カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

宝島20話演出:約束を守り通す「義」

アニメ・宝島は、スティーブンスンの原作小説を、大幅に改変してアニメ化した作品。監督は出崎統氏。高屋敷英夫氏は、偶数回の演出を務める(表記はディレクター)。
今回の脚本は山崎晴哉氏で、コンテが今切洗氏(誰かの変名)、演出が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、宝島の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6

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  • 今回の話:

捕えたジムを殺さない決定をしたシルバー(元海賊)に対し、配下の一人・ジョージが反乱を起こすが、圧倒的なシルバーのカリスマ性に押され屈服。
シルバーは、熱病に侵された部下をリブシー(正規船長・スモレット派の医者)に診てもらった礼として、スモレット達の武器を返し、宝探しの競争を提案。ただし、ジムはシルバー達の人質になることに。

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部下の一人・ジョージの反乱を受け、シルバーは磔にされる。そして、いつしか天気は雷雨になる。ドラマチックな雨の描写は、高屋敷氏の担当作に多く出る。1980年版鉄腕アトム(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、ワンナウツ・F-エフ-(脚本)と比較。

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シルバーは火あぶりにされそうになるが、彼の説く理論やカリスマ性の前に、ジョージ達は圧倒される。
シルバーの目力に負けたパピー(見張り係)は、縄をほどけというシルバーの命に従う。他作品でも、キャラクターの圧倒的目力は印象深い。ベルサイユのばら(コンテ)、カイジ2期・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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シルバーの縄をほどきに行くパピーが水面に映り、水面に波紋が広がる。
状況や心情と連動する水面描写は、しばしば見られる。グラゼニ・F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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シルバーの迫力の前に、周囲はシルバー支持にまわる。カイジ2期(脚本)にて、カイジが持ち前のカリスマ性を発揮してギャラリーを味方につける場面や、はじめの一歩3期(脚本)で、観客の応援に後押しされる一歩に重なるものがある。

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形勢逆転で、ジョージはシルバーを恐れる。
朝日を背負ったシルバーと、その影となるジョージが対になっている。このような光と影のコントラストは、カイジ2期(脚本)やF-エフ-(脚本)にも見られる。

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反乱というものは、しっかりとした計画と展望が必要だと、シルバーはジョージに言う。
高屋敷氏は、何をするにも綿密な計画を立てるキャラを好む傾向があり、ここは、そこはかとなく同氏の好みを感じる。

晴れてリーダーに返り咲いたシルバーは、ジム(現在、シルバー達に捕らわれている)を誘ってコーヒーを飲む。
コーヒーは、コミュニケーションツールとして扱われる場合が多い。
空手バカ一代(演出/コンテ)、あしたのジョー2・F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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熱病にかかったシルバーの部下をリブシー(正規船長・スモレット派の医者)に診てもらうため、ジムは使いを買って出る。
ジムがそのまま帰って来なければ、再び反乱を起こされるリスクがあるが、シルバーはジムを信じ、彼と男の約束をする。男の約束は、色々な作品で強く描写される。F-エフ-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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シルバー達により、洞窟に押し込められているスモレット船長達のもとへ行ったジムは、シルバー達に全面降伏してしまったのかと、トレローニ(船のオーナー)に問い詰め、彼の指を噛む。噛みつきは、ど根性ガエル(演出)でよく出ていた。
また、幼くコミカルな描写は高屋敷氏の十八番。F-エフ-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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ジムは事情を説明し、リブシーは診察に行く事を了承。
ジムは、シルバーとの約束を守ると主張し、グレー(ナイフの達人)は、ジムとシルバーが、男の約束をした事を察してくれる。
理解のある渋い年上男性は、様々な作品で強調される。F-エフ-・アカギ・じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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スモレット船長は、ジムが同志である事を誇りに思う…と、ジムを送り出す。
F-エフ-(脚本)にて、己自身を超えた軍馬(主人公)に満足する聖(軍馬のライバル)や、エースをねらえ!(演出)で、ひろみ(主人公)の勝利を称える麗香(ひろみの先輩)と重なっていく。

