(Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)
めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。
前回まで:
才能を生かし保育士となった五代は、響子にプロポーズ。少しでもいいから自分より長生きしてほしい、という条件で響子はプロポーズを受ける。
結婚後しばらくは、一刻館の管理人室に住むことにした五代と響子は、荷物の整理をする。その最中、響子は亡き夫・総一郎の遺品を見つめる。ここも高屋敷氏特徴の、意思を持つような物のアップがある。遺品つながりで、ルパン三世3期脚本と比較。
響子は、けじめをつけるために遺品を惣一郎の実家(音無家)に返すことにする。その報告をしに、響子は惣一郎の墓に行く。
だがそこには、墓に線香をあげる五代の姿があった。響子はこっそり様子を窺う。
五代は、惣一郎の墓に語りかける。心の中に惣一郎がいる響子を好きになったのだから、「あなたもひっくるめて、響子さんをもらいます」と。
その言葉に胸を打たれた響子は、「この人に出会えたこと、喜んでくれるわよね」と、惣一郎に心で語りかける。
すると響子に応えるように、惣一郎の墓のアップになり、線香の煙が立ち昇る。高屋敷氏特徴の、「魂をもつもの」の真骨頂。監督作・忍者マン一平でも墓石が生き物のように動く場面がある。風に舞う桜も、特徴が出ている(自然もキャラクター)。
響子は五代の前に姿を現して五代の手を握り、「あなたに会えて、本当によかった」と言う。
画像は、同氏の大きな特徴である、手から手に想いを伝える場面集。今回、あしたのジョー2脚本、ルパン三世3期脚本、カイジ脚本・シリ構、ワンナウツ脚本。
桜の花びらが舞い、天に昇っていく。ここも、同氏特徴で、桜や風をキャラクターとして捉えている。
画像は今回、ベルばらコンテ、らんま脚本。
結婚式当日、美しい花嫁衣装に身を包んだ響子は、惣一郎の父から「うんと幸せになりなさい」と祝福を受ける。同氏特徴の、優しいおじいさん。
味のあるおじいさんは、同氏作品によく出る。画像は今回、はだしのゲン2脚本、DAYS脚本。
そして結婚式が始まる。あしたのジョー2にて、高屋敷氏は西と紀ちゃんの結婚回の脚本を担当しているが、それを彷彿とさせる。
結婚式後、スナック・茶々丸(皆のたまり場)にて二次会が催され、二人に関わった人達が一同に会する。ここも、祝福する人達の温かさに、同氏特徴が出ている(仲間愛・優秀モブ)。画像は今回、あしたのジョー2脚本、カイジ2期脚本。
五代は皆に感謝し、「響子と二人で一生懸命生きて行きます」とスピーチする。
ここも同氏テーマの一つである「みんながいるから自分がいる」が出ている。
あしたのジョー2脚本でも、泪橋の皆が自分の心にしっかりといる、と丈が語る場面がある。
二次会後、響子と五代は、ホテルではなく一刻館に泊まることに。住人達は歓迎。
住人達は口々に「ただいま」と言って一刻館に入り、一刻館に明かりが灯る。ここも、一刻館が魂を持つかのように描写され、特徴が出ている。はだしのゲン2脚本の、子供達を見守る原爆ドームと比較。
それから月日は流れ、皆の近況が五代のナレーションで語られる(特徴:ナレも重要キャラ)。
こずえは名古屋で新婚生活。
三鷹夫婦は双子を授かる。
八神は女子大生に。
朱美は茶々丸のマスターから求婚され、同居中。
そしてまた、桜の季節がやって来て…
五代と響子の間に娘(春香)が生まれる。生まれたばかりの春香を連れ、五代と響子は「ただいま」と一刻館に帰ってくる。住人達は歓迎し、祝福する。
試練を乗り越えて仲間に歓迎されるカイジ2期最終回と比較。
響子は春香に、「お家に帰ってきたのよ。ここはね…パパとママが初めて会った場所なの」と語りかける。
そしてタイトル「めぞん一刻」が真っ白な画面に浮かびあがり、桜の花びらが一枚、舞い降りてくる。花びらが着地したところで「完」。
- まとめ
まずサブタイトルの「この愛ある限り!一刻館は永遠に…!!」だが、あしたのジョー2サブタイ法則、「必ず“…”を入れる」を適用している。
これはカイジ2期でも適用されていて、カイジ2期最終回サブタイは「未来は僕らの…」である。
この最終回では全編にわたり「桜」が大活躍しており、ラストシーンまで活躍。自然や物をキャラクターとして扱う高屋敷氏らしさが非常に強く出ている。はだしのゲン2脚本やRIDEBACK脚本と比較。あらゆる事象を「見守っている」迫力がある。
また、驚いたのは、まるで生きているような一刻館の描写。
はだしのゲン2脚本の、「子供達を育て、見守る」原爆ドームや、他作品から見るに、この最終シリーズ構成では「一刻館」をキーキャラクターとしているのでは?と私は推察していたが、大当たりだった。
「生き物のような建物」といえば、一刻館のほかに、前述はだしのゲン2脚本の原爆ドーム、ワンナウツ脚本の、イカサマだらけの「トリックスタジアム」、カイジ脚本の「スターサイドホテル」、「カジノビル」などがあり、どれも迫真。
あと、最終シリーズ構成方針として、「男としての五代の成長」も強く描写されていた。
「無邪気で幼い“男の子”から、大人の“男”への豹変」を描写していくのは、高屋敷氏の大きな特徴。画像は豹変集。本作、カイジ脚本・シリ構、DAYS脚本、家なき子演出。
家なき子最終回演出や、ジョー2最終回、カイジ2期最終回については、「未来に向けての男の旅立ち」が示唆されているが、五代は一刻館に留まる。(子供が生まれたら引っ越す予定だったが、四谷曰く“居着いた”)。
だが五代は、次世代を作るという偉業を成す。
あしたのジョー2脚本にて、丈は“旅に出ても必ず泪橋に帰ってくる”と言っているが、今回脚本では、各キャラが一刻館に「ただいま」と言って帰ってくる。
あしたのジョー2の西夫妻も、本作の五代夫妻も、「皆が帰ってくる場所を作る人達」なのではないだろうか。
そしてサブタイ通り、一刻館は「この愛ある限り永遠に」、生き続ける。
本作のタイトルが、何故「めぞん一刻」なのか…と考えた時、アニメスタッフは「一刻館は生きている」という答えに到ったのではないだろうか。そしてそれは高屋敷氏の得意分野である。
まるで生きているように一刻館に明かりが灯るシーンは、アニメ版めぞん一刻の名場面だと思ったし、非常に高屋敷氏らしさが出ていて戦慄した。 そして今回も「脚本」なのに、桜や建物など「物いわぬもの」の活躍が目立ち、同氏特徴が炸裂していた最終回だった。