カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

宝島4話演出:夢あってこその人生

アニメ・宝島は、スティーブンスンの原作小説を、大幅に改変してアニメ化した作品。監督は出崎統氏。高屋敷英夫氏は、偶数回の演出を務める(表記はディレクター)。
今回の脚本は篠崎好氏で、コンテが出崎統氏、演出が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、宝島の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6

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  • 今回の話:

ビリー(フリント海賊団の元副船長)は、大事な箱の鍵をジムに託し病死する。箱には重要書類が入っていた。それを狙う海賊達は、ジム宅(宿屋兼酒場)を襲撃。だが、駆けつけた役人が彼等を退ける。
ビリーが遺した書類は、宝が眠る島の地図だった。これには、リブシー(医者兼地方判事)とトレローニ(村の富豪)も驚くのだった。

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開幕、月が出る。太陽や月の意味深な「間」は、とにかく多くの高屋敷氏担当作で出る。画像は、「不吉な月+暗雲」集。
空手バカ一代(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)、蒼天航路(脚本)と比較。

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海賊達がジムの家(宿屋兼酒場)を襲撃する場面では、ランプが揺れる。こういったランプ演出も、挙げればキリが無い程出てくる。蒼天航路カイジ2期・ルパン三世3期(脚本)と比較。時代を経るごとに、ランプが持つ意味が重くなっている。

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更にランプが割れ、火が出る。火に関しても、高屋敷氏は初期の作品から、よく出している。ど根性ガエル(演出)、蒼天航路・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。こちらも、後の脚本作の方が意味深度が増しているのが不思議なところ。

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海賊に挟みうちにされ、ジムは階段の手すりを滑り降りる。階段を使ったアクションは、監督作の忍者マン一平1話(脚本・コンテも担当)にも出てくる。年代的には宝島が先で、その経験を忍者マン一平に活かしたかもしれない。

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海賊の一人「暗闇のピュー」が、(お宝の)夢を追わずに「一生虫けらみてえな乞食暮らしをして、ラム酒をせびって歩きてえってんのかよ!おれは嫌だ!」と言うが、カイジ2期(シリーズ構成)において、カイジが、外国に逃げて、酒浸りで、虎の子の金を食い潰して生きるのは虚しい…と、遠藤を諭す場面の強調に重なってくる。

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駆けつけた役人達が海賊達を退けた後、ジムは、病死したビリー(フリント海賊団の元副船長)が大事にしていた貝殻と望遠鏡を、彼の手に持たせる。
手から手へ思いを伝える場面を、高屋敷氏は多くの作品で強調する。F-エフ-・ワンダービートSMASTERキートン花田少年史(脚本)と比較。

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そして、死したビリーが船に乗り、歌を歌いながら旅立つイメージが出るが、あしたのジョー2(脚本)における死者との対話や、F-エフ-(脚本)における、死の間際の精神世界に通じるものがある。

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その後、ジムから事情を聞きながら、リブシー(医者兼地方判事)がパイプをくゆらす。高屋敷氏は、喫煙場面をじっくり描写することが多い。F-エフ-・カイジMASTERキートン(脚本)と比較。

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フリント海賊団だの宝だの、指し示す具体的な物が無ければ「夢」に過ぎない…とリブシーが語るが、ジムは「夢じゃ…ないよ!」と、ビリーの遺した書類を見せる。状況も意味も大分違うが、カイジ2期(脚本)の、「ところがどっこい夢じゃありません!」の強調が思い出される。

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ビリーの書類は、宝が眠る島の地図だった。ちなみに高屋敷氏は、他の作品にもやたらと地図を出す。空手バカ一代(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、太陽の使者鉄人28号あしたのジョー2(脚本)と比較。

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宝の地図を見たトレローニ(村の富豪)は大はしゃぎ。可愛いおじさんも、よく出てくる。高屋敷氏は幼いキャラづけを得意とするが、それにしても幼い。
ルパン三世2nd(演出/コンテ)、グラゼニ・1980年版鉄腕アトム・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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ジムも、「宝島」に胸踊るが、トレローニに子供扱いされる。二人の大人+少年/青年の構図は、カイジ2期・F-エフ-(脚本)にも見られる。特にカイジ2期は、カイジ・坂崎・遠藤の3人で一攫千金を狙うので、比較すると面白い。

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夜遅いので、トレローニの家に泊まることになったジムは、宝島に思いを馳せるのだった。奇跡的な偶然だが、何やらカイジ2期・F-エフ-(脚本)と被るものがある。寝転がりながら考え事をする状況が同じだからだろうか?

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  • まとめ

ピューの言う「一生虫けらみてえな乞食暮らしをして、ラム酒をせびって歩きてえってんのかよ!おれは嫌だ!」と、カイジの言う「酒浸りで、虎の子の金を食い潰して…そんな半ボケの人生が関の山…そんな未来があんたの望みかよ!」が被ってくるのは興味深い。

この「被り」は、どちらも「自分自身の人生をどう生きるか」がテーマになっているからだと思う。高屋敷氏は、多くの作品で、このテーマを取り扱う(特にシリーズ構成作で強烈に出してくる)。
F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)の18話でも、大分直球で投げている。

船乗りとして、海の上で死にたい…と言っていたビリーは宿で病死し、(夢を追わずに)人にラム酒をせびるような生き方は嫌だ、と言っていたピューは、役人の馬に轢かれて死ぬ。どちらも海賊ではあるが、その死に様は悲しい。高屋敷氏は善悪の境をグレーにする事が多く、それが出ている感じがする。

あと、ビリーが大事にしていた物を、ジムがビリーの亡骸に手向ける場面も胸を打つ。心のこもった物を贈ったり、思いを込めた物を託したりする場面は、高屋敷氏の演出作/脚本作ともに多いが、本作での経験も大きいのではないだろうか。

そして、宝の地図を見て可愛くはしゃぐトレローニにも注目したい。高屋敷氏は、老若男女に「幼さ・可愛さ」を付加することが多いが、それが大いに発揮されている。コミカルではあるが、夢を見つけると人は生き生きする…という事も表れている。

カイジ2期(脚本)では、「欲に流れて…夢も追えないのか!自堕落な連中めっ…!」という、(原作通りの)カイジのモノローグが出るが、これも、前述の「夢なき人生は虚しい」を、原作の言葉を借りて主張しているのではないだろうか。

このように、原作つきでも(原作つきだからこそ)、アニメにおいて何を伝えるべきか・主張するべきかを決めるのが、高屋敷氏は非常に上手い(これも、シリーズ構成作で炸裂)。宝島の場合は演出だが、同氏が好む要素は、じわり伝わってくる。

高屋敷氏の場合、「自分の人生をどう生きるのか」「自分とは何か」というテーマを掲げることが多いが(特にシリーズ構成作)、本作においても、そういう「テーマの種」が早くも出始めている。その「種」がどうなって行くのかも、これから見ていきたい。