カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RAINBOW-二舎六房の七人1話脚本:虹の重み

アニメ・RAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマが描かれる。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテは神志那監督で、演出は倉田綾子氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

1950年代、様々な罪を背負って少年院に入所した真理雄ら6人は、房(二舎六房)の先住者・桜木六郎太と出会う。
最初は六郎太に反発する6人だったが、強くて根は優しい彼に次第に惹かれていく。

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アバンは、一本の木のアップから始まる。自然や物が醸し出す「間」の描写は、高屋敷氏の様々な担当作に出てくる。めぞん一刻・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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このアバンは物語の50年後で、この始め方はアニメ独自。同氏は時系列操作が上手い。

そして、アバンからシームレスにOPに入り、時が50年ほど遡った事がわかるようになっている。
主要人物達の夢が掘られた木に触れる真理雄(主人公格)が映るが、魂が宿ったようなものに優しく触れる手の描写は、数々の作品に見られる。F-エフ-(脚本)と比較。

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基本的にOPはシリーズ構成の範疇ではないと思うのだが、OPの光の鳥が、カイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)OPや、火の鳥鳳凰編(同氏と金春氏脚本)の火の鳥と重なる。他作品でも、長年一緒に仕事した出崎統氏の影響か、高屋敷氏は鳥を重用する。

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更にOPについてだが、ラストがカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)とシンクロを起こしている。

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前述の鳥といい、これといい、奇跡的な偶然で片付けずに考えると、スタッフがカイジ2期と一部共通であること、監督・高屋敷氏ほかスタッフが一丸となってテーマを理解しているであろうこと等が挙げられる。

時はアバンから遡って、昭和30年(1955年)7月の雨の日となる。雨は、あらゆる作品で強調される。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)と比較。おにいさまへ…では、主人公にとって大事な日が、いつも雨だというアニメオリジナル設定があるほど。

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6人の少年が、(一般の)バスに乗ってくる。彼等は少年院に護送される犯罪者であった。
彼等がバスに乗る前、乗客の一人である幼女が、人形に物を食べさせるごっこ遊びをしていたが、食にこだわる高屋敷氏らしい(台詞も改変されている)。

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幼女が落とした人形を、少年達の一人が拾ってあげるが、幼女は怖がって泣く。

少年達がバスを降りると、幼女は人形を投げ捨て、看守の石原は、人形を拾った少年に暴行を加える。

人形のアップ・間がある。こういった「物」のアップ・間は頻出。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。

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その後、6人は少年院へと入る。
状況と連動した排水口が映る。コボちゃん(脚本)にも同様の表現が見られる。

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少年達は、少年院の医師・佐々木から、検査という名目のセクハラを受ける(ガラス棒を肛門に突っ込まれる)。
笑顔に隠された凶悪な面があるのは、カイジ2期(シリーズ構成・脚本)の大槻班長が思い出される。

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すっかり虚脱した6人は、2舎の第6房(すなわち、タイトルの“二舎六房”)に入れられる。
房の水道の蛇口から水滴が落ちる。似た描写は、しばしば見られる。F-エフ-・おにいさまへ…めぞん一刻(脚本)と比較。

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二舎六房には先住の青年がいた。
彼は6人を煽り、彼等は激高。
それを受け、青年は本格的なボクシングの構えを見せる。あしたのジョー2や、はじめの一歩3期の脚本ほか、高屋敷氏はボクシングに縁がある。
また、本作の神志那監督は、はじめの一歩の総作監

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房の先住青年は、ボクシングの技を駆使し、襲いかかる6人を次々と倒す。
倒れる6人の止め絵と共に、人物紹介のナレーションが入る。止め絵→人物紹介の流れは、チエちゃん奮戦記(脚本)にも見られた。

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6人の名前と特徴は以下の通り。()内は通称。

  • 水上真理雄(マリオ):短気
  • 遠山忠義(ヘイタイ):いかつい
  • 前田昇(スッポン):小柄
  • 野本龍次(バレモト):眼鏡
  • 横須賀丈(ジョー):美形
  • 松浦万作(キャベツ):大柄

以降、ここでは下の名前で表記する。

真理雄は、生きてたって仕方ないから殺せと、先住青年に言う。
すると、青年は眉をひそめる。
原作より強調が見られ、(悲観や精神疾患による)自殺に否定的な、高屋敷氏のスタンスが見える。この姿勢は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)にも見られた。他も多数。

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丈は、これで勘弁して欲しいと言って、口の中に隠していた煙草を差し出す。
大切な物を持つ「手」のクローズアップは、よく出る。MASTERキートンカイジ・F-エフ-(脚本)と比較。

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そこへ石原が来る。状況を把握した彼は、先住青年を警棒で滅多打ちにし、他の6人に青年を殴れと命じる。できないと言った真理雄は殴られそうになるが、青年は、彼等に罪は無いと言って庇う。

更に暴行を加えようとした石原を制止したのは佐々木であったが、佐々木の本性を知る青年は、彼を睨む。
カイジ2期(脚本)にて、大槻の本性を面と向かって言うカイジが重なる。

