カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

F-エフ-11話脚本:恋愛ドラマ的な人間模様

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテ/演出が澤井幸次氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

筑波でのFJ1600レースに参加する事になった軍馬は、練習走行に励む。一方、タモツ(軍馬の親友で、メカニック)の腕に惚れている聖(後の軍馬のライバル)は、本格的にタモツを口説きにかかる。また、タモツに自分のマシンをいじらせ、ますます彼の腕に惚れ込む。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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冒頭、アニメオリジナルで、聖(軍馬の後のライバル)とルイ子(聖の恋人)の会話がある。聖は、「レーサーは、マシンとメカニックに惚れられたらおしまい」と語るが、これも今後の伏線になるかもしれない。とにかくオリジナル部分は、後の展開の伏線が多い。

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更にアニメオリジナル場面は続く。
以前、左足を痛めた軍馬だったが、このたび全快。岸田(軍馬を慕うインテリ青年)と喜び合う姿が可愛い。高屋敷氏の担当作は、とにかく可愛い友情描写が多い。グラゼニ脚本、ど根性ガエル演出と比較。

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その後、岸田と軍馬はラーメン屋にてラーメンを食べる。これもアニメオリジナルかつ、高屋敷氏の特徴である飯テロ。元祖天才バカボン演出/コンテ、監督作忍者マン一平カイジ2期脚本と比較。

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岸田は、コースについて分析したレポートを見せるが、軍馬は「なんだこりゃ」と言い、ラーメンをおかわり。
なんとなく、カイジ2期脚本にて、カイジが図解を用いて遠藤を口説く場面を思い出した。カイジの場合は、理詰めが勝っている。

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一方、聖は港にて、ヨーロッパから来た新しいマシンを迎える。長年一緒に仕事した出崎兄弟の影響か、高屋敷氏も波止場好き。ルパン三世2nd演出/コンテ、太陽の使者鉄人28号・キャッツアイ脚本と比較。

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軍馬はというと、さゆり(アパートの大家)とトランプで遊んでいた。原作と比べ、微笑ましさが増している。老人との交流の可愛さも、高屋敷氏は得意。ベルサイユのばらコンテと比較。

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そこへタモツが帰宅。明日から練習走行したいと言う軍馬に対してタモツは、まだレースは早い、と言う。軍馬はタモツを締め上げて自分の意志を押し通し、タモツは根負け。ここも高屋敷氏の特徴が出ていて、二人が幼く可愛い(やり取りもアニメオリジナル)。グラゼニ・DAYS・ルパン三世3期脚本と比較。

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タモツは軍馬に、これからは物事を1人で決めないと約束してほしい、レーサーとメカニックは心がつながっていないとならない…と頼む(アニメオリジナル)。軍馬は了解し、やるからにはトップを目指す、と胸中で誓う。ここも、軍馬とタモツの繋がりが描かれ、友情描写が得意な高屋敷氏らしさが出ている。また、今後の伏線にもなっている。

練習走行の日。軍馬のタイムを計測中のタモツに、聖が声をかける。
聖は、タモツの整備の腕を褒めるが、軍馬がタモツの才能に釣り合っていないと言う。
タモツは、その反論として、軍馬の驚異的な動体視力を見せる。

走行中でも、軍馬はボードに書いてある小さな印の向きを、百発百中で当てる。
過去にはなんと、50m先を走る電車の吊り広告の文字が見えていたという。
これには聖も、驚かざるを得ず。
タモツは、楽しそうに軍馬との思い出を語る。ここもタモツと軍馬の親密度が微笑ましく、高屋敷氏らしさが出ている。

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聖は、そんなタモツを見て、友達を悪く言った事を謝り、新しいマシンが届いたので、今度遊びに来てほしいと言い、去る。
ルイ子は聖に、タモツのようなタイプは口説くのに手間がかかると言う。聖はそれを承知しており、敢えてタモツを刺激していた。この、聖とルイ子の会話はアニメオリジナル。相手の内面を探るあたり、心理戦が多いカイジの脚本などに繋がって行く。

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ピットインした軍馬は、練習走行を開始しようとしている聖を見て、制止するタモツを振り切り、勝負を挑む。
一方岸田と、老執事・小泉のやり取りがアニメオリジナルで描かれる。味のある老人は、高屋敷氏の作品に頻出。チエちゃん奮戦記・はだしのゲン2・MASTERキートン脚本と比較。

