チエちゃん奮戦記1話脚本(横田和善監督と共同)
チエちゃん奮戦記は、じゃりん子チエの2期にあたる作品である。しかし、ブランクがあっても可能な限り前作のスタッフを集め、正当な続編となっている。
無印チエについては下記アーカイブ参照。過去にツイッターで書いたものが整理できなくなっているが、できるだけ整理していく予定。
#じゃりん子チエ カテゴリーの記事一覧 - カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡
今作、チエちゃん奮戦記監督の横田和善氏は、無印チエでも多数演出を担当しており、無印チエ監督である高畑勲氏とも、何年も一緒に仕事をしてきた仲である。
そしてキャラデの才田俊次氏は、無印チエで何回も作監をつとめた人。夫人はアニメーターの池田淳子氏で、夫婦ともども無印チエ作画に携わってきた。
ほかPや各工程にも無印チエスタッフが散見される。
また、脚本についても、無印チエ脚本を最も多く書いた高屋敷氏を1話から呼んでいる。ちなみに奮戦記の脚本陣は、高屋敷氏の元夫人の金春氏、出崎統作品演出で高屋敷氏とローテを組んだ竹内啓雄氏など、高屋敷氏と非常にゆかりのある人が多い。
話も、前作の最後とちゃんとつながっている。前作は、テツやチエといった西萩連中に外野が巻き込まれ、散々な目にあうが何かが変わっていく、という構成で、最後の最後に外野を貫いていたヨシエ(チエ母)も西萩連中に飛び込んで行き、強さを見せたのが最終回。
そして奮戦記の第1話は、ヨシエすら溶け込んだ、最強?状態の西萩コミュニティに、ゲストキャラが振り回される話。もはや西萩連中に巻き込まれる被害者として、ゲストを呼ぶしかないのだ。
今回は、チエが財布を落としてしまう話。
財布を落としたことに気付いたチエが「ない!ない!」と連呼するが、エースをねらえ!の高屋敷氏演出回でも、失くし物をしたひろみが「ない!ない!」を連呼。同氏カイジ2期脚本26話でも、金がなくなっていることに気付いたカイジが「ない!ない!俺の金!ない!」と連呼。すでに特徴が出ている(連呼)。
あと、チエ達が財布を探しまわることで、西萩がどういう町かを紹介することができている。1話にふさわしい作りともいえる。
ここらへんが、横田監督と共同で脚本を書いた所以だろうか。二人で思い出しながら進めているというか。
レギュラーも次々登場、テツが出ることで話が動くようになっている。これも前作と同じ。
ところで肝心の財布は、ヤクザ二人組が拾っていた。喜ぶ二人が幼く可愛いのが、いつもながらの高屋敷氏の特徴。
画像は今回、元祖天才バカボン演出、忍者戦士飛影脚本、最新脚本(2016)のDays、ど根性ガエル演出。ほか、ワンナウツやカイジ(シリーズ構成・脚本)、忍者マン一平(監督)等も喜び方が幼く可愛い。脚本でも画が似てくる怪現象、早くも発生。
大金を拾い喜んだのも束の間、彼らは財布の中にあった領収書を見て、財布がチエのものだと気付き、恐れおののく。何故ならチエの父テツは、ヤクザをどついて金を巻き上げるのが趣味だからだ。
ここでも特徴、領収書や財布がキャラクターとなり、自分達がチエを体現するものであると主張する。画像は、今回とカイジ脚本。
その頃テツは、チエが崖から金をばらまいている悪夢を見る。カイジのイメージ映像と似てくる。カイジのイメージ映像には、崖が多いせいもあるがwどちらも札吹雪の中落ちていくw
目覚めたテツは、カルメラ兄弟と百合根(お好み焼き屋)を招集し、チエの財布を一緒に探させる。見つけたら、チエに黙ってガメようという魂胆。
一方、財布を拾ったヤクザコンビは、どうやって財布を返そうか悩む。ここでも、無機物(財布)のアップと間が発生し、財布が一キャラクターである自己主張をしている(特徴)。
そして、「何も悪いことしてないのに」と嘆くヤクザ二人組が可愛い(特徴)。
テツがカルメラや百合根を使い財布を探し回る中、ヤクザ二人組は、テツの幼馴染みかつ警官のミツルに財布を届けることを思い付く。
テツの捜査網をかいくぐり、ミツルの勤務する交番へ辿り着いた二人だったが、交番にはチエとおバァはんが来ていた。こっそりチエ達の会話を聞くうち、苛立ちを覚える二人のやりとりが、またまた幼く可愛い(特徴)。
