カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンナウツ5話脚本:我の強さが生む共通性

アニメ・ONE OUTS(ワンナウツ)は、甲斐谷忍氏原作の漫画をアニメ化した作品。謎めいたピッチャー・渡久地東亜の活躍を描く。監督は佐藤雄三氏(カイジ監督)で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏。
今回の演出・コンテは佐々木奈々子氏で、脚本が高屋敷氏。

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  • 今回の話:

渡久地(謎めいた投手)の活躍・暗躍や、色々な選手の奮起により、リカオンズ(渡久地が属する球団)はイーグルス(楽天がモデル?)に大逆転勝利する。そして、最強のマリナーズ(ロッテがモデル?)との三連戦が始まる。

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渡久地(謎めいた投手)の足を引っ張るよう、彩川(渡久地が属するチーム・リカオンズのオーナー)が命じたはずの吉田(リカオンズ遊撃手)のファインプレーもあり、遂にリカオンズは逆転。
それを見た及川(広報部長)は、こっそり喜ぶ。
カイジ2期(脚本)の石田広光など、影で主人公を観察するキャラは、しばしば設定される。

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ベンチ裏にて渡久地は吉田に声をかけ、吉田と彩川の関係に気付いていると告げる。
吉田は素直にそれを認め、先程のファインプレーは、渡久地の言葉が堪えたからだと語る。
背中を見せて話すのは、グラゼニ(脚本)にもあり(どちらも原作改変)、気になる所(他の作品にも見られる)。

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かつて将来を嘱望される投手だったが早々に挫折し、そんな折に八百長を持ちかけられ、それが彩川にバレてからは彼の犬になったと吉田は語る。
回想場面でグラスの「間」がある。こういう「間」は多い。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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球数が限界を超え疲労した渡久地は、わざと危険球を投げて退場。他の投手がいない状況なのだが、投手ならいる…と渡久地は三原監督と冴島コーチに告げ、彼等は唖然。
高屋敷氏は、中高年キャラの愛嬌を表すのに長ける。グラゼニ・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。 

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それを受け、ショートについていた吉田がマウンドに上がる。
9回裏一死満塁で、スリーボールノーストライクと苦しむ吉田に対し、野手達は心の中で応援する。「頑張るんだ」という今井(三塁手)のモノローグがアニメオリジナルで追加されている。グラゼニ(脚本)でも、「頑張れ」という後輩のモノローグが追加されている。

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勝手にマウンドを降りたペナルティとして、吉田が失点する毎に2億円貰う約束を渡久地と交わした彩川は、一球一球に一喜一憂。特大ファールを見て悔しがる彼の姿はアニメオリジナル。ここも、中高年キャラの愛嬌。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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いつの間にか客席に移動した渡久地から、自分の為にだけ投げろと言われた吉田は奮起する。グラゼニ(脚本)でも、野球は自分の為にやるものだ…と夏之介がチームメイトの樹に熱く語る。どちらも原作通りだが、「自分とは何か」がテーマの一つである高屋敷氏とマッチしている。

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吹っ切れた吉田の球は、打者のバットをへし折る。本塁フォースアウト、一塁アウトによって試合は終了し、リカオンズは勝利。
その後吉田は退団し、渡米してやり直す事を決意。
グラゼニ(脚本)でも、以前説教したチームメイト・樹の同点HRで夏之介が救われる話があり、原作通りだが共通するものがある。

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後に彩川は、契約に追加条件をつけたいと渡久地に持ちかける。
ベンチの指示に従う事、重要試合ではレートを変更可能、違約金5億円…等だが、渡久地は快諾。
「心配する及川をよそに」というアニメオリジナルのナレーションがあり、見守りキャラの強調がある。カイジ2期(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、グラゼニ(脚本)にも同様の立場のキャラがいる。

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次の対戦相手は、リーグ最強のマリナーズ(ロッテがモデル?)。
マリナーズ選手についての説明がナレーションでまとめられている(アニメオリジナル)。高屋敷氏は、ナレーションを上手く活用する。監督作の忍者マン一平でも、神出鬼没で実況やナレーションを行うキャラ・学校仮面が活躍する。

