カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RAINBOW-二舎六房の七人26話(最終回)脚本:虹と共に

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテは神志那監督で、演出が許平康氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧(本記事を含む):

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

右手が壊れているが、ボクシングを諦めきれない真理雄(少年院の二舎六房にいた一人。熱血漢)は、一か八かの手術を受け、右手を治す。時を経て、真理雄はついにリングに上がり…

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右手が壊れているものの、ボクシングを諦めきれない真理雄(少年院の二舎六房にいた一人。熱血漢)はロードワークをし、右手を見つめる(アニメオリジナル)。手による感情表現は数多。はじめの一歩3期・ワンダービートS・F-エフ-(脚本)と比較。

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プロレスラーとなった万作(元・二舎六房の一人。巨漢)は、真理雄の働くバーでビールを美味しそうに飲む。ビールテロは定番。MASTERキートンカイジ2期・グラゼニ(脚本)と比較。

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生傷が絶えない万作だが、リングでライトを浴びる快感を語る。コップの「間」があるが、こういった描写は高屋敷氏の担当作によく出る。グラゼニおにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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万作の話を聞きながら、真理雄は米軍基地でボクシングの賭け試合をした事を思い出し、右手を動かす。ここも、手による感情表現。はじめの一歩3期・おにいさまへ…グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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そこへジェフリー(真理雄に敗れた事があるボクサー。米軍兵)が現れ、基地のジムに真理雄を招く。
ジムにて、真理雄は日本語のできる名トレーナー・ジミーと会う。
ポストの意味深な「間」があるが、よくある表現。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。

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ジミーから、右拳を治せるかもしれない医者を紹介された真理雄は、診察を受けることに。それを、元・二舎六房の面々が見守る。仲間愛は、色々な作品で印象に残る。はじめの一歩3期・カイジ2期・DAYS(脚本)と比較。

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ここで、太陽が映る(アニメオリジナル)。状況・心情と連動する太陽は頻出。蒼天航路・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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医者(名前は東田)は、手術が成功する確率は30%だと告げるが、二舎六房の亡きリーダー・六郎太の言葉を思い出した真理雄は、1%もあれば十分だと言う(原作では5%)。カイジ2期(脚本)にて、「五割上等」と言うカイジを彷彿とさせる。

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二舎六房の面々は、真理雄を六郎太の墓参りに行かせ、その間に皆で出し合った金を東田に差し出し、手術を成功させてくれと迫る。仲間のために金を出すのは、宝島(演出)やカイジ2期(脚本)と重なってくる。

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真理雄は、六郎太の墓に手を合わせ、彼の夢(ボクシング世界チャンプ)を引き継ぐ覚悟を決める。ここも、墓や、手向けた煙草に魂があるような「間」が発生する。めぞん一刻(脚本)と比較。

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そこに六郎太の母が現れ、真理雄を家に招く。彼女は、六郎太が履くはずだったリングシューズを真理雄に託す。優しい母は、あらゆる作品で強調される。ど根性ガエル・宝島(演出)と比較。

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六郎太の母は、シューズを抱いて涙を落とす。あしたのジョー2最終回(脚本)にて、丈が葉子に託したグローブが思い出される。

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真理雄は、ありがたくシューズを使わせてもらうことにする。

全てを見守る月が映る(アニメオリジナル)。こちらも、太陽と同じく頻出。はじめの一歩3期・蒼天航路(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)と比較。

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手術は成功。時を経て、真理雄のデビュー戦の日になる。晴れ舞台を、仲間や世話になった人々が見守るコンセプトは、あしたのジョー2・はじめの一歩3期・グラゼニ(脚本)と共通。

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また、傍らに名トレーナーがいるのも、あしたのジョー2(脚本)を思い出さずにはいられない。

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六郎太のシューズと共に戦いに挑む真理雄は、拳に力を込める。ここでも、手による感情表現。はじめの一歩3期・グラゼニ(脚本)と比較。

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ライトが映る。照明の「間」は実に多い。はじめの一歩3期・グラゼニ(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)と比較。

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ジミーの指示通り、真理雄は序盤に防御を固める。それを仲間達が解説するのだが、タイミングや雰囲気が、はじめの一歩3期(脚本)と重なってくる。神志那監督が、はじめの一歩1期の総作監だったことも関与していると考えられる。

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そして、ここぞという時に真理雄の右が炸裂。ここも、はじめの一歩3期(脚本)が重なる。

