カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

飛べ!イサミ6話脚本:ハイブリッドな魅力

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

───

本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

───

  • 今回の話:

サブタイトル:「RX95の秘密」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ/演出:福本潔氏。

エネルギー研究所から盗んだ人工危険物質RX95をロボットのおもちゃに隠し、犯罪組織が取引を図るが、それを偶然ケイ(イサミの同級生で新撰組の子孫・トシの弟)が手にしてしまう。

───

冒頭、悪の組織・黒天狗党は、エネルギー研究所が開発した新人口物質RX95を入手するべく会議を行う。
蝋燭の炎が映るが、火による「間」は多い。陽だまりの樹・F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121230139j:image

研究所のRX95を現金と取引すべく、黒コートの男は公衆電話で取引相手と話すが、途中、警官が通りかかり慎重になる。だが、警官はくしゃみをして通り過ぎる。味のあるモブ警官は、怪物王女(脚本)や家なき子(演出)など目立つ。

f:id:makimogpfb:20221121230250j:image

日曜、イサミ、トシ・ソウシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)、ケイ(トシの弟)、はるか(イサミ達のクラスの担任)は動物公園に行く。
ソウシは、はるかに恋人がいないという情報を上手く引き出す。
口が上手いキャラは、陽だまりの樹(脚本)や家なき子(演出)など多数。

f:id:makimogpfb:20221121230311j:image

動物公園のある駅前では、ガンバロボ(劇中の人気ロボット)のおもちゃに隠されたRX95をゴミ箱に入れ取引するべく、犯罪者達が準備する。
交渉劇が好きなのか、高屋敷氏は、交渉が話のキーとなるワンナウツグラゼニのシリーズ構成・脚本を手掛けている。

f:id:makimogpfb:20221121230335j:image

RX95と現金を、ゴミ箱を使い犯罪者達が交換しようとする直前、数馬(イサミの叔父で刑事)のパトカーが止まり、犯罪者達は動揺する。
警察官キャラの関わりは、ルパン三世2nd・じゃりン子チエ(脚本)でも上手く使われる。

f:id:makimogpfb:20221121230359j:image

偶然を装い、数馬は、はるか目当てに、イサミ達と動物公園に行く流れに。
数馬が、はるかにベタ惚れなのは、ど根性ガエル(演出)の、梅さん(寿司職人)が、よし子先生(英語教師)にベタ惚れなのと重なる。ちなみに高屋敷氏は、梅さんが、よし子先生に出会う回の演出担当。

f:id:makimogpfb:20221121230430j:image

実はソウシと数馬は裏取引し、ソウシが、数馬と、はるかのデートをお膳立てした形。ついでにソウシは、はるかがフリーなことも数馬に教える。
有償・無償様々だが、家なき子(演出)、あしたのジョー2(脚本)ほか、恋のアシストは色々な作品で印象的。

f:id:makimogpfb:20221121230452j:image

ケイは、食べていたポテトチップがなくなり、袋をゴミ箱に捨てる際、RX95が入ったガンバロボを見つけ、拾ってしまう。
高屋敷氏の脚本は5W1Hがしっかりしており、キャリア初期のガンバの冒険の脚本でも、その傾向が見られる。

f:id:makimogpfb:20221121230538j:image

イサミ達が動物公園に向かった後、RX95をめぐる面々は一同に会しパニックになるが、とにかくイサミ達を追うことに。
反社や悪役でも愛嬌があるのは、チエちゃん奮戦記・トンデケマン(脚本)ほか色々な作品で強調されている。

f:id:makimogpfb:20221121230601j:image

ソウシは、恋の手伝いの返礼として、アイスを子供達に奢るよう数馬に要求し、泣く泣く数馬は現金をソウシに渡す。
金にシビアなのは、家なき子(演出)や、オヨネコぶ~にゃん(脚本)など、かなり見られる要素。

f:id:makimogpfb:20221121230626j:image

そこに、上司から、エネルギー研究所からRX95が盗まれたという電話があり、数馬は現場に行くことに。
泣くあたり、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や、ど根性ガエル(演出)と重なってくる。

f:id:makimogpfb:20221121230649j:image

RX95は、少しの衝撃で高温の竜巻を発生させてしまう危険があり、それが入ったガンバロボを振り回すケイを見て、犯罪者達は肝を冷やす。
ここも悪役の愛嬌。MASTERキートン(脚本)、宝島(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121230712j:image

