カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

チエちゃん奮戦記2話脚本:難易度SSのチエ脚本再び!変化を必要とするループもの

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくなりませんが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見れます)

チエちゃん奮戦記(じゃりん子チエ2期)の1話高屋敷氏脚本(横田監督と共著)については下記ブログにまとめました。

http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2016/09/12/200256

無印チエのブログアーカイブはこちら(なるべく増やす予定)

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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冒頭、テツが鏡で自分の顔を見ている。いきなり同氏特徴、鏡演出。真実や現状を映したり、嘘を見抜くキャラとして活躍。画像は今回と、ベルばらコンテ、チエ1期・ジョー2・ルパン・カイジ1、2期の脚本。 https://t.co/G7NKovLGFM

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1話をまとめたブログで書いたが、1期で西萩メンバーの定着が終わってしまったため、テツやチエ達に振り回される役を外部から呼ばなくてはならなくなっている。それが1話のヤクザ二人組。今回は、テツ自ら、新キャラに化けて騒動を起こそうとする話。

つまり1期から何年もたってるのに、1期終了から2期まで話がまだまだ数珠つなぎになっている。これがチエ脚本・シリーズ構成の恐ろしさ。各話の緻密さ・平行エピソードさばきの大変さは、1期と変わらない。しかも1期を覚えていないといけない。相当な手腕が要る。

話を戻すと、テツは、自分の顔が怖すぎるから最近ヤクザが近付いてくれない、と悩んでいた(ヤクザをどついて金を巻き上げるのが趣味)。これも1期や2期1話とつながっていて、テツほか西萩連中に関わるとロクな事にならないのが、周りに周知されているのが原因。

テツは、自分の顔についてどう思うか正直に答えて欲しいと、チエやカルメラ兄弟に尋ねる。怖がるカルメラ兄弟がかわいく、スキンシップ多め。これは最新作Days脚本でも変わらない。

https://t.co/VljUr05bmc

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カルメラ兄弟やチエの意見を取り入れ、テツはヤクザにからまれやすい顔にメークアップする計画を立てる。画力に自信がないカルメラ兄弟は断るが、そこへ、町一番の画力の持ち主、ヒラメ(チエの親友)が通りかかり、ヒラメがメークアップ係となってしまう。

チエ1期において、ヒラメの絵が上手い話と、ヒラメがテツをモデルにした絵で賞をとる話は、高屋敷氏が脚本を担当している。なのでヒラメの画力をテツが今回も盲信しているのは自然な流れ。というか記憶力に脱帽する。他作品からの引き出しにも思うが、驚異の記憶力。

鏡確認もせずに変顔で町に出たテツは、望み通りヤクザに絡まれまくる。ヤクザをどつく際に服まで脱がしてるのが、同氏特徴脱衣演出。格好ばかりで弱いということ?画像は今回、元祖バカボン演出、Days脚本。https://t.co/DhEv4txM1D

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メークアップ顔に大満足のテツは、おバァはんやチエの前をメークアップ顔で通るイタズラをして、チエ達を動揺させる。そしてヒラメのために、ヒラメの好物の塩せんべいを持っていくが、ヒラメ母は怪しみ、外に出るなとヒラメに警告。自分の描いた顔が起こした騒動に、ヒラメは頭を抱える。

一方チエは店の売り上げがよく、ご機嫌。機嫌といえばテツも最近機嫌がいいことにチエが気付き、頭おかしなっとると疑う。頭を指して、狂ってる(バカ)と言うのも同氏特徴。画像は今回、チエ1期(後ろのモブ)脚本・Days脚本。

https://t.co/NGXilpxcxT

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更にチエは、ヒラメに最近会えない事に気付く。ヒラメはテツに会ってはメイクアップの仕事をしていた。テツとヒラメのやりとりは、1期のころから可愛い。テツが幼いせいもある(同氏特徴)。画像は今回と1期。 https://t.co/jNLbmZc8tq

