カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

【固定記事】作品別ブログ記事一覧の見方

[この記事は固定記事です]

2023/02/20現在、ツイッター本垢凍結で更新が頓挫しておりますが、流石に記事数が多くなって来て本人すら自分で書いた記事をグーグル検索するくらいですので、作品別に記事一覧を表示する方法を伝えます。

まず、スマホならブラウザをPC表示にして、PCならブラウザで、右サイドバー下部にあるカテゴリリストを見てください。

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そのカテゴリ一覧で、作品名の頭に#がついているリンク(例えば[#飛べイサミ]など)を押すと、その作品名についてのブログ一覧が表示されます。

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また、それぞれの記事の上部にある#作品名のリンクを押しても、その作品について書かれた記事一覧が表示されます。

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時々ツイッターで問い合わせがあったりしていたので、今回まとめました。

 

飛べ!イサミ18話脚本:一流の「設計」

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

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  • 今回の話:

サブタイトル:「夏祭りのミステリー」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ/演出:石崎すすむ氏。 

悪の組織・黒天狗党は引き続き、しんせん組(=イサミ達)の正体を探る。また、黒天狗党会長は例祭の準備を進める。

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悪の組織・黒天狗党は引き続き、しんせん組(=イサミ達)の正体を探ることにし、また、例祭の準備を進める。
情報がすんなり頭に入ってくる話運びは、カイジグラゼニ(脚本)でも巧み。

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一方イサミ達の地元の神社も、祭りの準備。カラス天狗(黒天狗党の下部組織)の平助・重助は、貧乏なため祭りで出店の副業をすることにし、見覚えがあると声をかけてきたイサミ達にビビる。金にシビアな要素は、オヨネコぶ〜にゃん・グラゼニ(脚本)ほか多い。

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また、黒天狗党幹部や、カラス天狗の烏丸ヒロ子は、イサミ達の親族としんせん組との関連を疑い、イサミの同級生で新撰組の子孫であるトシの父・泰之を襲うが、素性を隠した魁(失踪扱いのイサミの父)に妨害される。話を繋げる上手さは、じゃりン子チエ(脚本)でも目立つ。

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トシから、泰之が襲われたと聞いたイサミとソウシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)は、事件および、泰之を助けた謎の包帯男(=魁)の正体を掴むべく動く。
フットワーク・チームワークが良い描写は、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)など結構ある。

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夜、襲撃されてから警戒心が強くなった泰之は、尾行するイサミ達の気配にびびり逃げ出す。
イサミとソウシは、泰之とトシのそそっかしさが似ていると指摘。
あしたのジョー2(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、キャラの個性づけは高屋敷氏の十八番。

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ヒロ子と部下は、今度は栄助(ソウシの父)を襲うが、またも魁に妨害される。ヒロ子は、魁の正体に気づいており、それを指摘するが、魁ははぐらかす。
ちなみにルパン三世2nd(演出/コンテ)では、銭形に変装したルパンをあっさり見抜く女性軍人が出てくる。

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栄助が乗り捨てたバイクを発見したイサミ達は、色々と推察し神社の奥の森に入り、そこで古井戸を見つける。ソウシは石を井戸に投げ入れ、枯井戸だと確認する。
冷静で頭が回り、察しがいいキャラは、ガンバの冒険(脚本)でも強調されている。

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ヒロ子と黒天狗党幹部は、更に探りを入れるため、今度は観柳斉(イサミの祖父)を狙う。そしてイサミ達も、次は観柳斉が危ないと結論を出す。
三人依らば文殊の知恵、頭が回るチームワークは、キャッツアイ・ガンバの冒険(脚本)などでも光る。

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栄助もまた、イサミ宅を訪ね、観柳斉に注意喚起を促す。
観柳斉がオムレツを作っているが、飯テロは実に多い。コボちゃんアンパンマン(脚本)と比較。

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観柳斉は、自分は剣の達人だから心配ないと言う。それを耳にしたイサミは、家には料理に関するトロフィーや賞状があるが、剣についてのものは無いと心配する。
飯テロも多いし料理上手も多い。MASTERキートンでも、高屋敷氏は料理人の回の脚本を担当している。

