RAINBOW-二舎六房の七人20話脚本:笑う門には…
アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテ・演出は矢嶋哲生氏。そして脚本が高屋敷氏。
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- 今回の話:
これといって、やりたい事が見つからない万作(元・少年院の二舎六房の一人。大柄)は、以前世話になったヤクザ・福本組のもとで見習い修行するもドジばかり踏む。
そんな折、福本組は他の組から襲撃され…
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19話で丈(元・少年院の二舎六房の一人。美形)を助ける際、車を貸してくれた福本組に、真理雄(熱血漢)ら二舎六房の面々は車を返しに行く。その際、万作(大柄)はヤクザに憧れを抱く。
アニメでは、時系列が整理されている。器用な時系列操作は、高屋敷氏の十八番。
その後、丈と奇跡的な再会を果たしたメグ(丈の妹)を囲み、二舎六房の皆は飲み会を開く。
騒がしい皆を見て、メグは笑顔を見せる。
「笑顔」は重視される。おにいさまへ…・忍者戦士飛影・あしたのジョー2(脚本)と比較。
そんな中、万作の様子がおかしい事に気付いた龍次(頭脳派)は、昇(小柄)に理由を聞く。意味深なコップの「間」があるが、同様の描写は多々ある。F-エフ-・グラゼニ・おにいさまへ…(脚本)と比較。
仕事や用事等があるため、真理雄・忠義(いかつい自衛官)・丈・メグは先に帰る。
残った万作・昇・龍次だったが、万作は、特にやりたい事が無い自分を嘆く。
感情を表す手元を映すのは、よくある。グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。
福本組で修行すると言い出す万作を、昇は必死に止める。
万作が帰った後、赤提灯が映る。ランプ・灯のアップ・間は頻出。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、蒼天航路(脚本)と比較。
万作がヤクザの道に入らないように、計画を立てると龍次は言い、昇に煙草を差し出す。昇はそれに賛成し、煙草を取る。
煙草のやり取りはアニメオリジナル。手による意思伝達描写は、色々な作品にある。
MASTERキートン・ワンダービートS(脚本)と比較。
龍次と昇は、万作に(話術やトリックが必要な)叩き売りをやらせてみるが、純粋すぎる万作は悉く失敗。
風が虚しく吹き、看板が倒れる(アニメオリジナル)。色々な物が自動的に動く表現は、他作品にも見られる。カイジ・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。
沈み行く夕陽の中、万作・龍次・昇は佇む(夕陽はアニメオリジナル)。「夕陽と友情/愛情」は、よく見られる状況。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)と比較。
皆の心配をよそに、遂に万作は福本組で見習いを始める。だが、ここでもドジばかり。それでも万作は、元気に食事する。
飯テロの強調は高屋敷氏の定番。グラゼニ・チエちゃん奮戦記・カイジ2期(脚本)と比較。
田中(万作の教育係)と万作が留守番をしている最中、田中が他の組の刺客に斬られてしまう。
衝撃で、田中の煙草が落ちる(アニメオリジナル)。煙草描写は色々出る。カイジ2期・1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。
福本組が襲撃された事を知った真理雄達は、病院で万作を探すが、そこに田中が現れる。
田中は、真理雄が隠していたドスを没収して突きつけるが、真理雄は物怖じしない。ヤクザとの対峙は、空手バカ一代(演出/コンテ)やアカギ(脚本)を想起させる。
仲間である万作を思う、真理雄の確固たる意志を汲み取った田中は、夜7時に日比谷公園に行けと言う。
窓に田中の顔が映る。真実を映す鏡描写は重用される。グラゼニ・めぞん一刻・カイジ(脚本)と比較。
「いいダチ持ってんだな、キャベツ(万作のあだ名)はよ」と田中は微笑み、真理雄も微笑み返す。真理雄の笑みはアニメの追加。ここも、笑顔への拘りを感じる。
グラゼニ・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。
ここでも、夕陽が映る(アニメオリジナル)。コボちゃん・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)と比較。
真理雄達を見送った田中は、煙草をくゆらす。ここも、感情と連動する煙草描写。カイジ2期・MASTERキートン・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。
真理雄らが日比谷公園に着くと、街頭テレビでプロレス中継をやっており、プロレスラーとして万作が出ていた。
後に、皆は万作に事情を聞く。ものを美味しそうに食べる姿は頻出。グラゼニ(脚本)、宝島(演出)、コボちゃん・DAYS(脚本)と比較。
福本組が襲撃された際、追い詰められた万作は、その怪力で刺客を倒したが、救急車を呼んだ時に警察も来た事を、総長に咎められる。
万作の処分を買って出た代貸し(若頭)の有藤の顔が、車のバックミラーに映る。ここも、真実を映す鏡。おにいさまへ…・F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。
自分より他人(田中)を心配する万作は、つくづくヤクザに向いていないとして、有藤は彼をプロレス団体に紹介したのだった。
その話を聞き、真理雄達は爆笑。ここも、笑顔の強調。グラゼニ・おにいさまへ…・あんみつ姫(脚本)と比較。
後日、真理雄が勤務するバーに、有藤が現れる。
バーの看板が消灯する。
状況・心情と連動した、灯りの点灯・消灯は多くの作品にて見られる。めぞん一刻・おにいさまへ…(脚本)と比較。
有藤は、もし万作が救急車を呼ばなかったら、田中は死んでいたと語り、「二度と組には顔出すんじゃねえぞ」(カタギでいろ)と万作に伝えて欲しい…と真理雄に言うのだった。
グラスの氷が鳴る。同様の表現が、グラゼニ・カイジ2期(脚本)にも見られる。
- まとめ
自分の進むべき道がわからずに悩む万作の描写は、高屋敷氏のテーマの一つ「自分とは何か」とマッチ。
一方、友達だからこそ「万作とはどういう人間か」を知る二舎六房の面々は、万作が誤った道に入りそうになると心配してくれる。
友情の尊さを、高屋敷氏はあらゆる作品で描く。
おにいさまへ…13話(脚本)では、「どうしても戦いきれなくなった時に苦悩を打ち明けることができ、自分で生きようと思う時まで待ってくれる人こそ友達」という概念が出るが、今回と併せて考えると面白い。
ルパン三世3期6話(脚本)のサブタイトルが、山田洋次監督作品のパロディだったりするので、高屋敷氏は山田洋次監督作品が好きなのではないか?と思うことがある。
今回に漂う義理人情感・コメディ感を考えると、当たらずとも遠からずかもしれない。
また、食いしん坊である万作の回でもあるので、高屋敷氏が拘る「食と心」が上手くはまっている。
よき友に囲まれ、ご飯が沢山食べられる仕事として(有藤のおかげで)プロレスの道に入った万作は、ある意味幸せ者だという主張も感じられる。
温厚で純粋な万作を見て、皆は笑顔になる。「食べる事」「笑顔」が生きる上で重要な事だという高屋敷氏のポリシーが、やはり感じられる(特に終盤の、皆の笑顔の強調)。
あと、要所要所で追加された夕陽も、人の温かさを見守るものとして、効果を発揮している。こういった太陽の描写は、実に多くの高屋敷氏担当作品に見られ、並々ならぬ太陽(もしくは月)への拘りが窺える。
話の密度が濃く、かつ1話内でキレイに終わっている今回であるが、ここは(高屋敷氏が演出や脚本で参加した)元祖天才バカボン的。
やはり同氏の経験の豊富さ・技術力の高さを感じずにはいられない回だった。