カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

F-エフ-22話脚本:支える者達

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテが澤井幸次氏、演出が遠藤徹哉氏、脚本が高屋敷英夫氏。

───

  • 今回の話:

FJ1600レース(参戦3度目)決勝。親友・タモツが聖(軍馬のライバル)のメカニックになってしまったことで、メンタルトラブルを起こした軍馬は出遅れ、ドンケツになる。
そこで岸田(軍馬を慕うインテリ青年)は、タモツを模した人形を作り、タモツがいるように見せかける。効果は抜群だが…

───

本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の

記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

───

親友・タモツに去られ、メンタルトラブルを起こしてドンケツになってしまった軍馬。それに腹を立てる根本(代打のオネエ系メカニック)の手を、森岡(軍馬の雇用主で後援者)が握り、根本が腕のいいメカニックであると評価する。原作通りであるが、強調されている。手と手のコミュニケーションを、高屋敷氏はよく出す。ワンダービートSグラゼニ脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013231904j:image

森岡は根本の腕を保証し、マシンではなく軍馬のメンタルに問題があると解説。
コース上の軍馬はというと、疑念や不安で頭が一杯になり、思うように走れず。カイジ2期脚本の、パチンコ台「沼」に恐怖するカイジと被ってくる。

f:id:makimogpfb:20181013231935j:image

軍馬は、根本がマシンを支配しているのではないかと、不安に駆られる(アニメオリジナル)。
イメージ映像で、根本が回転するのだが、不思議なことに、空手バカ一代演出/コンテや、ベルサイユのばらコンテと重なる。
ともあれ、高屋敷氏が演出時代によく使っていた表現ではある。

f:id:makimogpfb:20181013232014j:image

芸術の才がある岸田(軍馬を慕うインテリ青年)は急遽、タモツを模したハリボテを作成(原作ではパネル)し、タモツがいるように見せかける。
岸田の思惑通り、軍馬はタモツが帰って来たと錯覚。
ほぼ原作通りだが、元祖天才バカボン演出/コンテにて、本官さんが山口百恵パネルを崇拝する場面が思い出される。

f:id:makimogpfb:20181013232221j:image

タモツが来ていると勘違いしたままの軍馬は、ぐんぐん順位を上げ、仲間達は大喜び。これまた高屋敷氏の不思議な特徴だが、演出・脚本作ともに、喜び方が可愛い。太陽の使者鉄人28号脚本、家なき子演出、DAYS脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232304j:image

そこへ雨が降ってくる。吹っ切れた軍馬は、雨を味方にした攻めで、上位を走る砂井(軍馬と確執のあるレーサー)を抜き、根本の腕を認める。
それを見る根本も大喜びし、軍馬を応援する(アニメオリジナル)。
ちなみにワンナウツ脚本でも、雨を味方にするのを大きく強調する回がある。

f:id:makimogpfb:20181013232357j:image

雨は上がるが、濡れたタモツ人形は崩壊、カラクリが軍馬にバレる。幼稚な手にひっかかり、自分のプライドが傷ついたとして、軍馬は怒りの走りを見せる。ここで虹が出る(アニメオリジナル)のだが、高屋敷氏は虹をよく出す。
エースをねらえ!演出、ベルサイユのばらコンテと比較。

f:id:makimogpfb:20181013232444j:image

リタイアした砂井を尻目に、遂に軍馬はトップに肉薄。その時、雲の合間から光が射し込む。この表現も、高屋敷氏の担当作によく出る。二舎六房の七人脚本、家なき子演出と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232510j:image

トップも抜き、チェッカーを受けようかという時、僅かに向きをピット方向に変えた為、軍馬は2位フィニッシュとなる。
彼はそのままピットすれすれをコーナリングし、仲間達や根本に雨水をぶっかける。原作通りであるが、高屋敷氏は水ぶっかけに縁がある。らんま・カイジ2期脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232602j:image

マシンを降りた軍馬は、早くギャラを寄越せと根本に迫られるが、値引き交渉を開始。根本と醜いドタバタ争いを繰り広げ、ギャラリーに笑われる。
二人の会話が原作より幼く、かつ軽妙で、そういった表現に長ける高屋敷氏らしさが出ている。

アパートに帰った皆は、とりあえず準優勝の軍馬を祝うが、余計な事をしなければトップを取れたのに…と彼を責める。
軍馬は軍馬で、人の心を弄ぶからだ、と反論。ここも幼い。めぞん一刻脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232650j:image

