カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

おにいさまへ…17話脚本:メンタルとフィジカル

アニメ・おにいさまへ…は、池田理代子氏の漫画をアニメ化した作品で、華やかな女学園を舞台に様々な人間模様が描かれる。
監督は出崎統氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成(金春氏と共同)や脚本を務める。
今回のコンテ/演出は鈴木卓夫氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、おにいさまへ…に関する記事一覧(本記事含む):

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%8A%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%BE%E3%81%B8%E2%80%A6

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  • 今回の話:

薫(体育会系女子。病を抱える)に恋するマリ子(奈々子の級友で、社交クラブ・ソロリティのメンバー)を見つつ、奈々子は、れい(謎めいた上級生)に対する想いに徐々に向き合う。
一方、蕗子(ソロリティ会長) は奈々子を呼び出し、理不尽な事を言い出す。

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バスケの練習試合中に倒れた薫(体育会系女子。病を抱える)の退院を奈々子とマリ子(奈々子の級友で、社交クラブ・ソロリティのメンバー)が祝う。薫に「マリ子さん」と呼ばれたマリ子は、喜びを爆発させる(アニメオリジナル)。「笑顔」を、高屋敷氏は重要視する。DAYS・グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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奈々子と智子(奈々子の幼馴染)は、マリ子の薫に対する真っ直ぐな想いについて、夕暮れの中話す(アニメオリジナル)。
情感ある夕暮れの場面は多い。宝島(演出)、じゃりン子チエグラゼニ(脚本)と比較。

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奈々子は、薫に恋するマリ子を微笑ましく思う一方、自分の、れい(謎めいた上級生)に対する想いについて考え込み、れいの煙草の吸殻に火をつけてみる(アニメオリジナル)。
火の意味深アップは、数々の作品に見られる。宝島(演出)、カイジ2期・F-エフ-(脚本)と比較。

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翌朝、れいが歯を磨く場面があるのだが(アニメオリジナル)、高屋敷氏の癖なのか、似た状況が他の作品にも出る。グラゼニ・1980年版鉄腕アトム忍者戦士飛影(脚本)と比較。忍者戦士飛影はオリジナル作品であり、残りも原作に無い場面。

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その後、蕗子(ソロリティ会長。姓が異なるが、れいの姉)の自家用車のサイドミラーに、れいが映る。
状況や真実を映すものとして、鏡は頻出。F-エフ-・めぞん一刻あしたのジョー2(脚本)と比較。

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蕗子は自家用車にれいを乗せ、(倒れた薫の代わりに、れいが出た)バスケの試合の話をし、手を握る(アニメオリジナル)。手と手のコミュニケーションは、実に多く出てくる。F-エフ-・MASTERキートンあしたのジョー2・グラゼニ(脚本)と比較。

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試合に出て楽しかったか?と蕗子はれいに問い、れいがそれを肯定すると、蕗子はれいの手を握る力を強め、もう一度同じ質問をする。れいが、「仕方なく試合に出た」と答え直すと、蕗子は満足する。
前述の通り、「手」による感情表現が強く出ている。

学校に着き、蕗子から解放されたれいは、(過剰に依存している)薬を飲もうとするが、親友の薫に制止される。
れいは、薬を再度飲むと見せかけた後、それを捨てる(アニメオリジナル)。
ここも「手」が語る。F-エフ-・MASTERキートンカイジめぞん一刻(脚本)と比較。

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れいは薫に、試合に出て楽しかったと、晴れやかに本音を語り、薫は「よかったな」と、それを喜ぶ。
ここで鳥が飛ぶ。出崎統監督は鳥演出を好むが、高屋敷氏も好む。家なき子(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。

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昼休み、中庭でフルートを吹くれいを見かけた奈々子は、れいの胸ポケットの白いバラに目を向ける(アニメオリジナル)。
花のアップは多々ある。空手バカ一代(演出)、あしたのジョー2(脚本)、家なき子(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。

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武彦(奈々子の文通相手。実は奈々子の義兄にあたる)に出す手紙のための切手を買いに、大学の売店に行った奈々子だったが、切手は売り切れていた。
その後花屋で、れいが身につけていたのと同じ白バラを見かけた奈々子は目を輝かせる(アニメオリジナル)。ここも、花に役割がある。コボちゃん(脚本)と比較。

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そして奈々子は、体育館に佇む。
床に奈々子が映り、ここも真実を映す鏡となっている。F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、ルパン三世(演出/コンテ)と比較。

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奈々子が、バスケの試合時のれいを回想していたところ、れいが現れ、ボールを転がしてくる。ボールを介した会話は、DAYS(脚本)と重なるものがある。
DAYSの場合は、口に出す言葉と異なる本音をボールが運ぶという、凝った場面になっている。

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れいは、奈々子が恋をしていると言い当てるが、相手が薫だと勘違いする。
懸命に否定する奈々子であったが、れいは笑いながらダンクシュートを決めて去る。
ここも、DAYS(脚本)の、つくしと会話した後にボレーシュートを決める風間が重なる。

