カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ガンバの冒険11話脚本:山田洋次監督好き確定?

アニメ・ガンバの冒険は、斎藤惇夫氏の児童小説をアニメ化した作品。凶悪なイタチ・ノロイと戦うべく立ち上がったガンバ達(ネズミ)の冒険を描く。監督は出崎統氏。今回の演出は竹内啓雄氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、(本記事を含めた)ガンバの冒険の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%90%E3%81%AE%E5%86%92%E9%99%BA

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  • 今回の話:

凶悪なイタチ・ノロイの支配する島を目指し旅をするガンバ達は、フーテンのネズミ・トラゴローと出会う。ところがこのトラゴロー、一癖も二癖もあるネズミで…

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凶悪なイタチ・ノロイの支配する島を目指して旅をするガンバ達は、地図を確認する。高屋敷氏の担当作には、やたらと地図が出る。ルパン三世2nd(演出/コンテ)、太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。他も多数。

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ガンバとイカサマ(博徒)は、竹の棒を使って馬を操り、荷馬車を動かすことに成功。ガンバとイカサマのやりとりが幼く、馬車が動いて喜ぶ皆も幼い。幼いキャラ付けは、高屋敷氏の十八番。陽だまりの樹・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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荷馬車で移動中、馬の動きに合わせて首を動かすガンバや、空気がおいしい…と呑気に言うボーボ(ガンバの親友)が、これまた幼い。高屋敷氏は、年齢問わず「幼さ」を表現する。宝島(演出)、カイジ2期(脚本)と比較。

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そこへ、トラゴローというネズミが現れる。明らかに、山田洋次監督の『男はつらいよ』の寅さんがモデル。
ルパン三世3期高屋敷氏脚本回のサブタイトルが、山田洋次監督作のパロディだったりする(『ルパンが戦車でやってきた』の元ネタは、山田洋次監督の『馬鹿が戦車でやって来る』)し、高屋敷氏の山田洋次監督好きは確定か。

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トラゴローは故郷へ帰る途中で、母親へのプレゼントとしてキャンディを大切に持ち歩いていた。
おいしそうな食べ物は、高屋敷氏の定番。カイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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トラゴローのひょうきんさに、皆は笑い転げる。ここも幼い。皆に笑顔が広がる表現は、よく出る。じゃりン子チエあんみつ姫(脚本)、宝島(演出)と比較。

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追いかけてきた荷馬車の持ち主をふりきろうとして、馬を暴走させてしまったガンバ達は、荷馬車から放り出されてしまう。頭を打ったガンバは錯乱し、野原を海と勘違いしてエア泳ぎをする。じゃりン子チエ(脚本)のエア泳ぎが重なる。

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その後、トラゴローの案内で森へ入ったガンバ達は、野ネコに襲われる。全ては、ガンバ達を囮にして、自分だけ安全に森を抜けようとしたトラゴローの策略だった。
裏切りや豹変は、様々な作品で印象に残る。宝島(演出)、カイジ2期・1期(脚本)と比較。

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命からがら、ガンバ達が野ネコから逃れた一方、トラゴローは故郷へ帰り着く。しかし、故郷は廃墟となっていた。唖然とするトラゴローの帽子が、風で飛ぶ。帽子が飛ぶ状況は多々ある。グラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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壊れたランプが映る。こういった意味深なランプ描写は非常に多い。宝島(演出)、F-エフ-・アカギ(脚本)と比較。

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廃墟に佇むトラゴローを見つけたガンバ達は、彼を袋叩きにするが、忠太(ノロイ島の生き残り)は、やりすぎだとして皆を制止する。善悪のラインを明確にしないのは高屋敷氏の持ち味で、1980年版鉄腕アトム蒼天航路(脚本)でも、それは色濃かった。

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シジン(詩人兼医者)は、トラゴローが打ち捨てたキャンディを皆に見せ、それが意味する所(トラゴローが母に会えなかった)を訴える。だが、トラゴローはキャンディを割る。物の意味深な破壊も、色々な作品にある。おにいさまへ…蒼天航路(脚本)と比較。

