カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

コボちゃん42話A脚本:アカギ脚本との意外な関係

今回は台風の話。後半の深夜麻雀場面が異様なくらい、嵐の夜に麻雀をする、アカギ(シリーズ構成・脚本)の1話脚本とシンクロしているので驚いた。

 

冒頭、待ち人(おそらく女性)が来るか来ないか、花占いをしているサラリーマンと、それに影響されて、台風が来るか来ないか花占いをするコボが出て来る。どちらも花・花弁のアップや間があり、「無言で語っている」ような作りになっている。これも高屋敷氏特徴である、物や自然=キャラ。

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コボは遊園地に行く約束をした日と台風が来る日が重なるのを嫌がり、台風が来るか来ないか花占いをしたのだが、結果は「来る」。

花が「来る」と告げた直後、実際に台風が来た場面となり、これも花がキャラとして意思を持っているような特徴が出ている。

この回、なんと青嶋克己氏の一人原画なのだが、台風の作画が凄い。下記画像は、嵐の夜が印象的なアカギ1話(高屋敷氏脚本)との比較。どちらも意思を持ち、何かを語る・予告するような描写になっている。特にアカギは、ナレが「伝説」と言った刹那、雷が落ち、雷がアカギの伝説の始まりを「告げる」。

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話を戻すと、帰宅中に台風の凄さを体感した竹男(同居中のコボの親戚)が、洪水になるかもしれない、とコボ達に告げたことで、コボ一家は防災準備に奔走することになる。岩夫(コボの祖父)は、その最中に麻雀セットを見つける(後の伏線)。

防災準備を行った全員は一同に会し、岩夫が全員と確認を取る。ところで、以前の防災訓練の回も高屋敷氏の脚本だったので、連動しているネタがある。
担当ライターが同じなのを利用してネタをつなげるのは、忍者戦士飛影の同氏脚本でも見られた。

さて、確認を終えた岩夫が、万が一の心得を言おうとすると、外から何かが割れる音がする。外を見ると、避難させるのを忘れた盆栽や植木鉢が、倒れたり割れたりしていた。これも、植物達が、助けを求めるような意思を持っているかのようである。また、その後、避難させた植物達のアップの間があり、キャラとしての自己主張がある。

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岩夫達が植物を避難させている時間経過を感じさせる間として、数限りなく出ている同氏特徴、ランプのアップがある。これも揺れたり、間があったりして、意思を持つよう設定されている。多すぎてキリがないが、下記はアカギ1話のランプの間との比較。

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そして、停電が発生したのでロウソクをつけるのだが、ここも特徴であるロウソクの炎のアップと間がある。また、この場面、同氏ど根性ガエル演出とシンクロ。

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ど根性ガエル(下段)の方はクリスマスの思い出。今回はコボが「クリスマスみたい」と喜ぶ。
ここも、キャラとしてのロウソクがコボ一家の不安を和らげてくれているような効果を生み出している。
しかもその後、ロウソクを囲んで食事(特徴・飯テロ)。これも、心を癒すものとしての効果がある。後にも夜食場面がある。言うまでもないがカイジ破戒録でも、飯テロは爆発。

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こういった、物や自然が意思を持つキャラとして扱われる特徴は、過去作から現在に至るまで多く出ており、しかも何故か、演出担当作品より脚本担当作品の方が、より強調されている。ここがミステリアスな魅力でもある。

停電の間、確認のためにラジオをつける場面でも、ラジオのアップになり、ラジオ自身が天候情報を喋っているかのような迫力になっている。更に、アカギ1話脚本とシンクロ。

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アカギでも、ラジオが嵐についての天候情報を語る。
ジョー2脚本でも、ジョーとホセの死闘を語るカーラジオの場面がある。ラジオやテレビは「喋れる」だけに、益々存在感が増す。

その後の時間経過を表す雨どいのアップ・間も、同氏シリーズ構成・脚本である「二舎六房の七人」の1話脚本とシンクロしている。驚異のシンクロ率。

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そして停電が終わった時の全員の喜び方が可愛く幼い。これも過去から現在に至るまでよく出る特徴。

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話は一難去ってまた一難、今度は風呂場のお湯を出しっぱなしにしてしまっていたため、お湯が廊下に漏れ出して来る。ここも、お湯が意思を持つかのような殺気がある。

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そして台風の方はますます強くなり、大人達は万一に備え徹夜をすることに。コボも付き合うと言い張るが、結局コボは寝てしまう。