結局、二人は財布を交番へ投げ入れようとするが、それをテツが見つけ、ヤクザ二人組とテツは財布ごと交番に転がりこむ。そして、テツ、チエ、おバァはんが財布をめぐって大乱闘。結局おバァはんがテツを下駄でKO。こうして財布はチエの元に返った。
このカオスがチエ達西萩連中の日常であることを、ゲスト二人組も視聴者も思い知らされるのであった。
その後、ヤクザ二人組は、テツに見つからない安全な場所、すなわちミツルの交番にかくまわれ、一晩過ごした。ヤクザ二人組は、財布を拾って届けたのに罪人の気分になったと不機嫌だったが、ミツルがなだめて駅へ連れて行く。二人は、ほとぼりが冷めるまで旅に出る予定だった。
ミツルは二人に、おバァはんがお礼にホルモンをご馳走したいと言っていることを伝える。
二人は金輪際テツ達に関わりたくないからと拒否。それを想定していたミツルは、おバァはんから預かった謝礼金を二人に渡そうとする。
だが、二人はそれすら、テツまわりに関わって人生棒に振った奴沢山知ってる、と拒否。これも前作全話見た人なら納得する台詞。なにしろ、百合根、地獄組、東洋チャンプボクサーほか、テツまわりのせいで人生滅茶苦茶になった人達を山ほど見て来たからだ。
そこでミツルは、そのお金で二人にうなぎ弁当を買ってあげることを思いつく(特徴:受け取り手の事を考えた贈り物・義理人情)。
前作でもミツルは凄くいいやつだったが、今作でもそれが引き継がれていることがわかるシーンである。贈り物については、下記記事参照;
しかし、ミツルを待っている間に二人はテツを見かけ、逃げ去ってしまう。
結局ミツルはテツにつかまり、二人でうなぎ弁当を食べることになる。このミツルの行動も、ヤクザ二人組が逃げる時間を作れたことになり、ミツルの人の好さが表れている。
あと、前作でもそうだったが、高屋敷氏脚本回ではミツルとテツの可愛い友情が相当にクローズアップされている。可愛いだけでなく、ミツルはテツの繊細な面も知っており、前作の高屋敷氏脚本回では、ミツルは、ひっそり一人で出掛けたテツを心配していたりしていた。
話を戻すと、公園で弁当を広げるテツとミツルが幼く可愛い(特徴)。こういった、いつまでたっても男の子的な可愛い友情は、最新脚本Daysでも健在。画像は今回と、Days脚本。
そして、テツの言う、うなぎ弁当の通の食べ方が、特徴の飯テロ。カイジのビールが代表的だが、今回も、うなぎ弁当をすぐ食べたくなるような表現。
だが、おバァはん主催のホルモンパーティー(財布が戻った記念)に呼ばれた拳骨先生(テツの恩師)とチエが、テツ達を発見、拳骨がテツのうなぎをこっそり食べる。無印チエの高屋敷氏脚本回でも、チエと拳骨がテツをこっそり観察する話があり、それを思い出すし、うなぎを巡って追いかけっこする拳骨とテツが、またも同氏特徴で幼い。結局チエもミツルの分のうなぎを食べてEND。
もともと、うなぎ弁当は財布を拾ってくれたヤクザ二人組のためのものだったのに、結局はテツ、チエ、拳骨に食べられてしまった。(ミツルはホルモンパーティーに呼ばれていたから、もともと、うなぎを食べる気分じゃなかったが)
ここから考えても、テツ・チエまわりに関わるとろくな事にならないのを痛感する話となっていて、1話目にふさわしい話といえる。
ほぼ国民的な知名度のある原作だからすんなり始められるとも言えるが、西萩がどういう所で、テツが、チエ達がどういう人達なのかを知る話としてよくできている。
無印でもそうだったが、チエの脚本は非常に緻密で複雑。何個もの平行進行プロットをさばかないとならない。高屋敷氏の無印チエ脚本の仕事は、相当に同氏に影響を及ぼしたようで、以降の同氏の脚本は、平行プロットが何本も並んで、それが合流する展開が多くなっていく。アカギやカイジ、最新作Days脚本もそのような構造になっている。
今回は横田監督との共同脚本で、どこまでが共同なのかのラインが難しいので、ツイッターではなく、ブログにまとめることにした。高屋敷氏の特徴としては、流れるような早口長台詞や、可愛い友情や幼い仕草、義理人情や贈り物、が見て取れる。ただ、キャラクターの解釈としては、高屋敷氏単独脚本と違う部分が所々感じられたので、そこらへんが横田監督との合作脚本の影響が出ていると思われる。ただ、二人が1期を思い出しながら今作(チエ2期)を世に送り出した経緯が感じられる回だった。