カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

空手バカ一代38話演出コンテ:全てを包み込む太陽

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるため、国内外の強敵と戦っていく姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が吉田喜昭氏、コンテ・演出が高屋敷英夫氏。

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ブラジルで大農場を経営する富豪・半田から、従業員に空手の心・技・体を教えて欲しいと頼まれた飛鳥は、ブラジルへと飛ぶ。

ブラジルの地に降り立った飛鳥を、半田と、その秘書・フレセドが出迎える。高屋敷氏の演出・脚本とも、味のある中高年男性はよく出る。画像は、味のあるおじさん集。
今回、ルパン三世2nd演出、太陽の使者鉄人28号脚本、元祖天才バカボン演出。

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半田の財力は想像以上であったが、飛鳥は、半田の拝金主義に疑問を持つ。
そんな折、並外れた力と身体能力を持つ、農場の現場監督・オハラに、飛鳥は興味を持つ。

その後半田は、豪華な道場を見せびらかし、飛鳥は益々、半田に呆れる。

飛鳥が滞在することになる部屋も豪華で、フレセドはサイフォンで、半田農場で取れた最高のコーヒーを入れてくれる。

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ここで気になるのが、あしたのジョー2の高屋敷氏脚本回で出てきた、西(丈のジムトレーナーで友人)のコーヒーサイフォンである(上記画像右)。西は、「本物のコーヒーが飲めんねん」と言うが、ここは、西の優しさや友情が「本物」であることを、暗に示している。
今回出てきたのは、「最高」のコーヒー。ここでは、半田の拝金主義を示すものだが、時を経て、あしたのジョー2脚本では、西の真心を示すものに変化している。
このように、「物」が重要な役割を担っているのは、高屋敷氏の大きな特徴。

そして飛鳥の部屋に、オハラが乱入してくる。オハラは、足技を駆使する格闘技・カポエラの使い手で、飛鳥に挨拶がてら、軽く攻撃を仕掛ける。半田は激怒し、オハラを殴って追い返す。半田はカポエラを嫌悪しており、カポエラの使用を禁じていた。

オハラと半田が退室した後、飛鳥はフレセドに、カポエラについて聞く。フレセドは、オハラがカポエラの達人であること、カポエラが、奴隷の間で発祥した格闘技と言われているため、虐げられた者達の怨念がこもっていると言われていること等を飛鳥に話す。
フレセドは夕陽を見ながら話しており、夕陽が意味深にズームアップされる。高屋敷氏特徴の、意思を持つような太陽。めぞん一刻脚本、元祖天才バカボン演出、蒼天航路脚本と比較。

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夜、飛鳥の歓迎パーティーが催される。ここも、高屋敷氏特徴の飯テロ。コボちゃんカイジ2期脚本と比較。

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パーティーの席上にて、半田の娘・マヤが、空手が最強の格闘技なのかどうか、飛鳥に聞いてくる。
それを受け、半田は飛鳥に、空手のデモンストレーションを頼む。飛鳥は、空手は余興ではないとしながらも、渋々、技を見せる。
そこへ、またしてもオハラが現れ、カポエラで飛鳥に戦いを挑んでくる。火をバックにして、後が無い様が、カイジ2期脚本のイメージと重なってくる。火の演出も、高屋敷氏の作品ではよく出る。

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戦いは拮抗するかに見えたが、マヤが銃を持ち出し威嚇射撃をしたため、中止となる。

マヤの意外な勇ましさは、あしたのジョー2脚本の葉子(丈のプロモーター的存在)と重なってくる。

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パーティーを滅茶苦茶にしたオハラに対し、半田はクビを言い渡す。
オハラはそれに従うことにするが、ここの場面で、画面が回転・セリフにエコーがかかる。似たような演出技法が、ベルサイユのばらコンテに出てくる。

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ちなみにエースをねらえ!演出でも似た感じの演出が出る。出崎統氏から伝授された感じがあり、好んで使っているものなのかもしれない。

また、もう一つ、出崎兄弟ゆずりの鳥演出が出てくる。前にも書いたが、高屋敷氏の鳥演出は脚本からでも出るのが驚異。ベルサイユのばらコンテ、家なき子演出、カイジ脚本と比較。

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その後オハラは、半田に退職金を要求。半田はそれに怒り、酒の入ったグラスをオハラに投げつける。キャッツアイ脚本、カイジ2期脚本と重なる。

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銃を持ち出した半田に対し、オハラはマヤを人質に取って、退職金相当の身代金を要求、離れの小屋に立て籠る。

半田は飛鳥に泣きつくが、飛鳥は、そのままオハラに金を渡せばよいと突き放し、半田の拝金主義の愚かさを一喝する。
それに反発しながらも、半田は身代金を用意、オハラとの交渉の準備をする。

その頃、小屋にてオハラはマヤに非礼を詫びていた。ここも、出崎兄弟ゆずりの立体構図が出てくる。ルパン三世2nd演出、ベルサイユのばらコンテと比較。天井の梁を利用した立体構図が、コンテのクセの一つのようだ。

