カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

グラゼニ(2期)13話脚本:背番号39の男

アニメ・グラゼニは、原作:森高夕次氏、作画:アダチケイジ氏の漫画をアニメ化した作品。監督は渡辺歩氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。2期は1期最終回12話からの続きで、開始話数は13話。

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  • 本作のあらすじ:

プロ野球投手・凡田夏之介は、年棒にこだわるタイプで、「グラウンドにはゼニが埋まっている(すなわちグラゼニ)」が信条。そんな彼の、悲喜こもごものプロ野球選手生活が描かれる。

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今回は、コンテが藤原良二氏、演出が村田尚樹氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、グラゼニに関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BC%E3%83%8B

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  • 今回の話:

夏之介は5月に怪我をし、4ヶ月後の9月にようやく復帰。それまでの経緯が語られる。

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冒頭、怪我から復帰した夏之介がユニフォームに袖を通す場面が丁寧に描写され、背番号39のアップ・間がある。このような、アイデンティティを示すものとしての背番号の意味深アップは多々ある。DAYS(脚本)と比較。

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夏之介が通路を歩く所は、光と影のコントラストがある。F-エフ-(脚本)と比較。

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ここから、夏之介の回想に入る。器用な時系列操作は、高屋敷氏の長所。

5月、あるビジターゲームの日。急病の先発投手に代わって、夏之介(普段はリリーフ)を先発にしようという話が持ち上がる。
迫田(ブルペンコーチ)は、まるで便利屋のような起用では、夏之介が可哀想だと言うが、田辺(監督)は、便利屋をやれるのは実力があるからで、夏之介は先発ローテ入りのポテンシャルを秘めていると言う。

こういった、主人公を取り巻く複数の年上男性達のドラマを、高屋敷氏はよく描写する。F-エフ-・アカギ・カイジ2期(脚本)と比較。

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結局、先発を任されることになった夏之介は、急遽名古屋へ。名古屋城金のシャチホコが映るが、MASTERキートン(こちらは、ロンドンの中華街)とシンクロ。絵をいじれない脚本なのに、不思議なところ。

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結果を出そうと焦る夏之介は、失点を恐れて無理に走者にタッチしようとした際に、右手首を骨折してしまう。
こういった挫折や絶望を、高屋敷氏は構成の重要なポイントとして描く。これはカイジ1・2期(脚本・シリーズ構成)、ワンダービートS(脚本)でも色濃い。他も多数で、特にF-エフ-*1の終盤手前(26~30話)では、怒濤のように(アニメオリジナルで)描写されている。

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リハビリに励む夏之介を、徳永(夏之介の先輩で、現在は解説者)が訪ね、もともと夏之介は怪我しにくい、頑丈な体を持って生まれたし、クロスプレーの怪我は選手につきものなのだと説いて励ます。
夏之介は、(慰めに来てくれた)徳永の気遣いを察する。(特に男同士の)友情も、強く描写される。F-エフ-・陽だまりの樹忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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季節の移ろいも、印象的に描写される。こちらも、高屋敷氏の担当作によくある。めぞん一刻カイジ2期・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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なんとか二軍での調整を開始した夏之介は、復帰したら以前のようなリリーフとして起用すると迫田から告げられ、また「便利屋」として使われると自嘲する。
そんな彼を見た迫田は、今は優勝争いの大事な時期だから、また以前のようなリリーフとしての活躍が期待されているのだと夏之介を諭す。

ここも、主人公を見守ってくれる年上男性の渋さ・温かさが出ている。F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)でも、アニメオリジナルをかなり追加して、その点を前面に押し出している。

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実戦復帰となった夏之介を、大野(夏之介と同郷の後輩)や渋谷(夏之介と仲良しのローテ投手)が、焼き肉で祝ってくれる。こちらも、友情が温かい。

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また、飯テロは高屋敷氏の大きな特徴。
挙げればキリがないのだが、チエちゃん奮戦記(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、カイジ2期・コボちゃん(脚本)と比較。

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夏之介は、皆で頑張って、優勝を狙おうと言う。大野や渋谷も、それに賛成し、皆で焼き肉をもりもり食べるのだった。

その後、二軍でめきめき調子を上げた夏之介は、晴れて一軍に上がることが決定。監督やコーチ達が喜ぶところも、微笑ましく晴れやかに描かれる。

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そして9月(時系列が現在に戻る)。一軍の試合に、夏之介の姿があった。
シーズン通して大活躍の道は断たれてしまったが、優勝に貢献して評価を上げることを目指し、夏之介は奮起する。そして何よりも、ここ(球場)に戻れたことを噛みしめ、彼はブルペンで肩を作る。
グラウンドには銭が埋まっている。「グラゼニ」!

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  • まとめ

1期で割と活躍していた夏之介が、いきなり怪我をしてしまう。カイジ2期(脚本・シリーズ構成)においても、1話でカイジが地下労働施設に落とされる。絶望や挫折を、構成に上手く使う手腕には、いつも唸らされる。

怪我をしたことで、周囲の温かさも強調される。友情・仲間愛・年上男性の愛情など、高屋敷氏は人情を長年描いており、見ているこちらも温かい気分になる。

また、挫折するも、新たな目標を(迫田の言葉も手伝って)見つけ、奮起する夏之介の姿も良い。「自分の道は自分で決めろ」は、あらゆる作品で見られる高屋敷氏のテーマの一つ。 

1期最終回(12話)にて、「僕には野球しかありませんから」「(プロ野球は)好きで選んだ道」という夏之介の決意が描かれたわけだが、2期1話(13話)である今回、その「野球」ができない状況に陥ってしまう。だからこそ、「またここに戻ってきた」という夏之介の思いは重い。このシリーズ構成も見事。 

そして、色々な人達の愛情を受け、夏之介は再び一軍に復帰。だからこそ冒頭で、夏之介の背番号「39」(サンキュー)が映るのだろう。「皆がいるから自分がいる、自分がいるから皆がいる」も、高屋敷氏が掲げ、ブレないテーマの一つ。

本作の制作年は2018年。1970年代の、ど根性ガエルの演出から何十年と変わらない同氏のテーマを、また確認できたことが嬉しい回だった。