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シジンは、割れたキャンディを撫でて、トラゴローの悲しみを推し測る。何かを優しく撫でるのは、要所要所で出る。
RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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イカサマは、そんなトラゴローは甘いと言い、ノロイと戦う自分達だって命懸けだと、サイコロを振る。出目は、不吉な四二(死に)。カイジ2期(脚本)でも、賽の目ひとつで運命が決まる様が強く描かれた。

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すっかり暗い気分になった皆に追い打ちをかけるように、風が吹き荒ぶ。
心情や状況に連動して風が吹くのは、よくある。グラゼニ・おにいさまへ・めぞん一刻(脚本)と比較。

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ガンバは、意気消沈する皆を鼓舞する。くよくよする者を励ます状況は、様々な作品にある。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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トラゴローは、ガンバが石炭で汚れているのに気付いて笑う。お返しとばかり、ガンバもトラゴローに石炭を塗りたくり、皆もそれに参加。ここも「幼さ・無邪気さ」がよく出ている。F-エフ-・あんみつ姫(脚本)と比較。

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皆に笑顔が広がる。高屋敷氏は、「笑顔」を重視する。RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ・グラゼニ(脚本)と比較。

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そんな皆を見守るように、夕陽が映る。夕陽は出崎統・哲氏兄弟の定番だが、高屋敷氏も頻繁に使う。高屋敷氏のは、意思があるような「間」が特徴。コボちゃん・F-エフ-・蒼天航路(脚本)と比較。

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元気を取り戻したトラゴローは、ガンバ達を見送る。笑って爽やかに別れるのは、あんみつ姫(脚本)でも印象深かった。

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旅を再開したガンバ達を、花も見守る。脚本からどうやるのか不思議だが、状況・心情と連動する花は、実際にあらゆる作品に出る。RAINBOW-二舎六房の七人-・めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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最後、坂道遠近が出るが、これは出崎統氏の定番演出。
高屋敷氏も、よく使う。エースをねらえ!(演出)、あんみつ姫・F-エフ-(脚本)と比較。

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演出ならわかるが、脚本作でも出てくる。つくづく不思議だが実際出る。状況設定が上手いのだろうか?

  • まとめ

男はつらいよ』のパロディが衝撃的。高屋敷氏の脚本では?と私が推測している、あしたのジョー1無記名脚本回に寅さんが出るほか、ど根性ガエルの無記名コンテ回でも寅さんをモデルにしたキャラが出る。

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推測はともかく、高屋敷氏の山田洋次監督好きだけは確定か。

演出作・脚本作とも、幼さ・無邪気さを前面に出したキャラ付けが、高屋敷氏は本当に上手い。特にシリーズ構成作では、序盤にキャラの幼い部分を見せて、終盤の成長した姿を強く印象付ける技術を使う。その手腕には、毎度感嘆させられる。

本作の場合は単発脚本なので、今回はシリーズ構成作に見られるような「成長」の表現は無いのだが、ガンバ達の無邪気さ・純粋さが存分に描かれている。比較的初期の本作で、現在に繋がる個性が出ているのは、かえすがえすも驚き。

物や太陽、風など「喋らないもの」の活用が、本作にも見られるのも収穫。更に前や同時期の、空手バカ一代エースをねらえ!ど根性ガエルにも見られた特徴だが、これらは演出やコンテ。脚本作でも同じ事が出来るというハイブリッドさが、この頃からあるのを確認できる。

脚本面の高屋敷氏の特徴の一つに、名調子な長台詞がある(声優には早口を強いる)。これは、デビュー脚本作のあしたのジョー1(無記名)での実況アナの台詞作りで培われたほか、寅さんの口上からも来ているのでは?と前々から推測していた。今回、それが濃厚になった。

「孤独は万病のもと」、「笑顔は万能薬」的なポリシーも確認できる。初期の作品だから、監督やコンテからの上書きは相当あると思ってはいるが、この頃から、現代に繋がる個性が見られ、高屋敷氏の「我の強さ」が感じられる回だった。