さらにケイは、ガンバロボを放り投げ、犯罪者達はビビり散らすが、幸い、トシがガンバロボをキャッチする。
忍者戦士飛影(脚本)、ガイキング(演出)など、リアクションがコミカルな悪役も結構見られる。

f:id:makimogpfb:20221121230733j:image

トシは、ガンバロボの腕の中に隠されたRX95を見つけ、「Rかける引く95」と読み、イサミにツッコまれる。
おバカネタは、オヨネコぶ~にゃん(脚本)、忍者マン一平(監督/脚本/コンテ)ほか、しばしばある。

f:id:makimogpfb:20221121230759j:image

その後ケイは、犯罪者達から、やりとりの末に10万円でガンバロボを売ってくれと言われるが、金を持ってるように見えないと言って、ケイはそれを断る。
しっかりした子供の活躍は、じゃりン子チエめぞん一刻(脚本)など色々ある。

f:id:makimogpfb:20221121230822j:image

犯罪者達は、こうなったらとケイを捕まえようとするが、ケイは逃げ、それを見たイサミ達も追う。
犯罪者達とのチェイスは、家なき子(演出)も印象的。

f:id:makimogpfb:20221121230840j:image

ケイは関係者専用の建物内に逃げ込むが、その建物はワニの展示場に繋がっており、追ってきた犯罪者達は散々な目に遭う(ケイはドアにつかまり無事)。
ワニは、あんみつ姫(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)でも出てくる。

f:id:makimogpfb:20221121230908j:image

イサミ達はケイと合流し、ケイからガンバロボが狙われていることを聞く。
それをよそに、はるかはナマケモノに見入る。
動物による「間」は、家なき子(演出)やRIDEBACK(脚本)ほか様々な作品に見られる。

f:id:makimogpfb:20221121230936j:image

あと、滝が映るが、滝は高屋敷氏の演出作・脚本作ともに多々見られ興味深い。そもそも、高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統監督も滝を好む。
宝島(演出)、おにいさまへ…(脚本)、エースをねらえ!(演出)と比較。 

f:id:makimogpfb:20221121231007j:image

ともあれ、イサミ達は食事をとることに。数馬から貰った金を有効利用すべく、トシはハンバーガーを沢山食べる。
飯テロは頻出。RIDEBACK・F-エフ-(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121231033j:image

店内のテレビの野球中継に、トシは喜ぶ。
高屋敷氏は野球経験者で、無類の野球好き。グラゼニワンナウツといった野球アニメのシリーズ構成・脚本を務め、他でも野球ネタが数多い。

f:id:makimogpfb:20221121231053j:image

しかし、野球中継が中断されてニュースが始まる。
トシとイサミは少し言い争いになるが、ソウシが止める。
素直になれない関係は、F-エフ-(脚本)ほか時折クローズアップされる。

f:id:makimogpfb:20221121231112j:image

イサミ達は、ニュースでRX95の件を知り慌てるが、いつの間にかケイがいない。
単独行動したケイは、犯罪者達に見つかってしまう。
サングラスの表現は、F-エフ-・マイメロディ赤ずきん(脚本)ほかにもある。また、高屋敷氏が演出参加したエースをねらえ!にもある。

f:id:makimogpfb:20221121231141j:image

ケイは咄嗟に、警察が来たと嘘をつき逃げる。
咄嗟の知恵は、アンパンマン(脚本)のばいきんまんや、はじめの一歩3期(脚本)の沢村(一歩の対戦相手)ほか、上手いものが多い。

