カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫48話脚本:真に恐ろしいもの

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は立場良氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。
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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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  • 今回の話:

岬にある廃屋から、夜な夜な女の声がする…という事象が発生する。

声の主は、100年以上前、船乗りの恋人を失ったビヤホールのマダムではないか…ということで、あんみつ姫達は調査に向かう。

あんみつ姫達が廃屋(ビヤホール跡)に入ると、(ポルターガイスト現象に阻まれたものの)複数の白骨死体と、マダムの日記を発見する。

日記によれば、海賊に店を襲撃されて、マダムは地下に閉じ込められ、海賊は海賊で、宝を巡って仲間割れして全滅したという。

そして、(恋人が眠っている)海に遺体を流してほしい…というマダムの遺言に、あんみつ姫達が従おうとすると、マダムの恋人が乗っていた船が出現し、彼女を回収する。すると、廃屋のビヤホールが崩壊・消滅。

後に、あんみつ姫達はビヤホール跡地を公園にし、慰霊碑を建てる。すると、縁結びのスポットとして民に愛されるようになるのだった。

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開幕、月に暗雲がたれこめる。月や太陽に重要な役割を課すのは、高屋敷氏の定番の特徴。画像は月+暗雲集。
陽だまりの樹(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、空手バカ一代(演出)、F-エフ-・蒼天航路(脚本)と比較。

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城の皆が、夜に何をしているかが描かれる場面では、せんべい(門番)がラーメンを食べている。飯テロもまた、高屋敷氏の担当作にキリが無いほど出てくる。
ラーメンつながりで、F-エフ-(脚本)と比較。

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一方、だんごの守・しぶ茶(あんみつ姫の両親)、あべかわ(家老)、おはぎの局(女中頭)は麻雀をしている。前の脚本回といい、コボちゃん(脚本)、麻雀もののアカギ(脚本・シリーズ構成)といい、高屋敷氏は麻雀に縁がある。好きなのかもしれない(ただ、アカギの直接脚本回は少ない)?

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マダムが営んでいたビヤホールについて、あべかわが説明する場面でビヤホールの様子が描写される。ビールテロも頻出。グラゼニMASTERキートンカイジ2期(脚本)と比較。

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そもそも、ビヤホールという設定自体、なんとも高屋敷氏らしい。しかも、店名は「つばめ亭」。まんが世界昔ばなしで同氏が演出/コンテを担当した「幸福の王子」で(原作通りに)死んでしまったツバメから取っているのではないだろうか。

そして、マダムの恋人が、男前の船乗りというのも、宝島*1最終回(高屋敷氏演出)に登場する、男前の船乗りに成長したジムが思い出される。

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廃屋のビヤホールあんみつ姫達が着くと、雷が鳴る。雷もまた、「お天道様」を尊重している感のある高屋敷氏は重用する。宝島(演出)、アカギ・花田少年史(脚本)と比較。他も多数。

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あんみつ姫達が廃屋の中に入ると、ランプが点灯して割れる。
ランプは数えきれない程登場するほか、状況や心情に連動してランプが点灯・消灯する表現も多く見られる。グラゼニRIDEBACKめぞん一刻(脚本)と比較。

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廃屋の地下室には海賊達の白骨死体があり、動き出してあんみつ姫達とバトルに。
この要素も、海賊が登場する宝島(演出)を思わせる。

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そして、マダムの遺体から日記が落ちる。日記や本、ノートなどの紙媒体が意思を持つような描写も多い。MASTERキートン(脚本)、忍者マン一平(監督)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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日記から、海賊達が仲間割れで全滅したことが判明するわけであるが、宝島(高屋敷氏演出参加)でも、海賊達が仲間割れして多数死んでいる。

ちなみに、たねすけ(家臣)が怖がって、廃屋に入るのを嫌がり「冗談ポイ」というが、同じフレーズがルパン三世2nd(脚本)とF-エフ-(脚本)に出て来ている。

あんみつ姫達がマダムの遺体を、彼女の遺言通りに海に流そうとすると、(マダムの恋人の魂が乗った)幽霊船が出現する。ここで、雲の隙間から光が射し込む。こちらも、色々な作品で出現する状況。宝島(演出)、F-エフ-・二舎六房の七人(脚本)と比較。

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幽霊船は、宝島(演出)でも登場。とにかく今回、宝島ネタが多い。

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マダムの遺体と魂が幽霊船に回収されると、廃屋が崩壊・消滅する。
生きているような建物といえば、めぞん一刻(脚本)の一刻館、はだしのゲン2(脚本)の原爆ドームなどが印象に残る。

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後日談開幕で、全てを見守るものとしての太陽が「登場」する。宝島(演出)、F-エフ-・蒼天航路(脚本)と比較。

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あんみつ姫達は、廃屋跡を公園にして、慰霊碑を建てる。こちらも、公園や慰霊碑に魂が込もっている。めぞん一刻(脚本)、忍者マン一平(監督)と比較。

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  • まとめ

とにもかくにも宝島(高屋敷氏演出参加)ネタの宝庫。宝島を見ておいてよかったと思う。こんなに沢山出てくるということは、高屋敷氏にとって宝島の経験は非常に大きかったことが窺える。

マダムが死んだ恋人を想い続け、ついには独りになってしまったというくだりは、「孤独は万病のもと」というメッセージを、あらゆる作品に込めている高屋敷氏らしい。

同氏が描く「孤独」には、「救済」ルートと「救済失敗」ルートがある。原作付きにしろ、オリジナルにしろ、孤独は恐ろしいものであるという事が強く主張されている。

今回はホラー話なのだが、「真に恐ろしいのは孤独である」という裏テーマがあるのではないだろうか。

こういった、高屋敷氏の「孤独」にまつわる要素のルーツなどは不明。ただ、初期演出の、ど根性ガエルから見受けられるので、同氏が最初から持っている信条と思われる。

もしかしたら、同氏が(高校の野球部の監督をする程)愛する野球から来ているのかもしれない。当たり前だが、野球は一人では出来ないスポーツなのだから。

あと、驚いたのが「生きているような建物」が、こうもわかりやすく出てきた点。やはり、めぞん一刻最終回*2(脚本)の、一刻館が生きているような描写は、高屋敷氏の並々ならぬこだわりがあったのだと確信できる。

あんみつ姫における高屋敷氏の脚本作は、今回が最後となる。1話完結方式で、各スタッフがかなり自由にやっている様子の本作は、高屋敷氏の好みや特徴が直球で出ており、収穫が多かった。

*1:当ブログの、宝島に関する記事一覧: http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6

*2:当ブログの、めぞん一刻最終回についての記事: http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2017/08/07/133347