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奈々子は、れいの言葉を内心否定しながら、自分の手を握る。ここも、「手」による感情表現が強く出ている。グラゼニ・F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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薫に恋しているのはマリ子なのに…と、奈々子はれいの勘違いにモヤモヤして、石を池に投げる(アニメオリジナル)。
こういった場面は結構出る。チエちゃん奮戦記(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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そしてこの時、奈々子は手紙を落としてしまう。

手紙を落としたことに気がついた奈々子は、それを探し回る。事情を聞いたマリ子は、男に対する嫌悪を口にし、男なんかと付き合うなと抱きついて泣く。抱きついて泣くのはアニメオリジナル。ハグはよく出る。グラゼニ・F-エフ-・1980年版鉄腕アトム(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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マリ子をなだめる奈々子の場面で、意味深に蛇口が映る(アニメオリジナル)。F-エフ-・めぞん一刻(脚本)でも、蛇口がクローズアップされている。

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そこへソロリティの上級生メンバーが現れ、蕗子が呼んでいるので、彼女の家に行くよう奈々子に言う。
ここで、ステンドガラスに爪を立てる蕗子が映る。ここも、手の感情表現。
グラゼニめぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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蕗子は、「宛名(辺見武彦)を見てしまった」(武彦は、蕗子の兄の親友)と、奈々子が落とした手紙を見せる。動揺した奈々子はティーカップを落とす(アニメオリジナル)。
めぞん一刻(脚本)と比較。このような、「物」のアップは沢山出てくる。

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蕗子は、以前文通を止めるよう言ったはずだと言い、今後、この文通が恋愛感情に発展しない保証はない…と釘を刺す。「風」の表現が、ベルサイユのばら(コンテ)と似る。高屋敷氏は、自然や天候にも重要な役を課す。

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この場で手紙を破って見せろと蕗子は奈々子に迫る。しばしの間のあと、手紙を奈々子の手の上に置いた蕗子は、意地悪を言っただけだと笑い出す。ここも、「手」が物語る。宝島(演出)、グラゼニ(脚本)と比較。

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蕗子は奈々子を軽く抱く。こういったスキンシップもまた、数々の作品にある。グラゼニ(脚本)、宝島(演出)、DAYS(脚本)と比較。

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その帰路、奈々子は直ぐに手紙を投函することにする。色々迷子になった手紙だから、いつもより真面目に読んで欲しい…と、彼女は思う。
また、(れいに対する)自分の恋心を「変な奈々子」と感じつつも認めるのだった。

本作全体で、手紙は重要アイテムだが、ワンダービートS陽だまりの樹(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-・カイジ2期(脚本)他、多くの作品で重用されている。

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  • まとめ

まず目を引くのは、数々の「手」による感情表現。前述の通り、他の高屋敷氏担当作にも実に多く見られる。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)に、親指が喋る回があるほか、ワンダービートS20話(脚本)では、「手は第2の脳」という台詞があり、同氏が「手」を重視しているのがわかる。

あと、多数の心情やエピソードを捌ききる、高屋敷氏の技術力の高さが光る。
何回か書いているが、じゃりン子チエ(脚本)で目立っていた技術でもある。近年でも、カイジグラゼニ(いずれもシリーズ構成・脚本)で、それは存分に活かされている。

原作からして、ナチュラルに百合要素があるのだが、アニメでも上手く取り入れている。高屋敷氏は、男ばかりの作品世界では(ナチュラルに)BL的な雰囲気を出すことがあるが、それを百合にも適用していると言える。

百合やBLというより、「異性が入る余地の無い、同性同士のつながり」を描くのが上手いと言った方がいいのかもしれない。
これの根底にあるのは、高屋敷氏が愛する野球(高校の野球部の監督をする程)の「チームワーク」なのではないか?と最近考え始めている。

今回含め、回を追うごとに奈々子は自らの(れいに対する)恋心に向き合う。これもまた、高屋敷氏が打ち出してくるテーマの一つ「自分とは何か」の一環と言える。
シリーズ構成(金春氏と共同)についても、同氏の高い計算力が見られ、今後の経過を見ていきたい。

れいについてだが、バスケの試合に出たことで、生きる活力を(多少)取り戻したことが、原作より強調されている。こちらも、元野球部だった高屋敷氏の経験が活きているのではないだろうか。グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも、野球に対する純粋な情熱を、かなり強めに出している。

高屋敷氏は、人間のメンタル面についての鋭い視点を持っているが、フィジカル面についても独自の考えを持っているのかもしれない。メンタル・フィジカル面ともに、人間を形成する重要な要素であるわけで、これもまた、高屋敷氏的テーマ「自分とは何か」に繋がっている。

アカギやカイジ(いずれもシリーズ構成・脚本)といったギャンブルもので、メンタル面の追究がある一方、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)では、フィジカル面の追究が加わっている。
本作の脚本/シリーズ構成は、意外にもフィジカル面の、高屋敷氏の考えが見られ面白い。