f:id:makimogpfb:20221121231200j:image

イサミは数馬に、RX95の件とケイの危機を電話する。数馬は驚き、何よりも、はるかの安否を心配する。
あしたのジョー2・おにいさまへ…RIDEBACKグラゼニ(脚本)ほか、高屋敷氏は電話を割と重視する。

f:id:makimogpfb:20221121231226j:image

動物公園に警官隊と共に舞い戻った数馬は、園内アナウンスで、はるかと来園者全員に避難を呼びかける。
アナウンスは、ど根性ガエル(演出)や、らんま1/2(脚本)などでも効果的に使われる。

f:id:makimogpfb:20221121231251j:image

マイクを取られ困惑する動物公園スタッフに、数馬はRX95の危険性を訴えるが、それが園内にも流れたためパニックに。ソウシは呆れる。
顔に手をやって呆れるのは、ワンダービートSルパン三世3期(脚本)ほか割とある。

f:id:makimogpfb:20221121231312j:image

ケイは木に登るが、追ってきた犯罪者の重みで枝は折れる寸前。下にはライオンがいるというピンチに陥る。
二重三重のピンチは、家なき子(演出)でもうまく演出されている。

f:id:makimogpfb:20221121231333j:image

とうとう枝が折れるが、犯罪者がケイを足でつかむ。残りの犯罪者と、駆けつけたイサミ達は、ケイを足でつかんでいる犯罪者を応援する。
落下のピンチは、新ど根性ガエル(脚本)などにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221121231407j:image

落ちそうな犯罪者とケイを救うべく、皆は一致団結する。
質が悪かったり、かなり悪どいはずのキャラの憎めない面は、宝島(演出)や陽だまりの樹(脚本)ほか、強く描写される。

f:id:makimogpfb:20221121231430j:image

なんとかケイと犯罪者の救出に成功した皆は、握手して喜び合う。
握手ほか、手による感情表現は頻出。オヨネコぶ~にゃん・ルパン三世2nd(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121231454j:image

それはそれとして、RX95を渡せと、犯罪者達はイサミ達に銃を向ける。
ソウシは一旦、ガンバロボを叩きつけると脅すが、命が惜しいからと、ガンバロボを犯罪者達に投げる。
大人を翻弄する子供は、じゃりン子チエ・新ど根性ガエル(脚本)ほか多い。

f:id:makimogpfb:20221121231518j:image

お前達はロクな大人にならないと捨て台詞を残し、ガンバロボをキャッチした犯罪者達は去る。だが、ソウシは既にRX95をガンバロボから抜き取っていた。
出し抜きトリックは、アンパンマンワンナウツ(脚本)ほか描写が巧み。

f:id:makimogpfb:20221121231538j:image

一方数馬は、長々とナマケモノに見入ったままのはるかに、避難を勧告し、RX95を探す。
マイペースキャラに翻弄されるのは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほかにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221121231601j:image

ようやくガンバロボにRX95が入っていないのに気付いた犯罪者達は怒り狂って、イサミ達のもとに戻ってくる。
怒りの発砲は、ルパン三世2nd・元祖天才バカボン(演出/コンテ)などにもある。

f:id:makimogpfb:20221121231620j:image

それが想定内だったイサミ達は、トラップを仕掛けていたが、トラップの音がした位置を正確に撃つ犯罪者リーダーを評価する。
意外に射撃が上手いおじさんは、ルパン三世2nd(脚本)や宝島(演出)などにも出る。

f:id:makimogpfb:20221121231643j:image

イサミ達は、自分達しんせん組の決め台詞を言いつつ姿を見せるが、決め台詞は所々間違う。
トリオのコミカルなやりとりは、じゃりン子チエルパン三世2nd(脚本)ほか上手い。

f:id:makimogpfb:20221121231704j:image

対峙する犯罪者リーダーと、(新撰組が遺した)光る剣を発動させたイサミだったが、犯罪者リーダーの銃がジャムを起こし、その間にイサミが彼らを剣の力で痺れさせ倒す。
不可抗力で悪役が敗北するのは、アンパンマン(脚本)などにもある。

f:id:makimogpfb:20221121231727j:image

駆けつけた数馬ら警察に、犯罪者達とRX95は確保され、名を残した、(イサミら)しんせん組のお手柄が報じられる。
その後数馬はイサミ達と、はるかにラーメンを奢るが、はるかだけ豪華。
ここも飯テロ。コボちゃんグラゼニ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121231749j:image

