カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫27話脚本:ブレないテーマ

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は立場良氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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  • 今回の話:

親が反対するもアメリカ留学を希望する、呉服問屋の息子・新の助のため、密かにアメリカの学校の入学案内を取り寄せたあんみつ姫だが、皆には、自身がアメリカに行きたがっていると誤解される。
そして彼女は、失言によってカステラ(家庭教師)を傷つけてしまう。

傷心のカステラは、源内(発明家)宅に転がり込み、帰国を決意。そしてカステラに惚れている源内も、彼女に同行することにする。

一方、早くアメリカに行きたがっていた新の助は貨物船に乗せてもらうが、その船は密輸船だった。あんみつ姫は、この真相を知るも、船員に捕まってしまう。

船には、カステラと源内も騙されて乗船しており、二人の活躍で、あんみつ姫と新の助は牢から救出される。また、この時点で、あんみつ姫とカステラは仲直りする。

そして、事情を知ったせんべい(城の門番)やたねすけ(家臣)の加勢もあり、あんみつ姫達は密輸業者達をこらしめる。

その後、だんごの守(あんみつ姫の父)は、海外を知るためとして、新の助に留学を命じ、彼の親も説き伏せる。

新の助を見送ったあんみつ姫は、自分も勉強すると言うが、城の皆は真面目に取り合わないのだった。

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アメリカ留学を希望する新の助のため、アメリカの学校の入学案内を密かに取り寄せて欲しいという、早苗(新の助の妹)の手紙をあんみつ姫が読むシーンで蝶が飛ぶが、高屋敷氏の担当作にて、意味深な蝶や蛾は結構出ている。あしたのジョー2・ワンナウツ(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。同氏と長年一緒に仕事した出崎統氏も、よく蝶を出すので、その影響かもしれない。

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また、手紙は、重要な役割を持つものとして数々の作品で強調されている。挙げればキリがないが、じゃりン子チエ(脚本)、家なき子(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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源内(発明家)が、船の予約を取り付けたジュリー(源内の飼い犬)に感謝し、抱きしめる場面があるが、ハグは多く出てくる。ど根性ガエル(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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あんみつ姫が港へ急ぐ場面で、出崎統氏がよく使う坂道遠近が出るのだが、何故か絵を管理できない脚本作でも、こういった坂道遠近が出現することがある。不思議ではあるが、実際出る。ロケーション設定が重なるからだろうか?F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、エースをねらえ!(演出)と比較。

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密かに貨物船に乗り込んだあんみつ姫が、船長達の(密輸に関する)会話を聞いてしまう場面が、宝島(演出)にて、ジムが元海賊達の悪巧みを聞いてしまう場面に重なる。

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これも、状況設定が似ているためと思われるが、シンクロ率が高い。実際今回は、宝島の演出経験が活かされている節がある。

そして船員が漫画を読む場面も、F-エフ-(脚本)にて軍馬が漫画を読む、アニメオリジナル場面に似てくる(年代は、あんみつ姫が先)。

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どちらも幼さが出ているわけだが、高屋敷氏はキャラクターの幼さを、多くの作品で表す。

船員達と、あんみつ姫達とのバトルでは、ジュリーが噛みつき攻撃をする。ど根性ガエルの演出経験からか、噛みつき攻撃もよく出るし、強調される。ど根性ガエル(演出)、蒼天航路・F-エフ-(脚本)と比較。

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密輸業者達をこらしめた、あんみつ姫達は喜び笑う。喜び方が可愛いのも特徴。忍者マン一平(監督)、太陽の使者鉄人28号カイジ(脚本)と比較。

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これも、絵を管理できない脚本作でもよく見られ、不思議なところ。

終盤、だんごの守の計らいで新の助はアメリカへ旅立つ。少年/青年の旅立ちは、高屋敷氏が強く描写するものの一つ。
F-エフ-(脚本)、宝島・家なき子(演出)と比較。

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ラスト、めでたしめでたしと思いきや、自分も勉強すると言い出すあんみつ姫に対し、皆がそれを真面目に取り合わないオチがつく。多段オチは、高屋敷氏のコメディ系脚本作で、よく使われる。

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  • まとめ

全体のコンセプトは、高屋敷氏が得意とする義理人情の話なのだが、上記のあらすじの通り、複数の並行エピソードが発生し、それが最後に合流するという、凝った構成になっている。この技術は、じゃりン子チエ(脚本)でよく使われており、高屋敷氏の脚本の長所の一つ。

船や港といった要素については、宝島の演出経験が、ふんだんに活かされている。
もともと、出崎兄弟の流れを汲み、高屋敷氏も波止場や船をよく出す傾向がある。
同氏が、自身の経験を、その都度惜しみ無く出しているのが窺える。

また、邪な事をする船といえばカイジ(脚本・シリーズ構成)のエスポワールも思い出される。エスポワールも、(原作通りだが)人身売買まがいの事が行われていて、共通するものがある。これも、高屋敷氏が積み上げた様々な経験を使っていることが見て取れる。

あと、何としてもアメリカに留学したいという新の助の意志も、強く描写されている。ここは、「自分で決めた道を行け」という、高屋敷氏が扱うテーマの一つが表れている。

コメディであってもテーマはブレないあたり、同氏の強い意志を感じる回だった。