カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

コボちゃん脚本34A話:人はいつ、どうして覚醒するのか

34話A脚本。

竹男(同居してる親戚で教師)の勤める学校にて、竹男が顧問をしている柔道部と、花田先生(竹男の想い人)が顧問をしている新体操部とで、合同肝試し大会をすることになる。この状況説明のくだり、あとラストでも、風鈴の意味深なアップ・間がある(特徴)。画像は今回と、めぞん一刻脚本。


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竹男の話を聞いたコボ一家は、脅かし役を手伝う事にする。耕二(コボ父)は仕事なので参加できなかったが、何かを思い付く(特徴:知略)。

一方竹男・花田先生の生徒達は、肝だめしなんてかったるいと思うも、ある作戦を思い付く。なんだかんだと言っても中学生なので、作戦を話し合う姿が可愛く幼い(特徴)。

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肝だめし当日は雷雨となり、雷が雰囲気を盛り上げてくれる。(特徴:自然もキャラ)。生徒達は、模範として竹男と花田先生が先に行くよう、けしかける。生徒達は更に、花田先生にカッコイイ所を見せるチャンスだと竹男をおだてる。

すっかり生徒達にのせられた竹男は花田先生と肝だめし開始。道を開けるモブ+出発する画が、ど根性ガエル演出やカイジ1期脚本に似てくる怪。画像は、今回とカイジ1期脚本。他作品にも結構ある。演出時代はわかるが、脚本で画が似てくる怪は、脚本の次のコンテ段階にて、コンテ師が脚本から想像する画が共通してくるからではないか?と推察している。

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一方、脅かし役として理科室で待機中のコボと岩夫(コボ祖父)は暑くて窓を開ける(伏線)。さらに、コボの所望により、二人はトイレに行く。

二人がトイレに行っている間、竹男達は、第一チェックポイントの理科室に着く。

竹男は、脅かし役がコボ一家だと知っているので油断する。だが、岩夫が開けた窓から風が吹き込み、人体白骨標本が揺れて竹男にのしかかり、竹男達は本気で怖がる。(特徴:キャラとしての自然がアシスト)
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更に、トイレから帰ったコボと岩夫(お化けに変装中)に鉢合わせした竹男達は卒倒。

その頃、先回りして竹男達を脅かそうと準備をしていた生徒達は、迫真のお化けの扮装をした早苗(コボ母)とミネ(コボ祖母)に遭遇して怖がり、逃げ惑う。なんだかんだ幼い(特徴)。

そこへ、予定にない筈のミイラ男が現れ、早苗とミネも驚いて逃げ惑う。かくして竹男達と生徒、コボ一家は一同に会し、ミイラ男に追い詰められる。

竹男は覚悟を決め、男として・教師として皆を守って見せる!と身構える。

だが、ミイラ男の正体は、飛び入り参加した耕二だった。だが汗だくなので、扮装を解いた顔も怖かったのだった(雷もアシスト)。 

画像は、キャラとして活躍する雷達。今回、めぞん一刻脚本、怪物くん脚本。特に、怪物くんは、天敵の雷を「あいつ」と呼ぶ。

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夜、全ての事情を知り、竹男は安心する。ミイラ男に啖呵を切った竹男を早苗達が誉めるが、誉められた直後に、竹男はお化けのマスクを被ったコボを見て卒倒する。結局怖がりは治らなかったオチ。

  • まとめ

シンプルな肝だめし回だが、キャラごとに平行進行するエピソードが最後に合流する、脚本の手腕が見える。

これは、じゃりん子チエ脚本あたりから顕著になった特徴で、他作品でも生きている(現在も含む)。
今回も、12分弱くらいなのに、冒頭のコボ一家の肝だめしの話題に始まり、

  • 耕二、
  • 生徒達、
  • 天候(雷雨や風)、
  • 竹男と花田先生、
  • コボと岩夫、
  • 生徒達、
  • 早苗とミネ、
  • ミイラ男(耕二)

の平行エピソード・行動を見事にさばいている。

また、もう一つの同氏特徴である豹変・覚醒も表現されている。
追い詰められた竹男が、皆を守るために勇気を持って立ち向かおうとするのは、普段とは違う、立派な姿と言える。


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これは、家なき子最終回演出での、少年から男への豹変や、カイジにおける、ダメカイジ→覚醒カイジへの豹変にも言える。

更に言うなら、今回の竹男は皆を守ろうとして覚醒した。カイジの場合も、皆の無念を晴らすため、または皆を助けるために覚醒する。

今回は、誰がどう行動するかの整理の上手さと、自然がキャラクターとして活躍する特徴と、何のために人は覚醒するのか、が見れた回だった。

また、今回の演出コンテは棚橋一徳氏で、高屋敷氏と同じく、元ど根性ガエル演出陣。
そのせいか、ど根性ガエルの肝だめし回と非常に雰囲気が似ている。
棚橋氏は近年、鬼籍に入られている。楽しい演出が多いだけに、非常に悔やまれる。棚橋氏は、数多くの名作に参加しているので、名前を見かけたら是非とも想いを馳せてほしい。