はるかだけ優遇されることをイサミ達に抗議された数馬は、好きな物を頼んでいいと開き直るが、結局餃子一皿追加にとどまり皆を脱力させる。
独身男性のケチさネタは、新ど根性ガエル(脚本)などにもある。

f:id:makimogpfb:20221121231808j:image

天狗党は、RX95盗難の裏に自分達がいることが警察に知られていないことを確認しつつ、しんせん組の正体を引き続き探るのだった。
ここも火の描写。おにいさまへ…コボちゃん(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221121231829j:image

  • まとめ

 相変わらず、一話内に入っている情報量が多い。特にRX95の争奪戦にイサミ達が巻き込まれる過程や、ソウシが数馬に、はるかとのデートをセッティングしてあげる工程などが実に細かく丁寧。

 また先述の通り、ど根性ガエルの、梅さん(寿司職人)が、よし子先生(英語教師)に一目惚れする回の演出が高屋敷氏なわけで、そのネタが本作(飛べ!イサミ)に活かされているのが面白い。

 恋愛模様もさることながら、犯罪者達とイサミ達のチェイスも色々と二転三転し面白い。ケイ救出に敵味方一致団結するのも、善悪の境界を明確にしない高屋敷氏のポリシーが色濃く出ている。

 高屋敷氏が演出陣である宝島では、宝をめぐって色々な勢力の複雑な関係と戦いが描かれる。その経験も、同氏の中には相当にあるのではないだろうか。

 そもそも高屋敷氏のキャリアの始まりである、あしたのジョー1(演出や脚本の手伝いや、制作進行)はボクシングもので、対戦相手やライバルの心理描写は複雑。リング上では善悪より、ボクシングの強さだけが全てだ。

 それもあってか、高屋敷氏は主人公以外のキャラ、敵役からモブに至るまで、思い入れが強いというか、その内面を際立たせる。同氏はキャラの掘り下げが非常に上手いが、それとも関係してくる。

 あと、再三書いているが、高屋敷氏は5W1Hがしっかりした話作りをする。
今回のケイのポテトチップのくだりあたりもだが、何がどうなってどうなるかの筋道が巧み。

 複数プロットを捌いてそれらを合流させ、多段オチまで用意する余裕すらある構成もやはり流石。
それを彩るコミカルなやりとりも秀逸で、筆のノリの良さが感じられる。

 これらの高屋敷氏の技術は、度々書いているが、じゃりン子チエの脚本で磨かれたのが大きい。
じゃりン子チエの同氏脚本担当本数は20本以上で、同氏キャリアの中でも屈指の多さ。

 高屋敷氏の最多担当本数はシリーズ構成・全話脚本のF-エフ-(31本)だが、その前が、じゃりン子チエの脚本担当本数の多さになる。

 じゃりン子チエ高畑勲監督こそ、理論と思考と技術と計算の権化で、その下で脚本を書いた高屋敷氏が何を研ぎ澄ましたか想像に難くなく、それほどまでに、じゃりン子チエは高度な技術の塊だ。

 極論を言えば、じゃりン子チエがなければ、高屋敷氏がアカギ・カイジワンナウツといった、複雑なプロットと知略だらけのアニメのシリーズ構成・脚本を務めることもなかった。

 もともと、じゃりン子チエ以前も高屋敷氏は綿密に練られシステマチックな脚本を書く傾向があったが、この同氏の持ち味が鍛えられ磨かれたのが、じゃりン子チエと言える。

 様々なキャラにドラマがある、あしたのジョーのスピリッツと、じゃりン子チエの高畑監督の非凡な論理的思考は、高屋敷氏の中で見事に融合している。
同氏のハイブリッドさも、追っていくと興味が尽きない。

