カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

グラゼニ シリーズ構成・脚本:感想ツイート集(10~12話)

2018年制作のグラゼニ(高屋敷英夫氏シリーズ構成・全話脚本。監督は渡辺歩氏)についての、私の感想ツイートをまとめ、編集・加筆した。今回は10~12話まで。

  • あらすじ

プロ野球投手・凡田夏之介は、年棒にこだわるタイプで、「グラウンドにはゼニが埋まっている(すなわちグラゼニ)」が信条。そんな彼の、悲喜こもごものプロ野球選手生活が描かれる。

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本記事を含めた、グラゼニに関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BC%E3%83%8B

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10話

やはり今回も出てきた、飯テロ。コボちゃん・チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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とにかく、演出でも脚本でも(+小説もそうらしい)、飯テロや食いしん坊描写が本当に多い。 

今回は甲子園での試合なので、完全アウェイ。観客の熱気でマウンドが揺れ、夏之介は苦戦。めぞん一刻脚本の一刻館、はだしのゲン2脚本の原爆ドームなど、生き物のような建物を、高屋敷氏は多く描写する。

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相手チーム(阪神がモデル)の方は、二軍に落とされるか否かがかかる二人(石元・江連)が描かれるが、自分よりも年俸が下の選手に滅法強い夏之介が二人の前に立ちはだかり、どっちが悪役かわからない事態に。高屋敷氏は、善悪の境界をグレーにする傾向がある。

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結局のところ、石元・江連は夏之介に負け(試合は夏之介の方のチームがボロ負け)、二人仲良く二軍に落とされてしまう。
こういった敵側の悲哀は、カイジ(シリーズ構成・脚本)ほか、高屋敷氏の担当作で多く描かれ、興味深い。

11話

瀬戸内カーナビーツ(カープがモデル)のベテラン中継ぎ投手・原武の話。広島といえば、高屋敷氏はカープ誕生物語(未視聴だが)の脚本(浦畑達彦氏と共同)や、はだしのゲン2の脚本を書いており、縁がある。

今回も出てきた、特徴の飯テロ。本当に多い。お好み焼き、ラーメンつながりで、チエちゃん奮戦記(大阪だが)・コボちゃん脚本と比較。

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夏之介は原武をリスペクトしており、可愛がられる。
無邪気で可愛い友情も、高屋敷氏は多く描写する。ど根性ガエル演出、F-エフ-脚本と比較。

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頻出の、煙草の強調も出た。
F-エフ-・カイジ2期・アカギ脚本と比較。

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原武はネットで人生相談をやっている。なんとなく、マジメな若者から相談を受けることが多かった、じゃりン子チエ・チエちゃん奮戦記(高屋敷氏脚本参加)のテツと重なるものがある。

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ピッチャー同士だが、どちらも打席に立つことになり、夏之介と原武は対決。
対決姿勢を示す手袋の強調も、他の作品で出てくる。カイジ2期脚本と比較。

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水面描写も、よく出る。忍者戦士飛影脚本、ベルサイユのばらコンテと比較。

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夏之介は、原武からHRを打つ。魂があるようなランプやボールの強調も、よくある。

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シリーズ構成としては、プロとは何か、一軍選手とは何か、投手とは何か…などを積み重ね、今回は「ベテラン中継ぎとは何か」が描かれる。やはり、色々な人との交流を通し、「自分とは何か」(高屋敷氏がよく出すテーマ)を突き詰めている。

12話

F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)の18話では、「(レースで)走らなきゃ生きて行けない」男の生きざまが強調されており、それと通じるものがある。

まずは高屋敷氏特徴の飯テロについて。最終回だけあって、大いに強調…というか、まさに飯テロ!
カイジ2期脚本、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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実に美味しそうに食べるシーンが、やたら多いのも特徴。カイジ2期・F-エフ-・MASTERキートン脚本と比較。

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記念に書いておくが、定食屋の客として、ビートたけし氏が特別出演している。

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話は、夏之介の恋。自分の出た試合を見ていたにも関わらず、全然、想い人(ユキちゃん)は夏之介をプロ野球投手とは認識しない。これも、高屋敷的テーマ「自分とは何か」に関わってくる「強調」かもしれない。

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ラスト、夏之介は「ここ(球場)が僕の職場」とマウンドに立ち、「厳しい世界だけど、好きで選んだ道」、「僕には野球しかありませんから」とボールを見つめ、投げる。「グラゼニ!」

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やはり高屋敷氏の投げるテーマ、「自分とは、生きるとは何か」が出ている。

ゾクっと来たのは、F-エフ-18話(脚本)で非常に強調されていた、「(レースで)走らなきゃ生きて行けない」と、今回の「僕には、野球しかありませんから」が重なってくること。

やはり高屋敷氏は、「自分で自分の道を選び、全力で生きる男の生きざま」が非常に好きなのではないだろうか、という思いを強くした。
あしたのジョー2(脚本)、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)、F-エフ-・アカギ・カイジ(脚本・シリーズ構成)でも、その要素が出ている。

高屋敷氏は、何十年と「自分とは何か」「どういう自分になるかは、自分で決めろ」「自分の決めた道を行け」というテーマを扱っており、それは現在でも変わらない。凄いのは、原作に沿っていても、そういうテーマになるよう「構成」すること。

そして、「自分とは何かを見つめ、自分の道を生きる」人間は、非常に魅力的。原作も、選択する道も、運命も全く違うのに、高屋敷氏の色々な担当作の終盤(特に最終回)では、この「共通する魅力」が爆発する。本当にこの妙技に脱帽。

  • (シリーズ全体の)まとめ

段階的に要素を積み上げ、言いたいこと・強調したいことが、終盤または最終回に怒涛のように明らかになるシリーズ構成が、相変わらず素晴らしい。

高屋敷氏は、やはり「常に最新作がピーク」な人だった。過去に名作を出した人は、ゆるやかに下降していくものだが、同氏の場合、積み上げた経験を糧に、アップグレードを常に行っており、軌跡を追っていて本当に飽きない。

それでいて、「伝えたいこと」はブレない。それも、数十年もの間ブレないのは、もう尊敬するしかない。
しかも、原作つきだろうがオリジナルだろうが、同じメッセージを送り続ける技術が、非常に高度なことであることも、感じることができる。むしろ原作つきの方が、難易度が高いのではないだろうか。

これが、度々感じる高屋敷氏の「恐ろしさ」でもある。どんな原作であろうとも、高屋敷氏のテーマが、じわじわと滲み出て、最後には視聴者の心に強烈なインパクトを残す。つまりは、原作通りだろうが原作クラッシュだろうが、「高屋敷色」に染め上げている。

(幾度か書いているが)これは、原作をクラッシュしてでも「出崎作品」にしてしまう出崎統氏と長年一緒に仕事したことと、原作に非常に忠実でありながら、じわじわと自分のテーマを出していく高畑勲監督と、じゃりン子チエにて仕事した(高屋敷氏は脚本参加)ことが大きいと考えている。

いわば、出崎派と高畑派のハイブリッド。
また、高屋敷氏の「脚本」は、演出時代の経験を生かした、演出と脚本のハイブリッド的側面がある。
その「ハイブリッドさ」は同氏の強みであり、魅力である。

2018年も、その魅力を見ることができて、非常に嬉しく、2018年秋に始まる、グラゼニ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)も楽しみである。