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ヒロ子は、しんせん組=魁ではないかと黒天狗党に報告し、それならば的が一つに絞れると、黒天狗党会長=芹沢グループ会長・鴨之丞(観柳斉の幼馴染でもある)は秘書に話す。
色々な側面を持つ黒幕は、カイジ・アカギ(脚本)でも描写に深みがある。

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そして、イサミ達の町の大江戸神社の祭りが始まる。祭りの描写は、おにいさまへ…(脚本)でも丁寧でインパクトがある。

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イサミ達は、大江戸神社の神主に、裏手の森について尋ねるが、入ったらバチが当たるよとはぐらかされる。
そこへ、鴨之丞が声をかける。
色々とミステリアスな要素を重ねて行く上手さは、ガンバの冒険(脚本)にもある。

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ソウシは、ぬけがけして巫女を口説いていたが、イサミとトシに見つかり連行される。
ストロベリーパニック(脚本)では、静馬(主人公・渚砂の先輩)が初期は女たらし。
RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)では、レギュラーキャラの丈が美貌を武器にする。

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イサミ達を微笑ましく見守る鴨之丞だったが、神主に、例祭の準備を進めるよう命じる。
悪役の素顔に変貌する描写は、ワンナウツカイジ2期(脚本)など多い。もっともワンナウツの彩川(主人公・渡久地と裏で競う)は、渡久地より悪どさが下回るが。

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イサミ達は、一旦資料館で大江戸神社の歴史を調べ、元は天狗神社と呼ばれた、戦国時代からある神社だと知る。
本で調べる描写は、怪物くん・ルパン三世(脚本)ほか、しばしばある。

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夕方、祭りに行くべく、イサミは浴衣に着替える。浴衣姿のイサミを、ソウシとトシは素直に賞賛する。
あしたのジョー2(脚本)では、丈が浴衣で走るサチ(丈を取り巻く子供達の一人)に、レディーなんだからとたしなめる場面がある。

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神社で、はるか(イサミ達のクラスの担任。実は他の活動もある)の浴衣姿を見たソウシは早速口説く。
おにいさまへ…(脚本)でも、ヒロイン達が浴衣で祭りを楽しむ場面がある(口説かれはしないが)。

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愛に年の差なんて関係ないと説くソウシに、はるかは、年下もいいわねと同意しケイ(トシの弟)の手を取る。
女性が母性本能を発揮する場面は、めぞん一刻・F-エフ-(脚本)も印象的。

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一方、平助と重助は、たこやき屋の出店が好調。重助は、たこやき屋に完全転身してもいいと言うが、志を大きく持てと平助に却下される。
じゃりン子チエ/チエちゃん奮戦記(脚本)のカルメラ兄弟も、カルメラ屋やラーメン屋など、生業の振り幅が広い。

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そこへ、イサミ達がたこやきを買いに来る。トシに、提供が速すぎる、きちんと焼けてるのかと指摘された平助はキレそうになるが耐える。
ここも飯テロ。じゃりン子チエ怪物王女(脚本)と比較。

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はるか、観柳斉、ケイはイサミ達と別行動だったが、ケイが風船を神社の裏の森の木に引っかけてしまい、それを観柳斉が取ろうとする。
怪物王女(脚本)にも、主人公のヒロが子供が飛ばした風船を取ってあげるアニメオリジナル場面がある。

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そこへ、ヒロ子や部下が現れ、観柳斉を囲む。また、イサミ達も駆けつける。
観柳斉は、見事に雑魚敵を一掃する。
戦闘力の高い老人は、空手バカ一代(演出)や、じゃりン子チエ(脚本)など色々な作品で印象深い。

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逃げる敵を追おうとして、観柳斉は腰を痛める。そこへ魁が現れ、ヒロ子は「花丘博士(魁)」と口にする。それを聞いたイサミは、やはりと思うが、魁ははぐらかす。
ワンダービートS(脚本)でも、父と子の離れ離れのドラマが描かれる。