飛べ!イサミ5話脚本:鍛え上げられた術

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

───

本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

───

  • 今回の話:

サブタイトル:「怪人クモ男出現!」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:池端隆史氏、演出:福本潔氏。

宝石「ナイルの瞳」盗難事件が発生。
一方イサミ達の学校では、他校で火の玉を見たという噂が飛び交い、イサミ達は興味を持つ。

───

美術館に展示されていたエジプトの宝石「ナイルの瞳」が盗まれてしまう。
太陽の使者鉄人28号(脚本)では「マリーの瞳」という王冠が、謎のロボットに盗まれる話がある。

f:id:makimogpfb:20221113232526j:image

ナイルの瞳盗難事件から一週間が経過するも、犯人が捕まらないというニュースを、イサミは見る。
おいしそうな食事場面は頻出。新ど根性ガエル(脚本)、忍者マン一平(監督)と比較。

f:id:makimogpfb:20221113232546j:image

一方、数馬(イサミの叔父で刑事)は、ナイルの瞳窃盗犯が捕まらず悔しがる。
少し抜けているが負けず嫌いの警察官といえば、ルパン三世2nd(脚本)の銭形やキャッツアイ(脚本)の内海あたりと重なる。

f:id:makimogpfb:20221113232606j:image

学校にてイサミは、他校で火の玉が出たという話を聞く。その話を聞き、トシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)は怖がる。
学校の怪談といえば、おにいさまへ…(脚本)の心中伝説(アニメオリジナル)も印象深い。

f:id:makimogpfb:20221113232631j:image

なんとか話の矛盾をつき、トシは強がる。また、他のクラスメイトは、学校の名前や日にちが違う、同様の話を聞いたと言う。
ど根性ガエル(演出)、ストロベリーパニック(脚本)ほか、味のあるモブは多い。

f:id:makimogpfb:20221113232655j:image

そこに、はるか(イサミ達のクラスの担任)が来て、懐中電灯で顔を照らして脅かす。
懐中電灯ネタは、らんま1/2カイジ2期(脚本)、忍者マン一平(監督)など、しばしば見られる。

f:id:makimogpfb:20221113232717j:image

その後、イサミ宅の地下室で、イサミ達は火の玉情報の整理をする。ソウシ(イサミの同級生で、新撰組の子孫)は、単にイサミが幽霊を見たいだけではないかとトシに話す。
複数キャラのテンポ良い会話は、じゃりン子チエおにいさまへ…(脚本)なども上手い。

f:id:makimogpfb:20221113232804j:image

イサミは、トシとソウシに、幽霊が怖いのかと煽る。ソウシは平静だが、トシは強がる。
トリオでのやりとりの上手さは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)やキャッツアイ(脚本)などでも光る。

f:id:makimogpfb:20221113232829j:image

夜、イサミ・トシ・ソウシ・ケイ(トシの弟)は学校に入る。皆はトシに学校の定番怪談を話して脅かすが、トシは強がって全否定する。
お化け関連では、コボちゃん(脚本)に肝試し回があり、宝島(演出)に幽霊海賊の話がある。

f:id:makimogpfb:20221113232905j:image

すると火の玉が出現し、イサミとケイは喜び、ソウシとトシは驚く。
複数キャラの個性づけは、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも強調されており、わかりやすくなっている。

f:id:makimogpfb:20221113232927j:image

火の玉は、クモの覆面をした人間(クモ男)であることが判明。
なら学校荒らし退治だと、まずソウシが高低差を使い攻撃するが、クモ男は伸縮する武器でソウシの竹刀をはじく。咄嗟に頭を使う戦い方は、アンパンマン・新ど根性ガエル(脚本)などにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221113233006j:image

