。これも例が数多くあるのだが、あしたのジョー2脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20171216225334j:image

帰って来た正太郎に、大塚警部は、消えたはずのサンピエが元通りになったことを告げる。

そのサンピエの一角には、インカ帝国時代に描かれた鉄人の姿があったのだった(特徴:物言わぬものが“語る”)。ルパン三世2nd脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20171216230101j:image

  • まとめ

今回の目玉は、エスコの性別を超えた「男気」。運命に抗うため、鉄人との決闘を選び、最後まで女王のプライドを捨てなかった彼女には、男っぽいかっこよさがある。

これは、出崎統監督の特徴で、男気のある女子高生ばかりだったエースをねらえ!演出時代に培われたものと思われ、多くの高屋敷氏の作品で発揮されている。

こういった「男の魅力」はカイジのシリーズ構成・脚本でも如何なく発揮されており、覚醒したカイジのかっこよさに多いに貢献している。

あと、今回のテーマの一つとして「アイデンティティの如何」がある。これも、よく出てくるテーマで、今回は、エスコ・フローレと、二つの自分に揺れるエスコの姿が描かれている。最後には、彼女は「エスコとしての自分」を選び、女王として散る。

対して、正太郎は「フローレ博士」として彼女を扱い、一緒に帰ろうと呼び掛けるわけだが、それは正太郎の優しさでもある。これはこれで、正太郎の「男気」が描かれている。

このように、今回は「男気」「アイデンティティ」「プライド」が柱となっていると考えられる。

この3つはカイジのシリーズ構成・脚本でも大きい位置を占めており、カイジはじめ「男気」がある魅力的なキャラが出て、石田さんの最期はじめ「矜持」が描かれ、人間競馬や鉄骨渡りを通し、カイジは自分のアイデンティティの如何を問われる。
極限状態のなか、カイジは自分のアイデンティティとも言える「人間らしい優しさ」を捨てない選択をしていく。

そう見ていくと、今回のエスコ(フローレ博士)も、自分とは何かを考え、彼女なりの選択をしたと言える。それが悲しいものであろうとも。

今回は、「己を強く保て」というメッセージが強く、それは高屋敷氏の様々な作品で打ち出されている。テーマ的には、カイジのシリーズ構成・脚本のルーツを色濃く感じる回だった。