カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫33話脚本:カイジに繋がるシビアさ

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は中村隆太郎氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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  • 今回の話:

あんみつ姫達の藩・甘辛藩が、甘辛カーグランプリを開催する。このレースは相手を妨害することも可能な過酷なもの。

あんみつ姫も出場するが、いつもイヤミな苦味藩の姫・にがり姫から、あの手この手の妨害を受ける。あんみつ姫は、ナビの源内(発明家)が車に取り付けた数々のギミックで、これに対抗し、互角の勝負を繰り広げる。

その最中、にがり姫の車が転落。心配したあんみつ姫が彼女を助けるが、にがり姫はあんみつ姫を出し抜き、恩を仇で返す。

あんみつ姫と源内は、車のジェットエンジンを発動させ、にがり姫に肉薄。にがり姫のナビ・あつあげのすけ(にがり姫の弟)が投げた爆弾の爆風に乗り、あんみつ姫は見事にがり姫を抜き優勝するのだった。

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甘辛カーグランプリの実況を、たねすけ(家臣)が務めるが、なかなかの名実況。立て板に水のような早口長台詞の実況は、高屋敷氏の特徴の一つ。忍者マン一平(監督)、1980年版鉄腕アトム・らんま(脚本)と比較。どれも名実況。ルーツは、脚本デビュー作(無記名)の、あしたのジョー1の実況と思われる。

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スタート前、あんみつ姫達は、にがり姫(ライバル藩・苦味藩の姫)にバカにされる。
それを聞き、あまぐりの助(小姓)は「性格がそのまんま顔に出てる奴だな」と言う。性格が顔に出てる…的な台詞は、忍者戦士飛影(脚本)で、よく出ていた。あんみつ姫忍者戦士飛影も、案納正美監督であり、色々縁が感じられる。

レースが始まると、フランス代表のエスカルゴが、アメリカ代表のジェリー・ビーンズをナンパする。ジェリーは「ベルサイユ宮殿買ってくれるならね」と返す。これは、高屋敷氏がベルサイユのばらにコンテで参加した故の台詞だと思う。あと小ネタだが、ジェリー・ビーンズという名前は、本作の食べ物しばり+高屋敷氏が演出参加した、宝島のビリー・ボーンズから来ていると思う。

にがり姫が標識の向きや道を変えたせいで、あんみつ姫は雪山に迷い込んでしまうが、ナビの源内(発明家)が車に仕込んでいたソリ機能を使って雪山を抜ける。
雪山は、色々な作品で出てくる。マッドハウス版XMEN(脚本)、忍者マン一平(監督)、家なき子(演出)と比較。オリジナルでも結構出ることから考えると、高屋敷氏の好む状況なのかもしれない。

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にがり姫の妨害は続き、今度は岩石を落としてコースを塞き止める。これに対抗すべく、あんみつ姫は内蔵ドリルを使うも、途中でロシア代表のピロシキスキーに妨害される。
あんみつ姫ピロシキスキーはいがみ合うも、ジェリーが「おやめよ、小さい子に」とピロシキスキーを制止する。F-エフ-(脚本)でも、「相手はまだ子供よ」というアニメオリジナル台詞があり、繋がりが感じられる。

そうこうするうち、戦車に乗るアラブ代表・ミスターXが主砲を発射し、この状況を打開。他の面々も、これに便乗する。
忍者マン一平(監督)やルパン三世3期(脚本)に戦車が出てくることから考えると、ここも高屋敷氏の好みが窺える。

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ルーツは、同氏が好きらしき山田洋次監督の映画、「馬鹿が戦車でやって来る」と考えられる。

にがり姫は慢心し、ナビのあつあげのすけ(にがり姫の弟)と串焼きを食べる。飯テロは、高屋敷氏の大きな特徴。カイジ2期・コボちゃんグラゼニ(脚本)と比較。

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岩石トラップを突破されたことに気付いたにがり姫は、次なる手として、落とし穴作戦を展開。落とし穴作戦は、ど根性ガエル(演出)でも見られた。