二番手のトシは、サッカーボールでクモ男を攻撃するが、クモ男はボールを蹴り返す。
高屋敷氏が脚本参加したトンデケマンも、はやと(主人公)の攻撃方法がサッカーボール。

f:id:makimogpfb:20221113233032j:image

三番手として、イサミはクモ男にパンチするが、クモ男は服に板を仕込んでおり、イサミは手が腫れる。
ど根性ガエル(演出)や新ど根性ガエル(脚本)でも、服の下に硬いものを仕込む戦法が出てくる。

f:id:makimogpfb:20221113233053j:image

最後にケイが立ち向かうが、クモ男はケイとのリーチ差を利用しノーダメージ。
同じようなアクションが、家なき子(演出)にもある。

f:id:makimogpfb:20221113233114j:image

こうなったらと、トシとソウシは、先祖が遺した、光る剣を荷物から出そうとするが、忘れたことが判明。
クモ男は、律儀に待ってくれる。割とフェアな所がある敵役は、カイジ2期・太陽の使者鉄人28号(脚本)などにも登場する。

f:id:makimogpfb:20221113233139j:image

結局、閃光弾を使ってクモ男は逃走。
後日イサミ達は、それを数馬に話す。
数馬は、ナイルの瞳盗難事件の方が気がかりだと話すが、イサミに「干されたんでしょ」と図星を突かれる。
ここもルパン三世2nd(演出/コンテ)の銭形とかぶってくる。

f:id:makimogpfb:20221113233236j:image

そこに、はるかが通りかかる。数馬は、はるかに一目惚れしてしまう。
教師にベタ惚れといえば、高屋敷氏が演出参加した、ど根性ガエルの梅さん(寿司職人)も強烈。

f:id:makimogpfb:20221113233259j:image

そこに倉庫荒らしの報が入る。はるかのお陰で、その現場に行けたイサミ達は、学校と同じスピーカーがあること、その納品先に自分達の学校があることを突き止める。
データをうまく利用するのは、RIDEBACKワンナウツ(脚本)なども印象深い。

f:id:makimogpfb:20221113233336j:image

さらに、ナイルの瞳が盗まれた美術館が、倉庫の近くにあることから、イサミ達は、事件が繋がっていることに気付く。
頭が切れるキャラといえば、ルパン三世2nd(演出/コンテ)のルパンやMASTERキートン(脚本)のキートンなどがいる。

f:id:makimogpfb:20221113233403j:image

はるかを使い、数馬を上手くおだてて二人を美術館に向かわせた後、イサミ達は、今夜は決戦だと士気を高める。
チームの団結は、ルパン三世2nd・ガンバの冒険(脚本)等でも前面に出される。

f:id:makimogpfb:20221113233504j:image

夜、学校に入ったイサミ達は、スピーカーを調べて回り、自分達のクラスのスピーカーからナイルの瞳を発見する(宝石を隠したスピーカーを、納品リストをもとにクモ男が探していたのが、火の玉の真相)。
一見関係ない事件を繋げるのは、ルパン三世3期(脚本)にもある。

f:id:makimogpfb:20221113233936j:image

そこに、さりげなく現れたクモ男が、トシからナイルの瞳を奪う。クモ男はトシに、簡単に対象物を渡しちゃダメだよとアドバイスする。
色々な甘さにつけこむ敵役は、あんみつ姫カイジ(脚本)などもインパクトがある。

f:id:makimogpfb:20221113234004j:image

再度クモ男は閃光弾を使い、車で逃走。自転車でそれを追うイサミ達は、地元の地理に詳しいことを利用して先回りし、歩道橋からゴミを降らせ、車を事故らせる。
ギミックを使う戦法は、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)ほか多い。

f:id:makimogpfb:20221113234032j:image

クモ男は、工場跡に逃げ込む。彼はイサミ達を評価し、真の姿で挑むと宣言してムキムキの体を披露する。
ところで空手バカ一代(演出/コンテ)には、主人公の飛鳥が地下プロレスラーと戦う回がある。

f:id:makimogpfb:20221113234108j:image

今度こそと、光る剣を出したイサミ達だったが、クモ男の伸縮武器の攻撃を受け、剣を落としてしまう。
一方、安全運転を徹したケイが漸く工場跡に到着。
小さな子供の活躍は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)などでも目立つ。

f:id:makimogpfb:20221113234128j:image

身を潜めた状態で、ケイはクモ男を煽り、その隙に剣を拾ってイサミ達に渡す。
体の小ささを有効利用した戦法は、宝島・ど根性ガエル(演出)などにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221113234154j:image

