カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンナウツ3話脚本:手と手の「契約」

アニメ・ONE OUTS(ワンナウツ)は、甲斐谷忍氏原作の漫画をアニメ化した作品。謎めいたピッチャー・渡久地東亜の活躍を描く。監督は佐藤雄三氏(カイジ監督)で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏。
今回の演出・コンテは矢嶋哲生氏で、脚本が高屋敷氏。

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本記事を含めた、当ブログのワンナウツ関連記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%83%84

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  • 今回の話:

児島(プロ野球打者)と渡久地(謎めいた投手)が行った、ワンナウツ(投手と打者で行う賭け野球ゲーム)勝負2戦目は、デッドボールにより児島の勝ちとなる。勝ったら渡久地の右腕を「もらう」約束だった児島は、渡久地をプロ野球の世界へと誘う。

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ワンナウツ(投手と打者で行う賭け野球ゲーム)勝負2戦目。
渡久地(謎めいた投手)に追い込まれた児島(プロ野球打者)は、優勝できずに引退したチームメイトを思う。回想にて、児島が目を潤ませるのが原作よりわかりやすい。グラゼニ(脚本)で、夏之介の感極まる表情をアニメオリジナルで追加したのと比較。

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時は現在に戻り、咄嗟に身を乗り出した児島はデッドボールとなる。この場合は渡久地の負け。勝ったら渡久地の右腕を「もらう」約束だった児島は、渡久地の手を握る。手から手へ思いを伝える場面は実に多い。F-エフ-・おにいさまへ…MASTERキートンあしたのジョー2・めぞん一刻カイジ2期・グラゼニルパン三世3期(脚本)と比較。

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児島は、渡久地の右腕を「もらった」わけだからと、彼をプロ野球に誘う。そして、リカオンズ(児島の所属するチーム)を優勝させて欲しいと頼む。
アニメオリジナルで、「児島はいつまでも頭を下げ、手を放そうとしなかった」というナレーションが入る。この事からも、高屋敷氏がいかに「手」を重視しているかがわかる。

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児島に連れられ、渡久地はリカオンズに入る。
リカオンズについての解説(人気はあるが、いつも下位に低迷)にて、(アニメオリジナルで)新聞記事が挿入されるが、紙媒体ネタはよく使われる。エースをねらえ!ど根性ガエル(演出)、グラゼニ(脚本)と比較。

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舞台はリカオンズのキャンプ地であり、オープン戦が行われる鹿児島へ。土地を代表するものが映るのは結構ある。
陽だまりの樹ルパン三世2nd・グラゼニ(脚本)と比較。

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木野崎(トレーナー)は渡久地に、リカオンズのオーナー・彩川について説明し、彼は金勘定しか考えていない…と不満を漏らす。
そんな木野崎に渡久地は、自分達が弱いのをオーナーのせいにしていると指摘。
カイジ2期(脚本)でも、影で班長に不平不満を抱いているのに、何もしない面々をカイジが批判するのを強調している。

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彩川と対面するも無礼な態度を取る渡久地は、契約金の類は要らないから、アウト1つにつき500万円を貰い、失点したら5千万円支払うシステムを提示。このあたりのテンポの良さや交渉劇の面白さは、グラゼニ(脚本)の契約更改回と重なるものがある。

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不敵な表情で、彩川は渡久地提案の「ワンナウツ契約」に乗る。
このような駆け引きや腹の探り合いの面白さも、後のグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)の契約更改回(23~24話)に活かされている。

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彩川は煙草に火をつけ、去年の防御率1位の投手を例に計算しても、ワンナウツ契約は渡久地優位にはならない(プラマイ0)…と自信をのぞかせる。
煙草(または葉巻)描写の強調や追加は、様々な作品で目立つ。F-エフ-、MASTERキートン(脚本)と比較。

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後日、ブルーマーズ(オリックスがモデル?)とのオープン戦が行われる。この試合の模様はアニメオリジナル(原作では結果のみ)。三原監督と冴島コーチの愛嬌は、グラゼニ(脚本)の田辺監督と小里コーチの愛嬌に通ずる。高屋敷氏は、中高年の人の可愛さを表現するのに長ける。

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2回にして8点差をつけられている状態なので、三原は渡久地を登板させることにする。
肩を作る必要は無いと言う渡久地に、他の選手達や捕手の出口は反感を抱く(アニメオリジナル)。
グラゼニ(脚本)では、原作に無い試合内容を描くことで、キャラを掘り下げていた。

