カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

蒼天航路11話脚本:善悪なき戦場

アニメ・蒼天航路は、同名漫画のアニメ化作品。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

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後漢支配下に置いた北方の暴君・董卓(とうたく)に対し、袁紹(えんしょう)を中心にした反董卓連合軍が結成された。その中には、曹操のほか、後の英傑となる劉備張飛関羽孫堅らもいた。

董卓連合軍は、都へ進むための関門である砦・汜水関を落とすべく進軍、戦闘に入る。

曹操は、曹軍の旗をあらゆる隊に持たせる作戦に出る。なぜなら、董卓軍の将・華雄曹操の重鎮・夏侯惇が討ち取った情報が広まっており、曹軍が多いと思わせれば董卓軍が怯むと踏んだためである。

様々な旗の意味深なアップが続くところに、高屋敷氏の特徴が出ている(意思を持つ物)。DAYS脚本でも、意思を持つかのような背番号の意味深アップ・間がある。

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また、曹操は戦況を把握するため駒を使うが、この、駒のアップ・間も特徴的。ここも、駒に意思があるかのように描かれる。カイジ脚本でも、物が意思を持っているような描写が沢山出てくる。

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一方劉備は、自分達(劉)の旗が必要だと言い出す(特徴:アイデンティティを示す物)。
そして、自分達も曹軍のように、戦場に轟くような武勲を上げ、評される事が必要なことに気付く。

都の洛陽では、曹操の思惑通り、曹軍の実際の数がわからず董卓軍は困惑していた。

そんな部下達を、董卓は一喝。その最中、化け物じみた強さの戦士・呂布が名乗りを上げる。
呂布は勝手に董卓の愛馬・赤兎馬を駆り出陣。偶然にも、RIDEBACK(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)では、赤くて馬のような主役ロボットが出て来る。

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RIDEBACK1話(高屋敷氏脚本)のサブタイトルは「深紅の鉄馬」。少し赤兎馬を意識したサブタイトルかもしれない。

一方劉備は宣言通り、ボロ旗ながらも旗を掲げる。そして、両軍が激しく交差する戦場にて、何かとんでもないものが迫ってくるのを感じる。彼の予感は当たり、呂布がやって来る。呂布は敵も味方も関係なく殺し、暴れ回る。

そんな呂布張飛は武者震いし、一騎討ちを挑もうとするが、劉備呂布の人間離れした強さを感じ、関羽張飛を止めるよう頼む。「義弟(おとうと)が死ぬ」と言う劉備の姿に、高屋敷氏の特徴である、疑似家族間の愛情が見て取れる。

劉備の内にある徳の高さを感じ取った関羽は、その気持ちに武をもって応えるべく、自分が呂布と戦うと決意。
ここも、特徴である旗のアップ・間があり、関羽の決意に呼応している。

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また、今回の劉備関羽のように、目と目、手と手で通じ合う描写は、たびたび高屋敷氏の作品に出てくる。ルパン三世3期脚本と比較。

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こうして、関羽呂布の死闘が開始される。劉備関羽の強さに感動し、あらためて天下を取ろうと決意する。

関羽呂布の決闘により、両軍は膠着状態に入る。

それを見守る袁紹は、自軍をこの機に乗じて動かすべきか迷う。
曹操はそんな袁紹を焚き付け、それを受けた袁紹は自軍を動かす。カイジ2期脚本にて、遠藤さんをうまく煽り味方につけるカイジと重なる。

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そんな中、猛牛の大群で反董卓連合軍を蹴散らしながら、董卓が戦場に到着する。
董卓は残虐に兵を殺しまくり、死体の山を築く。
戦場には幼い皇帝も来ており、劉備は、どさくさに紛れて皇帝に接近。劉備の挙動の可笑しさ・無邪気さに、皇帝は笑顔を見せる。高屋敷氏特徴の、年齢性別問わない無邪気さ・幼さが出ている。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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劉備は皇帝に、皇帝の血を引く(真偽不明)自分が天下を取ると宣言して去る。張飛にお姫様抱っこされる劉備が、これまた幼い。

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一方、董卓の残虐さに、反董卓連合は萎縮。やむを得ず、袁紹は兵を撤退させる。

曹操は、敵ながらも董卓の強さと、一見粗暴に見えても、緻密に練られた行動に感心する(特徴:善悪の区別は単純ではない)。

その後、董卓は都・洛陽を燃やす。ここも、「キャラクター」として炎や都市が描かれており、めぞん一刻脚本の、まるで生きているような一刻館などが思い出される。

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また、立ち昇る炎が龍となる。ここも、炎が「生きている」描写となっている。

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洛陽を燃やした後、董卓は都を長安に移し、自らを「太師」と名乗るのだった。

  • まとめ

まず目を引くのは、劉備の幼さ・無邪気さ。その幼さは、純粋さでもあり、戦況を鋭く見ることができる。また、ちゃっかり皇帝に会いに行き、皇帝の笑顔を引き出している所も強調されている。
劉備の無邪気さは、幼い皇帝の孤独を癒す面もある(特徴:ぼっち救済)。

また、「人ではないもの」がキーキャラクターとなっているのも高屋敷氏の特徴。今回は「旗」。旗はアイデンティティを表すものの一つであり、曹操はそれを作戦に、劉備は自分達の存在を知らしめるために使う。アイデンティティの如何も、高屋敷氏の作品によく出てくる。

そして、たびたび出てくる特徴、「善悪の区別は単純ではない」件について。残虐の限りを尽くす暴君・董卓でさえ、少しキレイめにして、かっこよささえ感じられる将として描いている。高屋敷氏は、この「敵ながらかっこいい」さまを描写するため、本作含め原作に大ナタを振るうことがあり、こだわりが感じられる。

終盤では、燃やされる「洛陽」という都市に「生死」があることが描かれている。

燃え盛る炎の中から龍が出現するシーンの強調も、炎が「生きている」ことを表しており、高屋敷氏らしさが出ている。

あと、人ではあるのだが、呂布は今回、雄叫び以外は一切喋らない。演出や脚本で「喋らない“もの”の無言の主張」を描いてきた高屋敷氏にとって、呂布は得意な事を生かせるキャラクターなのかもしれない。

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さらに、劉備の無邪気さに対して曹操の冷静さが描かれる。曹操は大局的に戦場を見ており、関羽呂布といった派手な豪傑を評しながらも、戦場全体を注視している。今回、曹操の役割は一見地味だが、「善や悪を決めつけない」目で戦場を見ている。

カイジ1期最終回(高屋敷氏脚本)にてカイジは、兵藤会長は悪人なのだから敗れるべき、と、戦略なき運に頼り、会長に負けてしまう(一方会長は戦略があった)。また、火の鳥鳳凰編(脚本・金春氏と共著)では、茜丸が、自分より彫刻の才がある我王に嫉妬し、元は犯罪者である彼の彫刻が認められるべきではないと主張。その愚かさを見ていた火の鳥により、茜丸は炎に焼かれ死ぬ。

このように、高屋敷氏の作品は、「悪人だから」「残虐だから」敗れるべき、という屁理屈によって、真の「理」を忘れてしまうことに警鐘を鳴らす。

悪人などという言葉に収まらないほどの暴君である董卓だが、曹操は、その中にある「理」を見つめている。その様は、高屋敷氏の理想とも取れる。派手な役回りの劉備達に負けず劣らず、董卓曹操の魅力が描かれていた回だった。