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一方パピーは、ジムが戻って来るかどうか、花占いをする。
花占いは、コボちゃん(脚本)にも出てくる。宝島の演出経験を、高屋敷氏が大切にしていることが感じられる。

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リブシーが病人を診ている間に、シルバーはコーヒーを入れる。今回のポットをはじめ、状況と連動する「物」の意味深描写は沢山出てくる。めぞん一刻あんみつ姫・F-エフ-・マッドハウス版XMEN(脚本)と比較。

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診察を終えたリブシーは、ジムを連れて帰ろうとするが、シルバーはそれを制止し、ジムはまだ、シルバー側の人質だと宣言する。
「手」によるコミュニケーションは、高屋敷氏の大きな特徴の一つ。F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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ジムを人質にする代わりに、シルバーはリブシーに武器を返し、お互いに宝探しの競争をしようと提案。リブシーは、必ずジムを助けに行くと言い、一旦シルバーの提案を飲む。こうして両派は、それぞれ持っている手がかりを元に、宝探しに出発する。

シルバー側の宝探しに、人質として同行するジムは、決意に満ちた顔になる。普段/今までと打って変わった真剣な顔になるのは、特にシリーズ構成作品で劇的に描かれる。F-エフ-・カイジ2期・グラゼニ(いずれもシリーズ構成/脚本)と比較。

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  • まとめ

シルバーのカリスマ性については、前述の通り、カイジ(シリーズ構成/脚本)のカイジが人に愛される力を持っていることに繋がるものがある。
高屋敷氏の特徴として、優秀モブや仲間が主人公を支えるというものがあるが、それの一環と考えられる。

興味深いのは、色々な局面で、コミュニケーションツールとして出るコーヒー。特に、あしたのジョー2(脚本)では、「本物のコーヒー」という台詞が、「本物の友情」の暗喩になっている。
高屋敷氏の大きな特徴である飯テロといい、同氏の飲食物へのこだわりは並々ならぬものがある。

そして、ジムの成長が目立って来たことにも注目したい。特にシリーズ構成作にて、高屋敷氏はキャラクターの成長を見事に描ききるが、家なき子や本作の演出経験が大いに活きていると言える。本作では、仕草などの芝居付けにより、キャラクターの成長過程を見せる上手さが光る。

あと、反乱というものは、しっかりとした計画や展望が必要…というシルバーの言葉は、(特に脚本作にて)綿密な計画やギミックを好み、シリーズ構成では驚くほどに計算高い、高屋敷氏の性質の片鱗が見え隠れし、面白いところ。

シルバーは、自身の持つカリスマ性と、しっかりとした理論で、絶体絶命のピンチを切り抜けるわけであるが、ここも、どんなに困難な状況でも諦めずに「理」で大逆転するカイジに継がれている。とにもかくにも高屋敷氏は、そういった人物を魅力的に描くのに長けている。

今回は、「男と男の約束」についてもスポットが当たっており、義理や仁義の大切さも描かれている。
石田との約束を忘れないなど、カイジの義理堅さが強調されていた事を思うと、こちらも感慨深い。

こう見ていくと、魅力ある人物とは、不屈の精神を持ち、「義」と「理」を併せ持つものであるという、高屋敷氏のポリシーに気づかされる。
シルバーが「理」を通し、ジムが「義」を守ったことは、それぞれの魅力に繋がっており、同氏の「キャラクターの魅力づけ」の巧みさを感じる。

また、高屋敷氏の特徴の一つ、「善悪の区別を明確にしない」も、より複雑さを増して表現されていて、もはや善悪どころではない境地に突入している。
演出作でも脚本作でも、入り組んだコンセプトを打ち出す同氏の個性は、やはり引き込まれものがあると感じた回だった。