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魁とヒロ子は先行し、追おうとしたイサミの前に、ヒロ子の部下が立ちはだかるが、イサミは、先祖が遺した光る剣で彼らを倒す(剣には相手を痺れさせ、記憶を消す効果がある)。
キャラの行動が細かく分かれ、繋がるのはトンデケマン・あんみつ姫(脚本)などでも顕著。

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ヒロ子は魁を取り逃がし、別の所で倒れている部下にしんせん組の札が貼ってあったため、魁=しんせん組という彼女の推察は崩れる。報告を受けた黒天狗党会長(鴨之丞)は苛立つ。
手による感情表現は頻出。DAYS・ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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その後、川辺でイサミは皆と花火を鑑賞し、この花火を魁も見ていると確信する。花火の情緒は、あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)でも描写されている。

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魁もまた、船の上から花火を眺める。
船の描写は、高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏が好み、高屋敷氏も多用する。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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神社の森の古井戸の奥では、黒天狗党の例祭が行われ、黒天狗党会長は四天王や配下の者と共に世界征服の志を強めるのだった。
強力な敵幹部を立てる上手さは、カイジ忍者戦士飛影(脚本)でも発揮されている。

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  • まとめ

 相変わらず、大筋から細々としたプロットまで、緻密に組み合わさっていて、まるで漫画原作でもあるかのような話運びが凄い。これでアニメオリジナル作品なのが、つくづく驚かされる。

 何度か書いている通り、オリジナル作品であるならば、アニメにしやすいように話を簡略化する道はいくらでもある。
それなのに、本作のスタッフは決して「楽な道」を選ばない。これは凄いことだと思う。

 高屋敷氏は、多くの原作つきアニメに演出や脚本で携わってきたから、特に漫画の作劇に馴染みが深いと見え、だからこそ、制作工程を気にして、楽な話ばかり作れば作品が「浅く」なることを熟知しているのではないだろうか。

 原作キラーに見える出崎統氏は、原作にまずがっぷりよつで相対し、原作を解体した上で自分のテイストでまるまる再構築する創造性を武器にしている。
出崎統氏と長年一緒に仕事した高屋敷氏は、原作に忠実だったり、大胆に改変したりと柔軟性がある。

 そこから、じゃりン子チエに脚本参加した高屋敷氏は、出崎演出を持ち込みつつ、(じゃりン子チエの)高畑勲監督から、原作に忠実な上でスタッフ個性を乗せる離れ業を学び、身につけた感がある。

 これも何度か書いていることだが、原作を壊す出崎統氏と、原作に忠実だがスタッフの個性を潜伏させる高畑勲氏のハイブリッドさが高屋敷氏の武器だ。
それ故、強力な原作つきアニメのシリーズ構成・脚本を担当すれば、高屋敷氏は光り輝く。

 一方、高屋敷氏は原作つきアニメでのオリジナル話も多く担当しており、そのクオリティは非常に高く、「原作より原作らしい」、「原作から更にキャラを掘り下げている」といった内容の凄まじいものが目立つ。

 そういった経験があるからこそ、高屋敷氏は原作がないオリジナル作品でも、「まず、これに原作があるとすればどうなるか」を考えるのではないか。

 話を考える、世界とキャラを構築する、空間を作る。その繰り返しで作品の骨組みが出来ていくとすれば、設計士のようなきちんとした計算が必要だ。
高屋敷氏は、再三書くが、その「計算」が抜群に緻密で精密だ。

 それがあったればこそ、高屋敷氏はアカギやカイジワンナウツなどの、伏線だらけでギミック満載の複雑なストーリーをハンドリングし、シリーズ構成・脚本を組み上げることができる。

 しかも技巧だけでなく、高屋敷氏は「熱いスピリッツ」をシリーズ構成に忍ばせることが多い。計算や技巧については高畑勲氏、熱さについては出崎統氏から引き継ぎ、そこに温かい人情や若さ、コミカルさなどを乗せていく。

 本作のようなオリジナル作品は、創造性や企画力も大切だが、それをカタチにする計算式や経験、設計も重要になってくる。高屋敷氏はそこの経験も豊富だし、持てる経験を全て目の前の作品に注ぐスタイル。やはりその貢献は大きいし、軽視してはならないと思う。