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軍馬は強引なショートカットをして聖に並び、勝負する。そこへカエルが飛び出してきて、両者は接触、コースアウトする。
カエルが原作よりコミカルなあたり、高屋敷氏が演出参加していた、ど根性ガエルが思い出される。

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軍馬は、カエルに説教する。アニメオリジナルの追加台詞もあり、ど根性ガエル演出や、新ど根性ガエル脚本といった、高屋敷氏の過去作が思い出される。カエルへの愛情を見るに、ど根性ガエルへの思い入れが窺える。

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聖のマシンは損傷。謝らない軍馬に対して、聖のメカニックは怒る。これもアニメオリジナル(そもそも原作では、ここで聖と軍馬は勝負しない)。モブに存在感を与える、なんとも高屋敷氏らしい追加。

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平謝りするタモツに対して聖は、マシンの修理や整備を依頼する(ここもアニメオリジナル)。

更にアニメオリジナル展開は続き、岸田と軍馬は、タモツが聖のマシンをいじっている間、喫茶店で時間を潰す。
聖にデレデレするタモツにイラつき、軍馬はアイスティーをぶくぶくさせる。
意味深な「物」のアップ・間は、高屋敷氏の大きな特徴。グラゼニ・アカギ・めぞん一刻脚本と比較。

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軍馬は野生のカンで、聖がわざと避けなかったのでは?と疑うも、そんなわけないか、と、すぐに否定。
直後に映る太陽が意味深。まるで「全てを見ている」ような太陽は、実によく出てくる。元祖天才バカボン演出/コンテ、らんま脚本、空手バカ一代演出/コンテと比較。

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軍馬のカンは当たっており、ルイ子は、聖に「わざと避けなかったんでしょ」と言う。聖は否定せず、タモツに自分のマシンを触らせる機会を模索していたことを告げる。
聖は、「カエルが天使に見えた」(アニメオリジナル台詞)と言うが、これも、ど根性ガエルネタかもしれない。

整備・修理を終えたタモツに、ルイ子は投げキッスをする。これもアニメオリジナル。デレデレするタモツに、軍馬は、早く帰ろうと促す。ここも、軍馬やタモツが幼く、高屋敷氏らしい。

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夕刻、タモツが整備・修理したマシンを走らせてみた聖は、マシンがまるで生まれ変わったように改善されていることに驚く。聖は、ますますタモツの腕に惚れ込み、右腕にしたいと望む。
その頃軍馬は、夢の中でコースを走っていた…
眠る軍馬と、聖の走行が交互に描かれ、アニメ版の上手い演出になっている。

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  • まとめ

タモツという天才を、聖と軍馬が取り合うようになっていくわけであるが、めぞん一刻の脚本・最終シリーズ構成にて、高屋敷氏が複雑な人間関係を描ききった事が思い出される。

めぞん一刻とは違い、恋愛ではないのだが、恋愛ドラマに近い、人間同士の複雑な絡み合いがある。また、可愛い友情を描くのが上手いだけに、人によってはBLに見える要素もある。それだけ、男同士の親密な関係を描くのが、高屋敷氏は上手いとも言える。一方で、(未見だが)ストロベリー・パニック脚本では、同氏は百合に挑んでいる。

聖がタモツにマシンを触らせるのは、原作ではもっと後になるのだが、アニメでは、タモツを「攻略」するために、聖が複雑な策略を巡らす。こういった所も、心理戦や知略合戦、悪知恵を好む高屋敷氏らしい。
アニメオリジナル部分と、原作通りの部分も、複雑に融合している。

1話も、それ以降の回も、オリジナルを交えながら、軍馬とタモツの仲睦まじさが「強調」されていたのも、後の展開を考えると、重要な伏線になっていたと言える。
そういった、シリーズ全体を通した「構成」を見ていくのも面白い。

聖の存在を、1話から継続して、オリジナルで出番を作ってまで「強調」していたのも上手い。聖は、軍馬のモチベーションを上げる存在であると同時に、軍馬の大切な人間を奪いかねない脅威ともなって来ている。軍馬だけでなく、視聴者にとっても、聖の存在が大きくなっていく仕組みになっている。これも、構成の上手さが出ている。

この段階になってくると、人間関係も複雑になって来ており、それを描く「シリーズ構成」も、実に複雑であることが実感できる。今後も、高屋敷氏のシリーズ構成の手腕を見て行きたい。