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いつしか雨が上がり、雲の隙間から光が射す。こういった状況を高屋敷氏は好むのか、色々な作品に見受けられる。あんみつ姫(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。いつもながら、絵に関与できない「脚本」作同士でも、画が似てくるのが不思議。

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先住青年は、龍次の眼鏡と日光を利用し、丈が先程差し出した煙草に火をつける。
原作通りなのだが、ど根性ガエル(演出)の、レンズと日光で火を起こす場面が思い出される(こちらは夢オチ)。

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丈から名前を聞かれた先住青年は、煙草の煙を吐き出して、少し怒った表情を見せる。煙草を使った感情表現は多用される。カイジ2期・グラゼニ(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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先住青年は、人に名前を聞く時は、まず自分から名乗るものだと怒るが、丈に煙草を差し出し、全員でまわして吸えと言う。
こういった優しさは、様々な作品で印象に残る。
MASTERキートン(脚本)、宝島(演出)、カイジ2期(脚本)と比較。

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なおも警戒する真理雄に対し先住青年は、お前達を手懐けても何の得も無いと煙草を渡し、皆が外の世界で辛い目にあってきたことくらい、わかっていると言う。
背中で語るようにするのは、グラゼニ(脚本)でもよく見られた改変。

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真理雄は煙草を吸う。
感情や状況と連動し、煙草が灯る。こういった表現は結構出る。
カイジカイジ2期・グラゼニ(脚本)と比較。

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真理雄が吐き出す煙草の煙と共に、ランプが映るが、ランプ描写は実に沢山出てくる。
おにいさまへ…あんみつ姫グラゼニ・アカギ(脚本)、宝島(演出)と比較。

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「うめぇ…」と真理雄は煙草を味わい、涙を流す。極限状態の中で、嗜好品や食べ物を味わう描写は多い。カイジ2期・あんみつ姫(脚本)、宝島(演出)と比較。

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太陽が顔を出す。その光を浴びながら、先住青年は名前を名乗る。その名は桜木六郎太。彼は以降「アンチャン(兄ちゃん)」と慕われることになる。
太陽の「活躍」は数多い。宝島(演出)、F-エフ-・ワンダービートS(脚本)、空手バカ一代元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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再来年の夏は、皆でシャバにいたいと六郎太は言う。皆を太陽が照らしていく。光と心理の関連づけは、宝島(演出)やカイジ2期(脚本)等にも見られた。

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そして、空に虹がかかるのだった(原作だと“虹を架けた”という文)。
虹は、特に演出時代に多用され、脚本になると、意味合いが深くなっている。
宝島(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)、エースをねらえ!(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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  • まとめ

本作の本放送は2010年で、カイジ2期本放送(2011年)の前年にあたる。
そのため、前述の通りカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)との共通点が多い。本作で培った「プリズンもの」のノウハウを、カイジ2期地下編に活かしたとも考えられる。

また、高屋敷氏が得意とする、「自然」や「物」を使った比喩・暗喩表現が、そこかしこに見られる。アニメになったらどういう映像になるかを熟慮した脚本だから、脚本作同士でも映像が似てくるという怪現象が起こり続けるのではないかと、私的には思う。

この時期(2010年頃)になると、高屋敷氏の培った経験は膨大なものになっており、引き出しも充分ある。それでも、カイジ2期(シリーズ構成・脚本)や、近年のグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)に至るまで、新しい作品になればなる程アップデートが見られ敬服する。

話の大半が少年院の房の中という閉鎖された空間なのに飽きさせない作りは、カイジ1・2期(シリーズ構成・脚本)のギャンブル場面(特に2期7話)や、MASTERキートン8話(脚本)・グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)17話の密室劇に通じるものがある。この技術も凄まじいものがある。

物語の50年後という、アバンの大きな時系列操作も目立つ。おにいさまへ…グラゼニの脚本でも、器用な時系列操作による原作改変が見られたが、本作では、それがどう作用するのか注目したい。

六郎太のカリスマ性や優しさは、カイジに重なるものがある(古くは、高屋敷氏が演出参加した宝島のシルバーなど)。こういった「重なり」は、前面に出したい箇所や、強調したい箇所が同じだからではないかと思っている。

高屋敷氏の定番である、熱い友情描写に関しても、どんどん濃くなりそうな兆候があり、こちらも注目。六郎太が割と完成された人間であるのに対し、あとの6人が成長中といったあたりも、宝島*1(同氏演出参加)のシルバーとジムを彷彿とさせる。

太陽の「活躍」も印象深い。初期のど根性ガエル演出(1972年頃)から実に数十年に渡り表れている特徴で、もう本作(2010年頃)になると、意味合いは非常に深いものになっている。こういう繋がりを見ていくのも面白い。

終盤の虹に関しても、昔(演出時代)に比べて扱いが格段に重い。だが、長年の積み重ねによるものなのは間違いない。
虹が重要な本作と、虹を重用してきた高屋敷氏の巡り合わせは奇跡的だが、同氏の引き出しの豊富さが、こういった奇跡を生むのではないかとも思えた。

*1:当ブログの、宝島に関する記事一覧: http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6