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それを見た仲間達は沸き立つ。あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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ダウン寸前の相手に、真理雄の右が襲いかかる。ここも、はじめの一歩3期・あしたのジョー2(脚本)と比較すると面白い。

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そして後日。真理雄は、少年院時代に皆が夢を刻んだ木の下にいた。
真理雄は、六郎太が刻んだ文字の上に手を重ねる。優しく物や人に触れる描写は、要所要所に出てくる。F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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「少しは喜んでくれたかな」などのアニメオリジナル台詞などで、真理雄が試合に勝ったことがわかる(原作では3R KO勝ちの記述がある)。原作とアニメは時系列が違う。真理雄が木の下に行くのは、原作では手術前。
器用な時系列操作は、高屋敷氏の十八番。

真理雄は皆の近況を、天にいる六郎太に語る。それぞれが刻んだ文字のアップの後、それぞれの近況が映る。ここも、木の「間」が独特。

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すると、天気雨が降ってくる(アニメオリジナル)。天気雨は、おにいさまへ…(脚本)でも出て来ている(アニメオリジナルエピソード)。
雨をはじめ、高屋敷氏な「天」に大きな役割を持たせる。

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すると、真理雄の心の中の六郎太が現れ、「お前は…お前はどうしてた?」と尋ねる。
死者との対話は、おにいさまへ…(脚本)のアニメオリジナル場面にも見られた。

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「俺の夢は決まってんじゃねえか…アンチャン(六郎太)の夢は…俺が…!」と、真理雄は六郎太が構えた手に向けて拳を突き出す。
いつしか、空には虹がかかっていた。

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アニメでは、天気雨が虹と六郎太を連れて来たような構成になっており、やはり「天」が活躍している。

六郎太の言葉が響く。「幸せにならずに、なんの人生だ」…そして「完」の文字が浮かび上がる。
ラストシーンを、あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。どれも胸を打つ。

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  • まとめ

最終回だけあって、非常に話の密度が濃い。この超圧縮技は、1980年版鉄腕アトム(脚本)や、おにいさまへ…最終回(脚本)でも発揮されており、相変わらずの見事さ。22分前後に収まっているのが驚異的。

木と虹は1話にも出てきており(アニメオリジナル)、ラストシーンを考えると、最初と最後をきっちり決めた構成になっているのがわかる。
これはアカギ(シリーズ構成・脚本)でも使われている手法(東京タワーに始まり、東京タワーで終わる)。こういった計算力も凄い。

ボクシングシーンは圧巻で、あしたのジョー2(脚本)で培われたものがふんだんに使われている。リングと客席の切り替えやテンポが絶妙。これは、はじめの一歩3期(脚本)でも凄まじいものがある。
あしたのジョー2から大分ブラッシュアップされているのも流石。

F-エフ-・カイジ2期・グラゼニ(いずれもシリーズ構成・脚本)と同じく、本作も「一番キラキラしているところ」で終わっている。本作の場合、第二章・完までをアニメ化しているが、原作では、これ以降も、まだまだ波乱がある。

原作は原作で、ラストは素晴らしいのだが、アニメはこの区切りで大正解だと思う。惜しむらくは、忠義(元・二舎六房の一人。いかつい自衛官)の長いエピソードのカットだが、その代わり、彼の強さ・優しさを大分強調してはいる。

とにもかくにも、この美しいラストシーンのために全てを積み上げたような構成で、まさに「終わり良ければ全て良し」。原作の力に、良アレンジも加わり、とにかく胸を打つ綺麗なものになっている。
このラストの前では、細かい事がどうでもよくなる。

原作の第二章ラストにスタッフが惚れ込んだから、アニメ化企画が進んだのでは?などと疑ってしまうほどに、本作のラストシーンは美しい。天気雨が虹と六郎太を呼んだような、アニメオリジナル部分も本当に上手い。

「幸せにならずに、なんの人生だ」という言葉も、シリーズ全体の主軸となっており、振り返れば伏線も張られていた(10話)。
これもまた、この言葉のために全てを積み上げた感がある。

原作通りだが、ラストのナレーションで「道」に関して色々言及がある。高屋敷氏のテーマの一つに「自分で自分の道を決めろ」があり、強調が感じられる。

ラストシーンの美しさで言えば、本作は高屋敷氏担当作の中でもトップクラスに入る。しかも、このために積み上げられたシリーズ構成計算も美しい。

カイジワンナウツ、本作、カイジ2期(いずれもシリーズ構成・脚本)…と、同氏は60代での打率が高いが、その見事さを確認できた作品だった。

次回は、本作のシリーズ構成について特集する。