カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RAINBOW-二舎六房の七人5話脚本:木が記憶する夢

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテは吉川博明氏で、演出は平尾みほ氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

火事で負傷した六郎太(少年院の二舎六房の古株でリーダー)が退院。束の間の平穏の中、房の皆は各々の夢を木に刻む。

そして刑期満了を前に、釈前房に入れられた六郎太は壮絶なリンチを受ける。何とかしようとする真理雄(二舎六房の熱血漢)だったが…

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火事で舎房が焼けてしまった二舎六房の面々は仮舎房に移る。

凶悪な看守・石原が謹慎中のため、皆は穏やかに過ごす。

2話でもそうだったが、忠義(いかつい)と万作(大柄)がトレーニング、昇(小柄)と丈(美形)が将棋、龍次(眼鏡の頭脳派)が読書、真理雄(熱血漢)がボクシングの練習…というのが定番になっており、高屋敷氏が得意とする、キャラの掘り下げが成されている。

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そこへ、火事で負傷し入院していた六郎太(房の古株でリーダー)が予定より早く帰ってきて、皆は喜ぶ。朗らかな笑顔が広がる様は、色々な作品で強調される。宝島(演出)、あんみつ姫はだしのゲン2(脚本)と比較。

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野外作業の休憩中、二舎六房の皆は海を見ながらくつろぐ。船が横切っていくが、出崎統氏の演出の定番で、長年同氏と一緒に仕事した高屋敷氏もよく出す。あしたのジョー2・おにいさまへ…・アカギ(脚本)と比較。このうち、あしたのジョー2と、おにいさまへ…のコンテは出崎統氏。

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皆は、互いの夢を語り合う。ここは、水辺で(言葉が通じずとも)友情を確かめ合う、あしたのジョー2(脚本)のカーロスと丈に重なるものがある。

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六郎太は、中途半端に終わらせたくないとして、ボクシングを続ける決意を語る。
はじめの一歩3期(脚本)の一歩、あしたのジョー2(脚本)の丈、グラゼニ(脚本)の夏之介など、自分でやると決めたことを貫くキャラを、高屋敷氏は尊重する。

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万作は、「おいしいものを沢山食べたい」と言って皆を笑わせる。ここも、笑顔を強く印象づけている。エースをねらえ!(演出)、陽だまりの樹・F-エフ-・蒼天航路(脚本)と比較。

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将来の夢を考えあぐねる真理雄に、「筋がいい」として、六郎太はボクシングを勧める。
光の加減で、尊敬や恋、力の差などを表す描写は、しばしば見られる。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)と比較。

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六郎太は立ち上がり、一足先にシャバに出てるから、後で6人揃って出てこいと微笑む。確かな友情を感じさせる微笑は、あしたのジョー2(脚本)でも見られた。

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7人は、木に各々の夢を刻み、シャバに出た後の再会の目印にすることにする。
「木」ほか、自然のクローズアップは、よく見られる。じゃりン子チエ(脚本)、宝島(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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六郎太はボクシング世界チャンプ、昇はハーレム、忠義は自衛隊員、丈は歌手、龍次は金持ち、万作は美味しいものを食べること…と、それぞれの夢を木に刻む。

最後に真理雄は、「みんなのユメがかなえばいい」と刻むのだった。ここはシリーズの要となりそうな名場面で、高屋敷氏の構成計算の一端が見える。

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二舎六房の皆が友情を深める一方、石原と佐々木(少年院の医師)は、二人の悪事を知る六郎太をおとしめる陰謀をめぐらす。
月が映るが、全てを見ているような月の出番は多い。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、蒼天航路(脚本)と比較。

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佐々木(常日頃、少年を犯している)は今夜の「相手」の少年を前に、指を洗う(原作はダイレクトな表現)。
状況や感情を表す手のアップは多い。おにいさまへ…・F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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石原から、釈前房(釈放直前の入所者が入る房)への転房を命じられた六郎太は、そこで(石原の息がかかった)房の者達から壮絶なリンチを受ける。だが、六郎太は不敵な笑みを浮かべる。どんなイジメを受けても策略を進め、ニヤリとするカイジを彷彿とさせる。

