カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンナウツ4話脚本:光る脇役

アニメ・ONE OUTS(ワンナウツ)は、甲斐谷忍氏原作の漫画をアニメ化した作品。謎めいたピッチャー・渡久地東亜の活躍を描く。監督は佐藤雄三氏(カイジ監督)で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏。
今回の演出・コンテは小野木一樹氏で、脚本が高屋敷氏。

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  • 今回の話:

プロ野球チーム・リカオンズと渡久地(謎めいた投手)が結んだ「ワンナウツ契約」は現在、渡久地有利。これを悔しがるリカオンズオーナー・彩川は、チームの遊撃手・吉田を買収して渡久地の足を引っ張る策に出るが…

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オープン戦で完全試合を達成した渡久地(謎めいた投手)は、パチンコをしながらマスコミの取材を受ける。原作通りなのだが、あしたのジョー2(脚本)で丈がパチンコをする場面と重なる。渡久地は格言(「プロは勝つのが仕事」)を言い、丈は物思いにふける。

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渡久地と結んだ「ワンナウツ契約」(1アウト取る度に500万円を渡久地が貰い、失点の度に渡久地が5千万円を球団に支払う)で不利な立場にある彩川(渡久地が属する球団・リカオンズのオーナー)は、ペナントレースが始まっても渡久地を出さず、チームは11連敗。新聞ネタの強調は多々見られる。グラゼニ・1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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チームの負けよりも金の事が大事だし、渡久地を出さないのは、他チームに渡久地の研究をさせる為だと、彩川は秘書と広報部長の及川に語る。煙草の「間」が独特で、このような「間」は色々な作品にある。カイジ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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彩川は、遊撃手の吉田を金で操っており、渡久地潰しを企む。

そしてリカオンズは、イーグルス(楽天がモデル?)との試合を迎える。

シリーズ通して、実況アナの台詞が原作より多い。あしたのジョー2・らんま1/2グラゼニほか、名実況は高屋敷氏担当作につきもの。

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1回で既に11失点のリカオンズは、ファンからブーイングを浴びる。
モブが原作より目立っている。はじめの一歩3期(脚本)でも、モブのブーイングが生き生きしていた。また、佐藤雄三監督もモブの表現に長ける。

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他の投手を使い果たした状況の中、渡久地がマウンドに上がる。
投球練習はしないから早くバッターボックスに入れと、渡久地は相手打者の岡部を挑発。
「手」のクローズアップは頻出。F-エフ-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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岡部はゴロを打つが、吉田がゴロ処理を(わざと)誤り、ノーアウトランナー1塁に。捕手の出口は「あんなゴロ、いつもなら楽勝だろうが」と思う。このモノローグはアニメオリジナル。グラゼニ(脚本)では「お前なら楽勝だろ」という、アニメオリジナルのモノローグが出る。高屋敷氏の癖かもしれない。

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その後もエラーを重ねる吉田は、守備をする資格が無いと渡久地に言われ、守備を放棄。この事態を受けても、監督とコーチは渡久地を降ろせない(他の投手がいないため)。監督とコーチの会話が追加されており、愛嬌がある。中高年キャラを可愛く表現する技術は、グラゼニ(脚本)でも健在。

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一旦野手はマウンドに集まる。渡久地は11失点もするチームの弱さを指摘し、三塁手の今井と左翼手の藤田は、相手に劣っているとは思っていないと抗議。
ここでは、この二人が目立つようにできている。
脇役を印象づける手腕は、空手バカ一代(演出/コンテ)や、おにいさまへ…(脚本)でも印象深い。

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渡久地は今井と藤田に同意し、イーグルスには8人守備で十分だと、相手チームを煽る。監督や高屋敷氏はじめ、スタッフが共通するので自然だが、主人公の煽り力の高さはカイジ2期(脚本)でも発揮されている。

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とはいえ、遊撃手がいない穴を突かれノーアウト満塁に。だが、守りたい一心の今井はトリプルプレーを決める。ここも今井を印象付けている。キャラの掘り下げの上手さは、宝島(演出)やF-エフ-(脚本)、ど根性ガエル(演出)などでも見られる。

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後の回では、藤田がファインプレー。原作よりスポットが当たっており、(今回、名前は呼ばれないが)藤田のキャラを立たせている。めぞん一刻(脚本)やベルサイユのばら(コンテ)でも、キャラが立っている脇役に目が行く。原作では名無しのキャラに名前を付けることもある。