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源内が内蔵していたメカのおかげで落とし穴から這い上がったあんみつ姫に対し、にがり姫は、ジャングル内で木を倒す妨害をする。あんみつ姫は、それに回転ノコギリで対抗。回転ノコギリは、他作品でも結構登場している。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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このバトルの中、前方不注意のため、にがり姫の車は崖から転落。心配したあんみつ姫は、勝負を度外視して、にがり姫を助け、おまけにワニも撃退する。
ワニが出るのは、まんが世界昔ばなし「さるのきも」(演出/コンテ)のワニから来ているのではないだろうか。

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あんみつ姫の心優しさに、しおらしくなったと思いきや、にがり姫はあんみつ姫を出し抜いてレースに復帰。しかも、あんみつ姫の車を壊す。
カイジ(脚本)でも、根が心優しいカイジが仲間に裏切られるのを強調している。

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怒るあんみつ姫だが、車は破損。源内は、奥の手だとして、中に隠していたジェットエンジン仕様の車を披露。これに乗ったあんみつ姫と源内は、にがり姫に肉薄。ただし、ジェットエンジンは3分しかもたない仕様。制限時間ギリギリのところで、あつあげのすけの投げた爆弾の爆風に乗り、ついにあんみつ姫がにがり姫を抜いてゴールインする。
空中オーバーテイクは、F-エフ-(脚本)でも出てくる(アニメオリジナル要素あり)。

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機体をジャンプさせて、かつ着地を成功させる展開は、様々な作品に出ており、高屋敷氏の好みが見られる。

見事優勝したあんみつ姫と源内は抱き合い、だんごの守・しぶ茶(あんみつ姫の両親)も抱き合う。ハグは色々な作品に出てくる。F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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一方、にがり姫と、彼女の父で苦味藩の藩主・苦味涸らしの守は、興奮した観客の投げた物にぶつかり、痛い目を見るのだった。「物」による天罰は、「意思を持つような物」を出す傾向がある高屋敷氏が前面に出してくる。F-エフ-(脚本)では画鋲、1980年版鉄腕アトム(脚本)では(原作通りだが)ロボット、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ではノコギリが(結果的に)罰を下している。

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  • まとめ

色々と、高屋敷氏が(当時の)経験をフル稼働させている。また、レースものであるF-エフ-(同氏シリーズ構成・全話脚本)の予行演習のような雰囲気もある(あんみつ姫は1986~87年、F-エフ-は1988年)。

高屋敷氏の特徴の一つに、「善悪のラインを明確に引かない」があり、今回は、それが色濃く出ている。
ルール無用・妨害ありのレースなのだから、ありとあらゆる卑怯な手段を使うのは当然であり、憎たらしくはあるが、にがり姫の行いは、咎められるものではない。

対して、あんみつ姫がギミックで対抗するのは、いかにも高屋敷氏らしい。演出作・脚本作ともに、知略(悪知恵やイカサマ含む)やギミックで対抗する主人公は多いし、強調される(カイジ含む)。

一旦しおらしい振りをして、あんみつ姫を出し抜き、恩を仇で返したにがり姫に対し、「なんて子だろう!」とは言うものの、あんみつ姫は、そんなにショックを受けていない。彼女は彼女なりに、このレースの仕組みを理解しているからだろう。

そういった「勝負のシビアさ」は、カイジでも強く打ち出されており、敵のイカサマに気付いても、カイジはそれをわめきたてる行動には出ず、(原作通りだが)知略やギミックで対抗している。

そうは言っても、恩を仇で返す行為は人としてどうかという事で、にがり姫は観客の投げた物にぶつかる。「人が許しても、天は許さない」といった所だろうか。
前述の通り、「物」が罰を下すところも、いかにも高屋敷氏らしい。

あと、高屋敷氏の脚本は、複雑で入り組んだ構成が多いわけだが、今回もそれが表れており、あらすじを簡潔には書けないほど。また、にがり姫が改心するかと思いきや、恩を仇で返したり、クライマックスで、ジェットエンジンに制限時間を設けて緊張感を出したりする展開は、一捻りも二捻りもしてあって感心させられる。

キッズ向けである本作ではあるが、勝負の世界のシビアさは、アカギ・カイジ(両作とも高屋敷氏シリーズ構成・脚本)に繋がるものがあり、カイジが好きな私としても、面白い回だった。