ここでの、夜中の弛緩した空気の場面がアカギ1話とシンクロしていて笑った。アカギ1話も(下記右側)、弛緩している状況の一場面。

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岩夫は、徹夜の暇潰しとして、防災準備中に見つけた麻雀セットを使っての麻雀を思い付く。面子は大人達全員で、早苗(コボ母)とミネ(コボ祖母)は交替制。

こうして、嵐の夜の麻雀が始まる。早苗とミネが麻雀初心者なのも含め、アカギ1話とシンクロしていて面白い(アカギも1話は麻雀初心者)。

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そして、アカギ同様、初心者の早苗とミネが最強となる。早苗が役満の手で和了った直後、台風のせいで灯が消え、落ちる電灯看板のアップが映る(下記上段)。これも、キャラとしての無機物や自然が意思を持って状況を表し、同氏特徴的。アカギ1話脚本(下段)も同様。

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また、アカギ1話では、牌や点棒が意思を持つかのようなアップ・間が連発され(下記下段)、高屋敷氏の特徴が強く出ている。脚本なのに映像に特徴が出ているのが毎度恐ろしい。今回(下記上段)も物や自然のアップ・間が多く、同氏の特徴が強い回。

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また、今回もアカギ1話も、炎のアップの間があり、キャラとして活躍している。これも、数多く見られる同氏特徴。

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そして麻雀は、早苗・ミネ連合が大三元を出すなど、大勝し続ける展開に。アカギ1話脚本でも、原作通りだがアカギがイカサマ大三元を出しているw

そしてボロ負けの男性陣は、本気を出すため上着を脱ぎランニング姿に。

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これも高屋敷氏特徴の「脱衣演出」で、服を脱いだり裸になったりすることで、アイデンティティの如何を表し、数多くの作品で出て来る。ここでも、負けが込んだ男性陣が大人の面子を、服と共に脱いでいる。

また、負けたからといってここまで大人げなく幼くなる所も、同氏特徴的。数多くの作品で、キャラが幼く無邪気になる場面が出て来る。

そして麻雀は、男性陣の意気込みも虚しく、早苗・ミネ連合が勝ち続ける。ここでも、時間経過を表すため、夜食の跡のアップ・間が入る。こういった食事跡のアップも、数多くの作品で登場する。

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とにかく同氏作品は飯テロ描写が多い。相当な飲み食い好きなのだろうか?

そして夜通し早苗・ミネ連合が勝ち続け、ロンを連呼。ここも、アカギ25~26話同氏脚本の、鷲巣の「ロン!ロン!(略)ロォーンっ…!!!」超連呼を想起させ面白い。しかも岩夫が「一度言えばいいんだ、一度!」とツッコミを入れる。こういった超連呼は、デビュー疑惑のジョー1脚本(無記名)からある特徴。また、最初と最後を同じ単語にしてリズムを取る台詞まわしも、同氏の特徴。

結局大人達は、麻雀しっぱなしで朝を迎える。コボが起きてきたことで、朝であることに気が付いたのだった。

一家が外を確認すると、台風はすっかり過ぎ去り、快晴になっていた。悪天候→快晴の描写が同氏シリーズ構成・脚本の「二舎六房の七人」とシンクロ。

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どちらも状況と連動し、天がキャラとして活躍している。これも、監督作の忍者マン一平で特に明確になっている同氏特徴。忍者マン一平では、太陽や月に顔がついていることが多く、同氏の演出意図の種明かしがある。

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コボは台風一過に感銘を受け、晴れたら遊園地に連れて行ってもらう約束だったことを思い出す。
だが大人達は徹夜麻雀のせいで完全に寝入っていた。コボは扇風機を持ち出して、遊園地に行くと言うまで風を当てると宣言。特にランニング姿で麻雀をしていた大人男性陣は、このコボの攻撃に寒がり、完全に参ってしまうオチ。

 

  • まとめ

とにかくアカギ1話脚本との、時を超えたシンクロが面白い。アカギ1話のアーキタイプとも言えてしまうくらいである。

また、今回は台風と麻雀の話というのもあり、物や自然がキャラクターとして存在感を放ちまくっており、同氏特徴の宝庫になっている。

同時に、アカギ1話も見返せば見返すほど高屋敷氏の特徴が出ていて、見ていて恐ろしくなってくるほど。

今回も、あくまで同氏の「脚本」作であるのに、映像が過去・未来作と似てくる怪現象が連発される。それだけ、アニメ映像を最初から意識している「脚本」なのかもしれない。これは、作画や他の工程も管理する、アニメ演出の経験も豊富だから可能ともいえる?

とにかく、同氏の「演出入り脚本」的ハイブリッドな魅力が存分に出ている回だった。