カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫6話脚本:強大な力を持つ「物」

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ/演出は石山タカ明氏。そして脚本が高屋敷氏。

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  • 今回の話:

城で働く殆どの人が非番の日。あんみつ姫は、城下町に出かける皆を羨ましがり、自分も城を脱け出す。
そして城下町にて、あんみつ姫水戸黄門に出会う。印籠を拝借した彼女は町じゅうで騒動を起こすが、最後は武器密輸現場を黄門と共に押さえる。
黄門は印籠を見せ、悪人をひれ伏させ一件落着。
黄門一行は再び、旅に出るのだった。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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序盤の、非番で浮かれて出かけようとする(家臣の)たねすけと、サッカーをしたがるあんみつ姫との会話が軽妙で、かつボールを使ったコミュニケーションにもなっている。
DAYS(脚本)では、喋っている内容と異なる本音が、ボールを介して伝わる場面があり、共通するものがある。

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城下町に出かけた城の皆を、あんみつ姫は羨ましがる。そこで彼女は、門番のせんべいをサッカーに誘い、せんべいがボールを拾いに行った隙に城を脱け出す。
ルパン三世2nd(脚本)の不二子、元祖天才バカボン(演出/コンテ)のパパなどなど、咄嗟に悪知恵やブラフを使うキャラは、高屋敷氏担当作に数多い。

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城下町では、黄門が子供達を雇って意図的に騒動を起こし、自分が出て来て印籠を見せ、場を鎮めるという回りくどい知恵を働かせる。こちらも、なかなか頭を使っている。ベルサイユのばら(コンテ)のジャンヌやカイジ(脚本)など、凝った作戦を立てるキャラクターも、高屋敷氏の好みなのか、強調されている。

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高屋敷氏は、魂を持つような「物」を数多く描写するが、黄門の印籠もまた、絶大な威力を持つ「物」。印籠が重要アイテムとして活躍するのは、非常に高屋敷氏らしい。画像は今回と、MASTERキートンあしたのジョー2(脚本)との比較。どれも重要アイテム。

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黄門は、印籠を出して皆がひれ伏す事に快感を覚えており、喜ぶ様が可愛い。可愛い老人も、高屋敷氏は強調する。ベルサイユのばら(コンテ)、MASTERキートン(脚本)と比較。

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黄門から印籠を無理矢理拝借した、あんみつ姫は町じゅうで印籠を使って大喜びする。演出でも脚本でも、喜び方が可愛いのは、高屋敷氏の不思議な特徴。絵を管理できないはずの脚本作でも、この特徴は数多く確認できる。ほんの一例だが、DAYS・チエちゃん奮戦記(脚本)、ルパン三世2nd(コンテ/演出)と比較。

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あんみつ姫は更に騒動を大きくし、どさくさに紛れて腰元達からアイスを奪う。食いしん坊描写も、よく出る。ルパン三世3期(脚本)、ルパン三世2nd・元祖天才バカボン(コンテ/演出)と比較。

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そうこうするうち、武器密輸を行う悪者に拐われたカステラ先生(家庭教師)を、あんみつ姫が探す場面では、船が横切っていく。こういった船の横切りは、長年一緒に仕事した、出崎統氏がよく使うが、強い影響下にある高屋敷氏も、よく使う。脚本作でも出てくるのが、高屋敷氏の不思議な所。ルパン三世2nd(コンテ/演出)、F-エフ-・MASTERキートン(脚本)と比較。

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追いかけてくる城の人達と、あんみつ姫が(黄門が入ったままの)篭を蹴り合う場面では、あんみつ姫が板を上手く使う。こういった、ピタゴラスイッチ的なギミックを、高屋敷氏は結構出す。監督作の忍者マン一平(コンテと脚本も担当した回)にも、頭を使ったギミックが出てくる。

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敵対する藩と越後屋の武器密輸現場を押さえ、カステラ先生を救出した黄門・助さん格さん・あんみつ姫だが、肝心の印籠を出すタイミングが、助さん・格さんのボケ倒しのせいで中々決まらず。すると黄門は泣き出してしまう。大人や老人がガン泣きするのも、高屋敷氏の強い特徴の一つ。元祖天才バカボン(コンテ/演出)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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てんやわんやの騒動の中、黄門はやっと印籠を出し、悪者達や、周囲の人々はひれ伏す。カイジ2期(脚本)にて、水戸黄門を思わせる台詞まわしがあるほか、他の作品でも「ひかえろ」という言葉がよく出るので、高屋敷氏は水戸黄門が好きなのかもしれない。

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一件落着し、黄門、助さん、格さんは旅立つ。旅立ち+太陽は、高屋敷氏の作品世界では定番。太陽を重要なキャラクターとして扱っている。
家なき子空手バカ一代(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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  • まとめ

可愛い老人・強い力を持つ物(印籠)・太陽+旅立ちなど、高屋敷氏の好む要素が強く出ている。

また、同氏は数多くの作品で、モブに存在感を持たせるが、「城の人達の非番」というシチュエーション作りに、モブや脇役への愛情を感じる。

本作を見る前から、高屋敷氏は水戸黄門が好きなのでは?とうっすら思っていたのだが、今回、水戸黄門が直球で出て来て驚いている。当たらずとも遠からず…かもしれない。

咄嗟の悪知恵や、回りくどい知略など、頭を使った場面も見られ、こちらも高屋敷氏らしさが出ている。やはり、そういったキャラクターが好きなのではないかと思っている。

あと、じゃりン子チエの脚本でも顕著だった、複数プロットを動かして最後に合流させる脚本技術が光る。
同氏の脚本は、殆どの場合、密度が非常に濃く、色々なプロットを上手くさばく。
シリーズ構成作品ともなれば、シリーズの全体構成も、非常に計算高いものになっている(F-エフ-や、めぞん一刻最終シリーズ、カイジなど)。

本作の場合は、(殆どの場合)1話完結ものなので、話をギュッと圧縮する必要がある。そのための技術が遺憾なく発揮されており、やはり高屋敷氏の計算力の高さに感心させられる。

そして気になるのは、太陽+旅立ちのラスト。これを見るに、高屋敷氏的には、あしたのジョー2最終回(脚本)後、丈は旅立った…という解釈なのではないか?という思いを強くした。マイメロディ赤ずきん(脚本)でも、狼が旅に出たことが示唆されている。
他にも多数、旅立ちエンドがあり、丈もまた旅に出たのだ…という願いのようなものが感じられる(色々、解釈が分かれる問題ではあるが)。

コメディなのに、あしたのジョー2最終回(脚本)について考えさせられたのをはじめ、色々と高屋敷氏の好みや、脚本技術を感じられた回だった。