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チームの頑張りで、無失点のイニングが続く。今井や藤田、出口は緊張感を持って守備をできたと話し合う。それを聞く吉田の背中が映る。背中を見せるのはアニメオリジナル。背中で語るのは、しばしば見られる。グラゼニ・F-エフ-・DAYS(脚本)と比較。

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渡久地は、危機意識のない勝負に勝利などない…と言い、皆は渡久地の意図(チームの危機意識を高めた)に気付く。
そして皆は、ファンが声援を送っている事に気付く。ファンの声援が力になる状況は、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)にもある。

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渡久地の一言もあり、士気を高めたリカオンズは得点を重ねる。
だが、イーグルスは守護神・水橋を7回から投入。
弱気になる今井に、ストレートとスライダーの区別が付けば打てるのかと渡久地は笑う。笑顔の強調は数多い。陽だまりの樹蒼天航路おにいさまへ…(脚本)と比較。

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今井は、ストレートとスライダーの区別がつけば、かなり有利になると主張。ここも、彼の愛嬌が目立つ。高屋敷氏は、キャラのコミカルさを際立たさせるのに長ける。マッドハウス版XMEN(脚本)、宝島(演出)、ワンダービートS(脚本)と比較。

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水橋はスライダーの時グラブを開く癖があると、渡久地は相手チームの捕手に聞こえるように言う。捕手は、それを水橋に伝える。気を付けると言って水橋は笑顔を見せる。アニメオリジナルで笑顔を追加するのは所々見られる。グラゼニ・おにいさまへ・らんま1/2(脚本)と比較。

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すると、リカオンズの選手達は打てるようになる。渡久地は、スライダーの時に水橋はグラブを閉じる、と自軍には伝えていた。つまり渡久地は、水橋の癖を今「創った」。これは水橋にとっては酷な仕打ち。高屋敷氏は、善悪や良し悪しのラインは明確では無い事を強調する。

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リカオンズは水橋を引きずり降ろし、点差は遂に1点に。これが気に食わない彩川は吉田に電話し、もう1回守備について渡久地の足を引っ張るよう指示するのだった。板挟みの苦労は色々な作品に見られ、カイジ(脚本)でも色濃く出ている。

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  • まとめ

まず、今井と藤田のキャラを確立させる技術に目が行く。二人を段階的に印象づけ、両者がファインプレーをする布石を打ち、その後も愛嬌ある言動/行動で原作より目立たせている。キャラの掘り下げは、高屋敷氏の十八番と言える。

驚くべきは、この今井と藤田のキャラ立てを、たった1話でやってのけていること。グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも、夏之介の友人や後輩の掘り下げを、あっという間に行っており、見事な手腕を見せている。

1話内であろうともキャラを印象づける技術は、比較的初期の脚本作である、ガンバの冒険でも見られる。これは高屋敷氏の才能なのではないだろうか。他作品でも、レギュラー初登場回の演出や脚本を任されており、その理由が何となく見えてくる。

高屋敷氏の初期の演出参加作である、ど根性ガエルでも、カンペイ(ひろしのクラスメイト)の心優しさが強めに出ていた。
空手バカ一代(演出/コンテ)でも、瀬川(アニメオリジナルキャラ)の優しさや友情が記憶に残る。この事からも、キャラを掘り下げる才能/技術が相当あるのがわかる。

あと、渡久地の恐ろしさ・残酷さも出ている。特に水橋の癖を「創った」のは、相当残酷で、もうどっちが悪役かわからないレベル。蒼天航路(脚本・シリーズ構成)でも、曹操の有能さと残虐さを描いている。善悪や良し悪しのラインを明確にしないのもまた、高屋敷氏のポリシーと考えられる。

また、彩川は、憎たらしい所も愛らしい所もあるキャラとなっているし、三原監督と冴島コーチも可愛さがある。中高年キャラを可愛くする工夫もまた、ありとあらゆる作品に見られ、強烈な個性。

勿論、脇役のキャラを確立させながら、主人公の掘り下げも行われている。前述の、渡久地の恐ろしさ/残酷さもだし、煽り力の高さや、チームを引っ張るカリスマ性などもしっかり押さえているほか、愛嬌(笑顔を見せるなど)も強調されている。

主人公を掘り下げる技術は、F-エフ-・カイジグラゼニ(いずれもシリーズ構成・脚本)でも存分に発揮されている。脇役やゲストのキャラ立ても上手いのだから、(ほぼ)毎話出ている主人公ともなれば、凄い事になるのは必然と言える。

主人公であれ脇役であれ、キャラ立てはシリーズの要の一つであり、それが欠けている場合、作品そのもののダメージとなり得る。あらためて、それを考えさせられた。