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木野崎は渡久地を連れ出し、面倒を起こすなと注意する。ここも煙草描写がある。F-エフ-・めぞん一刻おにいさまへ…(脚本)と比較。

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そして登板した渡久地は何と、打者21人を打ち取る。早速多額の支払いをする事になった彩川は怒りを募らせる。

今度はフィンガース(日本ハムがモデル?)との試合が始まる。試合直前でも、ベンチでふてぶてしく眠る渡久地に怒って冴島はボールを投げつけるが、後ろの選手に当たる。原作通りだが、ど根性ガエル(演出)で、町田先生の投げたチョークが、ひろしの後ろの女の子に当たる場面が思い出される。

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怪我で戦線離脱している児島は、解説として渡久地を見守る。主人公にゆかりのある男性が解説にいる状況は、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも発生している。グラゼニの場合、こうした場面をアニメオリジナルで増やしている。

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渡久地と拮抗した投げ合いを続けるフィンガースの河中(昨年の新人王)は、渡久地の恐ろしさに気付く。出口もまた、それを体感。ミットとボールが映るが、このような「物」の「間」は数々の高屋敷氏担当作に出る。
グラゼニおにいさまへ…めぞん一刻(脚本)と比較。

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渡久地はパーフェクトピッチングを続け、打者は打てずじまい。実況アナウンサーが「打てない!打てない!打てなーい!」と言うが、こういった連呼は他作品でも(昔から)目立ち、高屋敷氏の癖かもしれない。
例:カイジ2期(脚本)の「悪魔!悪魔!悪魔ー!」など

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そして何と、渡久地は完全試合を達成。
試合が終わり、照明が落とされる。
ランプを意味深に使い、かつ点灯・消灯描写を効果的に入れるのは、よく見られる。グラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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出口は児島に、渡久地の恐ろしさを実感したと語る。これを先に知っている身である児島は、少し笑みを浮かべてそれを聞く。原作通りだが、こういう微笑は色々な作品で印象に残る。アニメオリジナルで入れることも多い。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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オープン戦終了時点での、渡久地の暫定年俸は2億7千万円也。
一文字ずつ表示される表現がルパン三世のサブタイトル表示に似ている。高屋敷氏はルパン三世2ndに演出やコンテ、脚本で参加している。

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  • まとめ

まず、「手と手」による感情伝達について。ありとあらゆる作品で見られるもので、しかも今回、「手を放そうとしなかった」というアニメオリジナルのナレーションつき。高屋敷氏の「手」への思い入れが強く出ており興味深い。

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高屋敷氏が「手」を重視しているのは、元祖天才バカボンの、親指が喋る回(演出/コンテ)に如実に表れているほか、ワンダービートS20話(脚本)*1の「手は第2の脳」という台詞などからも見て取れる。

この、児島が渡久地の手を握るシーンはアニメで大きく強調されている(原作では小さいコマ)だけでなく、シリーズ全体でも重要な意味があり、「手」による感情表現を長年重視してきた高屋敷氏の真骨頂。

また、ワンナウツ契約場面と、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)*2の契約更改場面を比べると凄く面白い。
密室状態での作劇の上手さが本作でも炸裂しており、グラゼニのルーツとも言えるものになっている。

今回は「契約」が話の芯になっているわけだが、児島との「心身」の契約と、彩川との「金銭」の契約が対比されている。
どちらも重要なキーとなっているが、先に述べたように、アニメでは児島との「心身」の契約が、シリーズ全体に横たわる非常に重いものとなっている。

手から手への感情伝達は、他作品ではラブシーンにもよく見られる。おにいさまへ…(脚本)では、結婚式に新郎新婦が手を握り合い、グラゼニ(脚本)では夫婦が手を握り合っている(どちらもアニメオリジナル)。それだけに、手を通して児島が伝える思いは重い。

あと、相変わらず「話の圧縮」技術が凄い。あれよあれよという間にプロ野球編に入ったばかりか、原作に無い試合描写も入れ、複数エピソードを見事に捌いている。この手腕は、グラゼニでも健在どころか磨きがかかっている。

そして、金にまつわる色々もまた、グラゼニに繋がっていく。
本作の渡久地も、グラゼニの夏之介も、交渉の場で自分を安売りしない。どちらも「プロ」であり、そういう人種は「自分」というものを普通より知っている。「自分とは何か」は高屋敷氏がよく掲げるテーマ。今後も、ここを押さえておきたい。

*1: 当ブログの、ワンダービートS20話についての記事: http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/09/26/184228

*2: 当ブログの、グラゼニについての記事一覧: http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BC%E3%83%8B