カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

宝島14話演出:太陽が見つめる生死

アニメ・宝島は、スティーブンスンの原作小説を、大幅に改変してアニメ化した作品。監督は出崎統氏。高屋敷英夫氏は、偶数回の演出を務める(表記はディレクター)。
今回の脚本は篠崎好氏で、コンテが出崎統監督、演出が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、宝島の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6

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  • 今回の話:

宝島にて、シルバー派とスモレット船長派の戦いは続き、シルバーは、スモレット船長派が占拠する砦を攻略すべく、次から次へと手を打ってくる。そして遂にスモレット船長が負傷。おまけにシルバー派は、砦の井戸を使い物にならなくする。スモレット船長派はピンチに追い込まれるのだった。

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スモレット船長派が立て籠る砦の小屋にて、グレー(ナイフの達人)はナイフ投げの練習をする。
ベルサイユのばら(コンテ)にて、オルレアン公が上手いナイフさばきを見せる場面と重なってくる。

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高屋敷氏は、割とグレーを気に入っているのかもしれない。実際、見せ場も多い。

そしてジムは、眠気を吹っ飛ばすために水をかぶり、元気なふりをして活発に動く。
ど根性ガエル(演出)に、ひろしが真冬に(度胸試しで)水をかぶる場面が思い出される。また、動作づけが幼い(高屋敷氏の特徴)のも共通。

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レッドルース(船主・トレローニの執事。シルバー派に撃たれ死亡)の墓が視界に入ったジムは、墓を見つめる。墓にはレッドルースが大事にしていた鈴がかけられており、それが鳴る。墓や供え物の意味深な場面は結構出る。めぞん一刻ルパン三世3期(脚本)、忍者マン一平(監督)と比較。

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そんな中、シルバー(元フリント海賊団幹部)がスモレット船長との交渉を申し出てくる。
彼は、おもむろにサンドイッチを食べ始める。飯テロは高屋敷氏の定番の特徴。カイジ2期・MASTERキートン(脚本)と比較。

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シルバーは、砦の裏の崖に大砲を設置したので、吹き飛ばされたくなかったら宝の地図を渡せと迫る。
交渉に乗るかどうかの緊迫した場面で、ギラギラとした日が差すのは、カイジ2期(脚本)でも見られた。

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飄々とした表情から一変、シルバーは凄み、スモレット船長達に決断を促す。キャラクターの豹変は、数多くの高屋敷氏担当作で強く描かれる。カイジ2期・F-エフ-・MASTERキートン(脚本)と比較。

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結局、シルバーとスモレット船長の交渉は決裂、夕刻に砲撃が始まることに。スモレット船長はジムに、ベン・ガン(島に住み着いている、元海賊)と接触し、新たな砦となりそうな場所を教えて貰うよう頼む。両陣営とも、結構頭を使う様が描かれる。他作品でも、高屋敷氏は知略を好む傾向がある。

ジムを砦の外に出すため、グレーが囮となる。太陽をキャラや物等が横切る絵面は、よく出る。蒼天航路(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。つくづく、(絵に関与できない)脚本作でも絵面が似るのが謎。

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砦を出て、ジャングルを駆け抜けるジムは赤い花を蹴散らしていく。意味深な花の描写は他作品でも見受けられる。
F-エフ-(脚本)、空手バカ一代(演出)、らんま(脚本)と比較。

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ジムを砦の外へ出す作戦は成功したものの、敵の銃撃でジョイス(スモレット船長派の一員)が死んでしまう。そして、それを見守るような太陽が映る。全てを見ているかのような太陽は頻出。あしたのジョー2・F-エフ-(脚本)と比較。今回もF-エフ-も、太陽が死者を見つめる。

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ベン・ガンを探すジムは、滝のある場所に出る。出崎統監督も、高屋敷氏も、滝をよく出す。空手バカ一代(演出)、忍者マン一平(監督)、カイジ2期(シリーズ構成)と比較。

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夕刻となり、夕陽が映る。夕陽演出は、出崎派(高屋敷氏含む)が多用する。高屋敷氏の場合、太陽が意思を持つかのような描写が特徴。F-エフ-・あしたのジョー2・蒼天航路(脚本)、エースをねらえ!(演出)と比較。

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ベン・ガンは見つからなかったものの、ジムはシルバー達が設置した、砦の裏側の砲台を発見。砲台は偽物であり、ジムはそれを撤去し喜ぶ。ここも喜び方が幼く、幼さの描写が上手い、高屋敷氏の特徴が出ている。ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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砦に戻るため塀を乗り越えたジムは、着地に失敗して足を痛がる。ここもコミカルで幼い。コミカルな場面を差し挟むのは脚本作でも変わらない。F-エフ-(脚本)のアニメオリジナル場面と比較。

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シルバー達は次の手として、音を出してスモレット船長達の注意をそらしている間に、砦の井戸を使い物にならなくする。そして、スモレット船長は負傷。
一方、作戦を成功させたシルバーは高笑い。敵の喜び方も、どこか朗らかな場合が多い。忍者戦士飛影・らんま(脚本)と比較。

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  • まとめ

極悪ながら、次から次へと凝った作戦を打ち出してくるシルバーに感心させられる。高屋敷氏が頭を働かせる戦法を好むことは、演出作でも脚本作でも感じられる。

冒頭では、仲間の何人かが熱病にかかっている事に頭を悩ませるシルバーが描かれ、両陣営の苦しさが等しく表現されている。
高屋敷氏は、善悪のラインを明確に引かない事が多い。カイジ(シリーズ構成・脚本)でも、主人公側だけでなく、敵側の苦労や矜持も強調している。

あと、シルバーの豹変も印象的。本作も含めた、様々な演出経験を活かし、高屋敷氏は脚本・シリーズ構成作でも、豹変するキャラを前面に押し出している。シリーズ構成作では、成長による豹変も、緻密な構成計算によって見事に描かれる。

また、多くの作品で出現する、「あらゆる生死を見ている太陽」も、今回確認された。こういった描写をするために、高屋敷氏は太陽の「間」を作る。(絵に関与できない)脚本作でも、この「間」が発生しているのが不思議だが、実際、完成映像に出ている。

そして、シリアスな状況でも、キャラクターのコミカルさや幼さを出す事を忘れない姿勢も出ている。ルパン三世3期6話(脚本)のサブタイトルに、山田洋次監督作品のもじりを入れたり*1することから考えるに、高屋敷氏はコメディが好きなのではないだろうか。

この、幼さや可愛さ、コミカルさを出す姿勢は、ともすれば重くシリアスになりがちな出崎統監督作品にてオアシス的効果を出しており、親しみやすい側面を作っている。この点は、高屋敷氏の大きな強み、かつ個性だと思う。

高屋敷氏の特徴や個性は、出崎統監督とは真逆な側面もあり、それを受けとめている出崎統監督の、多様性を重んじる姿勢も感じられる。
ただ、フリーの脚本家に転身しても、高屋敷氏の個性は強く、もともと我が強いのでは?とも思っている。

こういった高屋敷氏の強烈な個性は、演出作・脚本作とも、不思議と完成映像に表れているわけだが、(本作含めた)経験の積み重ねで、より強固になっていった事が窺える。

*1:高屋敷氏脚本作・ルパン三世3期6話サブタイトル「ルパンが戦車でやってきた」は、山田洋次監督作「馬鹿が戦車でやって来る」が元ネタ