イサミ達が全員で剣を握ると、光る剣が発動。
手から手へ思いを伝える描写は頻出で、物を介したものも見られる。
ワンダービートS・DAYS(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221113234213j:image

イサミとクモ男は互いに切り結ぶ…はずが、身長差のおかげでクモ男の攻撃は空振り。イサミはクモ男の足元を攻撃して痺れさせ、倒す。
剣のアクションについては、陽だまりの樹忍者戦士飛影(脚本)なども印象的。

f:id:makimogpfb:20221113234236j:image

翌朝イサミは、クモ男が逮捕され、ナイルの瞳が戻ったニュースを見てVサイン。一方、悪の組織・黒天狗党は、事件解決の名乗りを上げた、しんせん組(イサミ達)の正体を探ろうとする。
Vサインは、ルパン三世(演出/コンテ)や、あしたのジョー2(脚本)などでも目立つ。

f:id:makimogpfb:20221113234257j:image

  • まとめ

 一見たわいもない事件が、大きな事件と繋がるコンセプトは、ルパン三世3期9話(高屋敷氏脚本)の、ルパンが水虫に悩まされる話が、禁断のクローン技術の話へと繋がっていく回と共通する所がある。

 ルパン三世3期9話について、以前書いたブログ記事はこちら:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2016/11/28/132818

 これだけでなく、じゃりン子チエや、あんみつ姫の脚本などでも、高屋敷氏は、複数のプロットを走らせて、それらを最後に合流させるのを得意としている。今回もまた、それが十分に活かされている。

 また、相変わらずキャラの個性を際立たせることにも余念がない。
ポンポン進む複数キャラの会話劇も、高屋敷氏がキャラの個性をよく把握しているからこそだと思う。

 あと、先述の通り、過去作のオマージュやパロディが見られるのも面白い。宝物の盗難事件にしても、ルパン三世シリーズ(高屋敷氏演出/コンテ/脚本参加)、太陽の使者鉄人28号(同氏脚本)、キャッツアイ(同氏脚本)の要素が今回にあり、同氏の記憶力に感心する。

 このことからもやはり、高屋敷氏は持てる経験と技術を、目の前の最新作に全力でぶつけるタイプの作家だと考えられる。だからこそ、同氏の作品は年を経るごとにグレードアップしていく。

 そう思うと、カイジワンナウツ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)など、還暦を過ぎてからの担当作が素晴らしい出来なのも、(ある程度)納得が行く。
それにしても、年を経るごとに研ぎ澄まされていく高屋敷氏の技術は驚異的だ。

 本作(飛べ!イサミ)はオリジナル作品であるが、まるで漫画原作があるかのような味わいがある。
そこは、高屋敷氏が積んできた、原作つきアニメの膨大な経験も大いに貢献していると思う。

 他人の作品のキャラ性や話のテーマを探ってアニメに落とし込む作業は、相当にキャラメイキングや話の構成についての造詣が深くなるし、高屋敷氏がやってきた、その仕事量は膨大。そうなれば、同氏の持つポテンシャルは凄まじいものであるのは想像に難くない。

 F-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)や、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)のアニメオリジナル回も非常に秀逸。また、陽だまりの樹(同氏脚本陣)に至っては、アニメオリジナル要素と原作要素が溶け込みすぎて、原作を知らなければ、判別が困難なほどだ。

 そういったことを鑑みると、高屋敷氏が鍛えてきた「キャラメイキング・ストーリーテリング」力は化け物級であり、その蓄積と経験、才能はやはり尊く貴重なものである。