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ヒラメはテツに、もうメイクアップの仕事をやめたいと打ち明けるが、テツは大事な面接の仕事があるからと、無理に頼み込む。ところでヒラメのための塩せんべいや大福が美味しそう(特徴:飯テロ)。ホルモンも定番。 https://t.co/yO97qVzpwX

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悩み抜いたヒラメは、チエとヨシエにメークアップの事を打ち明ける。しかも今回は、面接というから、描くふりしてメークアップしなかったという。チエは面接と聞いて怪しみ、テツが恨みを持つ人物を尋ねてまわる(おバァはん・拳骨先生)。ビンゴは拳骨。

チエから一報を聞いた拳骨は「テツと遊ぼう」と楽しそうにする。1期からだが、肉弾も知恵も、テツは拳骨に敵わない。しかもテツと絡むのは拳骨の心からの楽しみの一つで、童心に帰る(特徴)。Days脚本も風間が童心に帰っている。 https://t.co/iJ5UNh9D38

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テツはメークアップなしの顔とも知らず、拳骨宅に営業マンとしてやってくる。拳骨は、それに気付かないふりをして、テツとやりとりする。言うなれば、同氏がシリ構・脚本を務めたアカギ・カイジのような心理戦に。 https://t.co/sC4vo4dSx1

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また、こっそりレンガを持ち出したテツを拳骨は見逃さず受け止める。これも悪意あれど、特徴である「物を介して思いを伝える」。

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また、レンガお手玉カイジ(シリ構)とシンクロw https://t.co/tnXZm3TSCD

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どんどん拳骨に追い詰められたテツは、とうとう拳骨に「お前が売りに来たのは喧嘩じゃろ」と言われ、テツの顔を映した鏡(特徴)を見せられる。

化けの皮がはがれる・本性を見せる、ということではカイジの班長に繋がる。 https://t.co/XhkvwmMYDV

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迂闊さが鏡に映るのは、ルパン脚本でも出てくる。

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あと、ラストはテツが逆さ吊りになるが、1期も、らんま脚本も、犬神家ネタが入る。好きなのかな? https://t.co/ICVIeC2Nnz

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  • まとめ

コンテはチエ1期にはいなかった片渕須直氏、演出は須藤典彦氏。なのに1期からの継承は上手くいっている。監督が1期から高畑監督の右腕だった横田和善氏だし、脚本も1期最多執筆の高屋敷氏である。美術も、怖いくらい継承されている。町並みもほぼ同じ。

ところで、今回コンテの片渕氏が監督のアニメ映画「この世界の片隅に」は2016秋公開予定なので期待したい*1

話を戻すと、とにかく本作は1期と1期の最終回を把握していないと出来ない作品。

この1話内だけでも、ヒラメの絵が上手い話、ヤクザがいないとテツの生き甲斐がなくなる話、テツとヒラメの友情が可愛い話、テツと拳骨のどつきあいが幼い話、ヒラメの好物が塩せんべいの話など、1期の設定が全て頭に入っていなければならない。凄い情報量である。

1期では渉やヨシエといった、堅物の外野が西萩連中に溶け込んで行って終わるが、そうなると、西萩連中に振り回される被害者が足りなくなる。それが2期。だから1話はゲストを呼び、2話はテツ自らゲストとなった。ここらが、通常ループものと少し違う。

高屋敷氏のテーマの一つに、「前へ進め」というものがある(詳しくはこちら)。じゃりん子チエはループものとはいえ、外野が西萩連中の変わらなさを指摘したり、西萩連中が変わろうともがいたりする。ただ停滞している訳ではない。

現に、次の高屋敷氏の脚本回は、テツが働く話である(7、8話)。1期でもテツが働く話があるので、これまた1期の記憶が必要。1期を踏襲しつつ、2期も「変化」をつけなければならないコンセプトで、やはり脚本陣の相当な手腕が要ると痛感する回だった。

*1:見たが素晴らしい映画だった。また、大ヒット