岸田から、タモツがいかに軍馬の精神的支柱だったか分かった、と言われた軍馬は、岸田をどつく。
更に、「そんなに腹が立つか?ズバリ言われて」と森岡に言われた彼はハッとするも、タモツがいなくても平気だ、と強がりを言う。ここも子供っぽい。

f:id:makimogpfb:20181013232724j:image

一方タモツは聖(軍馬のライバル)から、チーフメカニックに任命される。それを快く思わないチームの皆を制し、現チーフはタモツを認め、彼と握手(アニメオリジナル)。高屋敷氏のポリシーである手と手の触れ合いが、ここでも出ている。MASTERキートンルパン三世2nd脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232758j:image

軍馬の方は、木に登って月を眺める。月も、重要な「役」として、よく出てくる。空手バカ一代演出/コンテ、はじめの一歩3期脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232822j:image

離れていても同じ月の下にいる…という点で、はじめの一歩3期脚本と、かなりシンクロ。

そんな軍馬を、仲間達が見守る。純子(ヒロインの一人)は、彼がいつもの調子に戻った…と安心する。仲間愛の強調も、よく出る。ど根性ガエル演出、はだしのゲン2・めぞん一刻脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20181013232852j:image

軍馬は、「勝って勝って勝ちまくってやるぜ。次のレースも、その次も次の次もな!」と、いつかF3に上がることを誓うのだった(アニメオリジナル)。

ここで、カイジ2期脚本における、カイジのモノローグと比較。

カイジ:「死に物狂いで勝って…勝って勝って獲得する…!必ず自由を…!」

連呼でリズムを取る、高屋敷氏の言い回しの癖が出ている。

f:id:makimogpfb:20181013232959j:image

  • まとめ

タモツに去られた事で、孤独に苛まれて不安の塊になっていた軍馬を、仲間達が救うという流れになっている。高屋敷氏は、「孤独」「孤独救済」を多くの作品で描く。
原作では、森岡が「走っているのは、お前だけか?」と軍馬を諭すが、アニメでは、映像でわかるようになっている。

結果的に怒らせてしまうものの、岸田のアイディアによって軍馬が奮起したのは事実で、カラクリがバレてからも、彼は怒りをエネルギーに変えて驚異的な走りを見せた。
ただし、その怒りのせいで準優勝となるが。これも、友情や仲間愛を強調したい高屋敷氏の意図が見える。

また、雨を味方にした走り、虹の出現、チャンスの場面で射し込む光など、「天」の活躍も強調・追加されている。何度か書いているが、高屋敷氏は「天」をはじめ、「自然」「物」など、「物言わぬもの」に役割を与えて活躍させる。「脚本」でも、そのポリシーが表れるのが、毎度面白い。

あと、今回含め、「手と手によるコミュニケーション」が、数々の作品で描写される。
ワンダービートS脚本では、「手は第二の脳と言われている」という台詞があるほどであり、高屋敷氏がいかにこれを重視しているかがわかる。

前回も今回も、メンタル問題が鋭く描かれており、ここは、高屋敷氏が得意とするところ。原作から、この成分をうまく抽出して強調している。
ルーツは、脚本参加した、あしたのジョー1・2と思われる(1は無記名)。こちらも、丈をはじめ、金竜飛など、メンタル問題を抱えるキャラが多い。

めぞん一刻脚本・最終シリーズ構成においても目立っていたが、本作も、仲間愛を目立たせている。何だかんだ言いながら、精神的な脆さもある軍馬を、色々な仲間が支える。
カイジ脚本・シリーズ構成でも、仲間がいるからこそ、カイジが強さを発揮する様が描かれる。

仲間愛や、喜び方が可愛い件なのだが、(高校野球部の監督を務めるほどに)高屋敷氏が愛して止まない「野球」から来ているのではないか?と、最近思い始めている。微笑ましく、そして熱い友情描写も、バッテリーの関係を思えば合点が行く。

あしたのジョーのボクシングにしろ、本作のモータースポーツにしろ、リング/サーキットでは、選手は一人で戦わねばならないが、多くの人の思いを背負っているのも確か。
そこは忘れないでおきたいというのが、高屋敷氏のポリシーなのかもしれない。

あしたのジョー2脚本にて、丈の最後の試合に、アニメオリジナルで西をセコンドに付かせ、ドヤ街の子供達を出したのも、「支える/応援する者達」の大切さを表したいからではないだろうか。そこは、少し原作から逸脱してでも強調したいという、高屋敷氏の意志が感じられる。

  • 追記

今回からOP/EDが変わった。担当者は不明だが、シルエットや型抜き、美女の多用など、真下監督のセンス全開であり、後の監督作品に通じるものがある。

新OPと、Noir爆れつハンターOPとの比較。

f:id:makimogpfb:20181014130240j:image

新EDと、爆れつハンターOPとの比較。

f:id:makimogpfb:20181014130310j:image