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マヤはオハラを許し、なんとなく和らかな雰囲気になる。ここで、高屋敷氏の大きな特徴の一つ、ランプ演出が出現。脚本作でも、いや後年の脚本作の方が「活躍」している。あしたのジョー2・アカギ・ワンナウツカイジ脚本と比較。

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ランプは、高屋敷氏作品における太陽や月と同じで、全てを「見ている」ことが多い。
今回も、オハラとマヤの関係を「見て」おり、かつまた、二人の関係を表している。

一方半田は、もしもの時に備え、人や銃をかき集めていた。そんな中、飛鳥はフレセドに、何故半田がカポエラを憎んでいるのか尋ねる。
実は半田は、過去にカポエラ使いの山賊に、妻を殺された事情があった。こういった、色々な人の複雑な背景を描いて行くのも、高屋敷氏の特徴の一つ。

過去回想にて、半田の妻が最期までマヤを庇う描写があるが、母性の強調も、よく出る。ど根性ガエル演出と比較。

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フレセドは、半田にもオハラにもシンパシーを感じており、人柄の良さが窺える。一見地味な人が見せる優しさをクローズアップするのも、よくある。めぞん一刻脚本の、明日菜(三鷹の婚約者)の運転手が思い出される。

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そんなフレセドを見て、飛鳥は何とかしなければ…と思い、行動を起こすことにする。

交渉場所にて、半田はオハラに身代金を渡すも、従業員と共に銃を構え、彼を殺そうとする。
オハラはそれに抵抗、逆に半田を殺そうとする。
そんな二人に、飛鳥が割って入る。オハラは、飛鳥が邪魔だとして、カポエラで飛鳥を襲う。やむを得ない形で、飛鳥はオハラと対戦。上から攻撃を加える戦法で、見事オハラを倒す。

それに便乗する形で、半田はオハラに対し発砲。だが、マヤがオハラを庇い、軽傷を負う。マヤは、オハラを愛していたのだった。半田は、マヤの真摯な思いに胸を打たれ、矛を収める。

和解する彼等を、朝日が照らす。朝日を見ながら飛鳥は、もう一度ブラジルに来たい、その際は思う存分カポエラに挑んでみたいと思うのだった。ここも、願いを聞き届けるように、太陽が「活躍」。画像は、願いを聞く太陽や月。今回、エースをねらえ!演出、あしたのジョー2脚本、元祖天才バカボン演出。

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  • まとめ

コンテと演出の両方を務めたこともあり、高屋敷氏の好みが存分に出ている。

複雑な背景が絡み、どれが善で、どれが悪か、はっきり区別ができなくなる様は、他の演出・脚本作にも脈々と受け継がれている。

また、義理人情についても、カイジの脚本・シリーズ構成含めて描かれることが多く、その温かさも、高屋敷氏の魅力の一つ。

そして、ルパンからカイジまで、同氏の理想の主人公像の一つとして、「中高年の人に優しい人間」というものがある。今回も、飛鳥が行動を起こしたのは、心優しき中高年男性・フレセドのためだった。

また、今回のフレセドのように、意外なキャラに視聴者が心を動かされるのも、高屋敷氏の作品にはよくある。他作品でも、「高屋敷氏が好きなキャラ」が、自然に視聴者の心に入り込む現象が発生し、それは原作と異なることが多い。原作に寄り添いながらも、そうなる所が、いつも驚かされる。

あと、またしてもランプ演出が飛び出しており、その歴史(40年以上)の長さにも驚かされる。この頃から、全てを「見ている」迫力があり、かつまた、出す目的が明確。

それは、太陽や月にも言えることで、今回も夕陽や朝陽が、全てを見守っていたり、人の願いを聞いたりする。こちらも歴史が長い。

今回の脚本の吉田喜昭氏は、元祖天才バカボンや、忍者マン一平(高屋敷氏監督作)などで、高屋敷氏との組み合わせが度々あり、温かい話や、可愛い話が多い。吉田氏は早くから活躍しており、数々の名作に関わっている。高屋敷氏との相性も良い感じを受ける。鬼籍なのが悔やまれる。

高屋敷氏が、コンテや演出にまわった場合、どの程度脚本を上書きしたり省略したりするのかはわからないが、「きっと、きっと」「そんな、そんな」など、単語を繰り返す所は、おそらく高屋敷氏の上書きなのでは、と思う。脚本の時に、そういった言い回しが目立つため。この「単語の繰り返し」は、後に、あしたのジョー2最終回脚本にて「葉子、葉子はいるか」や「こいつ、こいつをよ、もらってくれ…」など名アレンジを生み出すことになる。カイジ脚本も然りで、「18だ…次の張りは…18ミリで勝負だ。倒す…お前だけはな…!」など、良アレンジにより、迫力が増している。

今回は飛鳥が、他人の背中をちょっとだけ押してあげる回。吉田喜昭氏の温かい脚本とも相まって、複雑ながらも濃い義理人情が展開された回だった。