カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫22話脚本:魂が宿りし物の役割

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は立場良氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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  • 今回の話:

ひな祭りを前に、桃の花が散ったり、どこからともなく、お囃子が聞こえたりと怪奇現象が続く事態が発生。調べたところ、藏に打ち捨てられた200年前の雛人形の呪いということが判明する。
祈祷師は、供養の後に人形を燃やすことを進言するが、人形を可哀想に思ったあんみつ姫は、源内(発明家)に人形の修復を依頼。
人形が綺麗になると呪いが止まり、あんみつ姫は、人形を大事にすることを誓うのだった。

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冒頭、たんごの守としぶ茶(あんみつ姫の両親)が桃の花を愛でる場面があるが、めぞん一刻(脚本)では、時の移ろいを感じさせるものとして、桜がクローズアップされる。

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このような「花」の「活躍」は、高屋敷氏の担当作で多く確認できる。
同氏は、自然や物などに魂があるように描写する。

夜中にお囃子が聞こえるという怪奇現象の元を突き止めるため、誰が蔵を見に行くかをジャンケンで決める所は、色々な作品で出るジャンケンが想起される。
ど根性ガエル(演出)、監督作忍者マン一平カイジ(シリーズ構成・脚本)と比較。

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この他にも多数出てくる(オリジナル含む)ため、結構好んでいる勝負方法なのかもしれない。

蔵の鍵が不気味に崩れ落ちる場面があるが、物が壊れたり、動いたりして何かを知らせたり、状況を表したりする場面は多い。蒼天航路忍者戦士飛影コボちゃん(脚本)と比較。

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呪いが発生しているかどうかを祈祷師が調べる場面では、火の意味深なアップがある。これも挙げればキリが無いほど見られる特徴。F-エフ-・太陽の使者鉄人28号(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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今回は、打ち捨てられた雛人形が、(無関係な)城の皆を呪う話であるが、元祖天才バカボンの高屋敷氏演出/コンテ回にて、ぞんざいに捨てられたノコギリがパパを呪う話がある。
ここからも、万物に魂があると捉える、同氏のポリシーが窺える。

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城の面々を人形が呪う場面では、城の皆の日常が描写されており、モブへの愛情が感じられる。らんま(脚本)のアニメオリジナル場面でも、モブ達の会話が生き生きとしていた。

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そして月に不吉な暗雲がかかるが、これも多くの作品で見られる。
高屋敷氏は、月や太陽に大きな役割を持たせる傾向がある。
空手バカ一代(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)、陽だまりの樹(脚本)と比較。

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修復された人形が、あんみつ姫の夢に出てきて礼を言うのだが、「物」が喋れるなら何を言い、何を行うのかが、1980年版鉄腕アトム(脚本)でも描かれていた。

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鉄腕アトムの方は、機関車の自律AIが老人型ロボットのコアとして生き、少女を育てていた話(アニメオリジナル)。詳しくは下記参照:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2017/11/20/131616

呪いが消え、城の皆は雛祭りを祝う。皆で食べるご飯は美味しい…というメッセージも、多くの作品で見られる。
陽だまりの樹ワンダービートS(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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ワンダービートS(脚本)では、人類にとって、大切な人々と食事することが如何に大事かが描かれた。
詳しくは下記参照:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/10/10/191708

ラストではあんみつ姫が、これからも雛人形を大切にすることを誓う。
ルパン三世2nd(脚本)では、(盗んだ)コレクションを大事にするルパンが、しばしば描かれる。五ェ門が、ルパンのコレクションのことを「おぬしの恋人」と言うほど。

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  • まとめ

なんといっても、高屋敷氏のポリシー、「万物に魂」がダイレクトに出ている点が印象深い。元祖天才バカボン(演出/コンテ)の、ノコギリが人を呪う話は相当に怖かったが、今回は、それに比べればマイルド。
だがしかし、「物には魂があるのだから大切にしろ」というメッセージは、どちらも強い。

この、高屋敷氏の「万物に魂」というポリシーは、最初期である、ど根性ガエル空手バカ一代の演出でも見られ、相当に強い主張が見られる。今回は、夢の中で人形が喋れるが、大抵の場合、意味深な「間」を発生させることで、それを表現している。毎度不思議なことだが、それは(絵を管理できない)脚本作でも強く表れている。

このポリシーは、あしたのジョー2最終回(脚本)にて丈が葉子に託すグローブや、F-エフ-(シリーズ構成/全話脚本)最終回において、聖がタモツと軍馬に託すグローブにも大いに表れ、絶大な効果をもたらしている。
これらの場合は、所持者から魂をもたらされた「物」が、所持者にとって大事な人の手に渡るケースで、非常に胸を打つ。

F-エフ-最終回についてはこちら:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/12/16/135656

まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」(演出/コンテ)でも、原作通り、王子像が意思を持ち、ツバメ限定だがコミュニケーションを取れる。こちらも印象深い。

かなり初期から現在に至るまで、この「万物に魂」のポリシーがブレずに出ているのは、興味深いところ。
これが何故なのかは、外野が知ることは出来ないが、高屋敷氏の担当作を見る上で面白いし、時にはドラマを大きく盛り上げている。
原作つきでも、このポリシーを巧妙に入れ込んでいることが多く、アニメに深みを持たせており、場合によっては原作を超える程の作用をもたらすこともある。

高屋敷氏は、自身が野球部だったほか、高校野球部の監督をするほどの野球好き。
野球は道具を使うスポーツなので、このあたりから来ているポリシーなのかもしれない。

高屋敷氏の野球経験についてはこちら:

https://twitter.com/i/moments/1021405713623482369

今回は、一応ホラーコメディなのだが、いつしか高屋敷氏のポリシーが直球で投げられており、その主張の強さに驚かされた回だった。