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試合前練習にて、先発の渡久地は寝転がる。原作通りだが、ど根性ガエル(演出)の野球回で、試合中に選手達がグラウンドに寝転がる場面と重なる。

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マリナーズの強打者・ブルックリンはリカオンズの皆を煽る。原作では児島(リカオンズの強打者)を煽る。高屋敷氏は、煽り文句を考えるのが好きかもしれない。

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出口(リカオンズ捕手)はマリナーズのデータを渡久地に渡すが、彼はそれを破り捨てる。原作通り/アニメオリジナルともに、紙を破る場面は多く、興味深いところ。カイジ2期(シリーズ構成)、エースをねらえ!(演出)、じゃりン子チエ・チエちゃん奮戦記・F-エフ-(脚本)と比較。

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渡久地はマリナーズをつぶさに観察しており、今までのマリナーズではなく、今現在のマリナーズを見る事が大事だと言い、児島はそれに賛同。児島の台詞はアニメオリジナル。彼はどことなく父性があり、他の皆は子供っぽい。アニメならではの肉付けが感じられる。

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渡久地は1番・2番を敬遠し、クリンナップとの勝負を選択。この奇策に彩川は驚愕するのだった。彩川のリアクションはアニメの追加。
グラゼニ(脚本)でも、夏之介の意外な行動・言動に驚く球団側が強調されており、通じるものがある。

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  • まとめ

話の圧縮技術が光る。この技術は、1980年版鉄腕アトムやF-エフ-、おにいさまへ…などの脚本でも大いに発揮されており、何十年もの経験が感じられる。毎度毎度、22分前後に収まっていることが信じられない構成。

あと、渡久地を見守る及川の存在がクローズアップされている。カイジ2期(シリーズ構成・脚本)における石田広光と同じく、主人公の一挙手一投足への反応と物語の進行が連動しているシリーズ構成は見事で、これはグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも見られる。

吉田についてだが、前回4話からの蓄積もあり、キャラ立てがしっかりしている。
しかも、それが短い尺の中で行われているのが凄い。これは、おにいさまへ…最終回で4人のエピソードを捌ききった手腕を考えれば不思議ではない。

また、引き続き中高年キャラの愛嬌が見られる。今回は特に、彩川に可愛げがある。一方で彼の腹黒さも描かれており、この二面性はカイジ(シリーズ構成・脚本)のラスボスである兵藤会長にも適用されている。
人間の色々な側面を描きたいという高屋敷氏のポリシーが出ている。

渡久地の言葉で吉田が奮起するくだりは、原作に沿いつつ「自分とは何か」という、高屋敷氏がよく提示するテーマも乗っている。原作つき作品でも、アニメオリジナル作品でも、ここは確かに強いメッセージ性が見られ、同氏の担当作を追う上で面白いところ。

吉田が渡米を表明するところも、「自分で決めた道を行け」という長年の高屋敷氏のテーマを、原作に沿いつつ上乗せしている感じがする。奇しくも、あんみつ姫(脚本)には渡米する青年を描いたエピソード(27話)*1があり、そちらにもこのテーマが出ている。

原作のどこをピックアップするかで、アニメではスタッフの個性が出てくる。高屋敷氏の場合、時代もジャンルも全然違うのに、あらゆる作品に自分のテーマを乗せる「我の強さ」がある。

原作に忠実にしろ、そうでないにしろ、高屋敷氏の「我の強さ」は、多くの作品に「共通性」を生む。これは、ワンナウツグラゼニカイジ(いずれもシリーズ構成・脚本)などを「同じカテゴリ」にしてしまう力があり、普通に見ている視聴者でも感づくようにできている。

そういった「我を通す力」は、打ち切り作品のワンダービートS*2最終3本の脚本(シリーズ構成不在のなか突如登板)で大いに発揮されているというか、あっという間に自分色に染めている。賛否両論あると思うが、この「力」は、同氏担当作を追う上で興味が尽きないと、改めて思った。