カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

空手バカ一代42話演出・コンテ:時を越える個性

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるために、国内外の強敵と対戦する姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が小森静男氏、演出・コンテが高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

舞台はフランス。格闘をショー扱いする、ブラッド・ジョー(格闘マニアの大富豪)やカイザー(プロレス興行師)に飛鳥は怒り、彼等と袂を分かつ。が、彼等は飛鳥に、命がけの「地下プロレス」の存在を明かす。
地下プロレスの帝王・ロゴスキーの強さを目の当たりにした飛鳥は、彼との対戦を決意。かくして死闘は始まった…。

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ブラッド・ジョーとカイザーが飛鳥を地下プロレスに案内する場面にて、警備員が懐中電灯を照らすが、懐中電灯ネタは高屋敷氏の作品によく出てくる。らんま・チエちゃん奮戦記・カイジ2期脚本と比較。

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地下プロレスは、逃げようとした者は殺されてしまう掟がある。その掟に則って、レスラーが殺されてしまうのを、飛鳥は目撃。なんとなく、カイジ(シリーズ構成・脚本)の、エスポワールにおける犠牲者と被る。

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レスラーが殺されてしまう場面では、高屋敷氏の特徴であるランプのアップ・間がある。
画像は不吉なランプや灯。今回、ベルサイユのばらコンテ、アカギ脚本、RIDEBACK脚本。

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命を賭けた地下プロレスは、暇をもて余した金持ち達に大人気。これもカイジ(シリーズ構成・脚本)の、人間の生死を楽しむ金持ち達と重なっていく。

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地下プロレスの帝王・ロゴスキーのイメージ映像で、鳥が出てくる。長年一緒に仕事した出崎兄弟ゆずりの鳥演出。家なき子演出、めぞん一刻・太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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ロゴスキーの試合場面では、高屋敷氏の特徴であるランプ演出が入りまくり、かつまた、同氏の他の担当作と、どんどん絵面が似てくる。絵を管理できない「脚本」でもそうなるのが、毎回不思議。
らんま・じゃりン子チエあしたのジョー2「脚本」と比較。

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さらに、同氏の他作品とのシンクロは続く。じゃりン子チエ脚本、元祖天才バカボン演出と比較。高屋敷氏と縁の深い出崎哲氏は、よく回転作画を使うが、高屋敷氏も、よく使う。何故か脚本でも、回転場面は多い。

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飛鳥がロゴスキーとの対戦を決意する場面でも、高屋敷氏のランプ演出が炸裂。当時の技術の限界で、ランプの自己主張が激しい。
あしたのジョー2・らんま・はじめの一歩3期脚本と比較。

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地下プロレスには、饒舌なリングアナがいるが、高屋敷氏の作品には、早口で饒舌な実況者やアナウンサーはつきもの。らんま・カイジ・1980年版鉄腕アトム脚本と比較。

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飛鳥とロゴスキーが対峙する場面が、カイジ2期「脚本」とシンクロを起こしている。こういった奇跡的偶然が起こり続けるのも怪。

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月または太陽が「見守る」演出が、今回も出てくる。ワンナウツ脚本と比較。どちらも、懸命にトレーニングする姿を、月や太陽が「見ている」。

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ロゴスキーに殺されかける悪夢にうなされ、飛鳥がシャワーを浴びる場面があるのだが、あしたのジョー1の、高屋敷氏脚本疑惑回(無記名)にて、丈を恐れるウルフ金串がシャワーを浴びる、似たような場面がある。そのため、疑惑が強まる。確定はできないものの、高屋敷氏の記憶に深く残る回であったのは確か。

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いよいよ飛鳥とロゴスキーが対戦する場面が、らんま脚本やカイジ2期脚本とシンクロを起こしている。これも奇跡的。

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  • まとめ

リング上での戦いということで、あしたのジョー2・らんま・はじめの一歩3期「脚本」とのシンクロが多い。とにかく不思議なのは、この「脚本」から出力された画が、似てくるということ。

何回か書いているが、奇跡とか怪現象で片付けずに、原因を考えてみると、画を想像しやすい脚本のため、コンテ師が出力する画が似てくるのではないか…と考えている。それでも不思議な現象で、面白いところ。

あと、他の高屋敷氏担当回と同じく、今回もナレーションが多用される。ナレーション多用は、ワンナウツやアカギ、カイジのシリーズ構成・脚本が代表格。ナレーターを重要キャラと捉える高屋敷氏の姿勢が、この時代から強く出ている。

そして、36話演出に続き明らかになった、ランプ演出の強調。

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当時の技術の限界のおかげで、ランプを強調したいという高屋敷氏の意志が明確になり、考察する上では大収穫である。

また、話全体から醸し出される個性のせいか、今回、「カイジみたい」というネットの意見が見られた。これも運命的。

家なき子(高屋敷氏演出参加)の炭鉱編も、「カイジ地下編みたい」というネットの意見が非常に多かった。
シチュエーション、強調したい箇所、テーマ、好みなどが総合されて画面に出力されると、それが、高屋敷氏の過去・未来作と重なっていき、特に意識しなくても、「(高屋敷氏の他の担当作と)似ている」と感じるように出来ているのだろう。

高屋敷氏は、主張したいところは絶対に譲らない、固い意志があるのではないか?と感じることがある。統一性を犠牲にしてでも、個性が突出していることが多々あり、今回も、ランプの激しい自己主張に、それが出ている。

私が興味を持ったのも、高屋敷氏の持つ強烈な「個性」。今回のランプの自己主張は、それを思い出させてくれた。

また、激しい競争を生き抜くには、それくらいの「個性」がなければならないのかもしれない。