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転房してから、食堂に出て来ない六郎太を心配した真理雄は、釈前房(一舎八房)の面々が、六郎太の事を話しているのを耳にする。
その1人の拳が腫れているのを見て、真理雄は状況を察し、彼の手を掴む。
衝撃で椀が落ちる。こうした「物」の描写は、色々な作品に見られる。おにいさまへ…めぞん一刻(脚本)と比較。

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釈前房の者達は六郎太を侮辱し、それに憤った真理雄は、彼等のうち一人を殴る。
色々とカイジ2期5話(脚本)と重なる。真理雄の場合は激情、カイジの場合は策略のうちの一つという違いはあるが。

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真理雄の先走った行為が、六郎太を益々窮地に追い込むとして、忠義は真理雄を激しく叱咤する。房の窓に蛾が集まる表現があるが、他作品にも見られる。おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出)、アカギ(脚本)と比較。

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一方六郎太は、釈前房の皆から食べ物をぶっかけられるが、それを掴んで食べる。
おにいさまへ…・F-エフ-・じゃりン子チエ(脚本)ほか、生きるための「食」の大切さを、高屋敷氏は強くうったえる。

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後日、真理雄は釈前房の者達に頭を下げ、自分を思う存分殴るかわり、六郎太に手を出さないで欲しいと頼む。
それを受け彼等は、真理雄がボクサー志望と知りながら、彼の右拳を石で粉砕する。
カイジ(脚本)の、指を切られる場面が重なる。

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真理雄の右拳を壊したことを、釈前房の者達から告げられた六郎太は、そのうちの一人の顔面に強烈なパンチを浴びせる。
一転攻勢の構成は、はじめの一歩3期・カイジ2期(脚本)ほか、効果的に使われる。

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今までのリンチは石原のヤキよりヌルかったので我慢してやっていたが、真理雄の一件はやりすぎだとして、六郎太は拳を構える。カイジ2期5話(脚本)にて、リーダーとして満を持して大槻班長に立ち向かうカイジと重なる。

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「自分のことなら、何があっても耐えてみせる。だが、自分のために仲間が痛めつけられるのは絶対に許せねえ…」というアニメオリジナルのナレーションが入る。カイジ2期(脚本)のカイジベルサイユのばら(コンテ)のオスカル、ど根性ガエル(演出)のひろしほか、仲間/弱者/親友が虐げられると激怒するキャラはクローズアップされる。

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  • まとめ

シリーズ中、重要な回と言える。
皆の夢が刻まれた木は、(50年後の状態で)1話アバンにアニメオリジナルで出てきており、その経緯がここで明かされる。
高屋敷氏が得意とする時系列操作が、ここで効力を発揮しており、同氏の構成計算の巧みさが光る。

話の密度も濃く、かなりの量の原作を消費している。
夢を木に刻む話、釈前房の六郎太の話、石原と佐々木の陰謀、真理雄の右拳損傷、六郎太の一転攻勢のクライマックスなど、複数のエピソードを上手く捌いており、じゃりン子チエ脚本で培った技術が使われている。

ラストの六郎太の一転攻勢は、それまでの積み重ねがある分、カタルシスが感じられる作りで、話の組み立てが上手い。高屋敷氏は、キャラの魅力を積み上げ、それをどう爆発させるかの計算が緻密。

真理雄が六郎太に憧れていることを丁寧に描いたことで、右拳を粉砕された真理雄の痛みや、それを受けての六郎太の怒りが手に取るようにわかる仕組みになっている。夢を語る話と、六郎太の転房の話を、1話内に詰めた意図が窺える。

多くの作品で、高屋敷氏は仲間愛を強く描くが、アニメオリジナルのナレーション「自分のために仲間が痛めつけられるのは絶対に許せねえ…」は、それが直球で表れており、同氏のポリシーを再確認できる。
こういった所も、同氏の担当作を追う醍醐味。

本放送が、カイジ2期本放送の前年にあたることもあり、やはりカイジとのシンクロが多々ある(スタッフも一部共通している)。奇しくも今回(5話)とカイジ2期5話とのシンクロ具合は高い。
凄惨なイジメを主人公達が受け、最後に反撃を開始する流れも共通で、高屋敷氏のシリーズ構成のクセが見える。

今回は、皆の夢が語られるわけであるが、高屋敷氏のテーマの一つ「自分の道は自分で決めろ」と相性が良い。
原作のどこを強く押し、何をテーマにしていくかは、原作つきアニメで重要。
同氏はそれが抜群に上手いので、そこにも注目して見て行きたい。