カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンナウツ21話脚本:軸となる二人

アニメ・ONE OUTS(ワンナウツ)は、甲斐谷忍氏原作の漫画をアニメ化した作品。謎めいたピッチャー・渡久地東亜の活躍を描く。監督は佐藤雄三氏(カイジ監督)で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏。
今回のコンテ/演出は池田重隆氏で、脚本が高屋敷氏。

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  • 今回の話:

リカオンズ(謎めいた投手・渡久地の属する球団)対ブルーマーズ(組織的なイカサマを行う球団)の第3戦が始まった(ここまで1勝1敗)。リカオンズは、3パターンのサインを上手く使い分けてブルーマーズを撹乱しようとするが、悉くサインを読まれてしまう。

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1勝1敗で迎えたブルーマーズ(組織的なイカサマを行う球団)との第3戦を前に、リカオンズ(謎めいた投手・渡久地の属する球団)はミーティングを行う。冴島(リカオンズコーチ)の台詞が色々追加されており、愛嬌がある。愛嬌ある中高年キャラは定番で、ど根性ガエル(演出)にも見られる。

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児島(リカオンズのベテラン天才打者)は、勝てば最下位脱出の可能性があると気負う。児島が渡久地を見るという行動がアニメオリジナルで追加されており、シリーズ全体で渡久地と児島の関係を際立たせる方針が貫かれている。こういった、人と人との関係の強調は、宝島(演出)やカイジ2期(脚本)にも出ている。

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この3連戦の間、渡久地に買収されている三原(リカオンズ監督)は、指示通りに動くよう渡久地に念押しされ茫然とする。ここも三原が可愛い。可愛い中高年キャラは高屋敷氏担当作で実に目立つ。グラゼニ(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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渡久地は、3パターンあるサインを、攻撃時は自軍の、守備時は敵軍の選手の背番号を3で割った時に出た余りの数によって切り替えていく事を提案する(割りきれた場合はパターン3)。なんとなく雰囲気が、ど根性ガエル15話A(演出)と重なる。

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今井(リカオンズ遊撃手)や藤田(同・三塁手)は、渡久地の提案を面白がり、賛成する。この二人は、シリーズを通して原作より目立つ。脇役やモブを引き立たせるのは、高屋敷氏の十八番。ここも、ど根性ガエル15話A(演出)の可愛いモブ二人と比較すると面白い。

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荒井(リカオンズ1塁/左翼手およびDH)は計算が苦手なため不安を口にするが、渡久地から算数トリビア(例えば112÷3の余りは、1+1+2を3で割った余りと一緒)を教えてもらい納得。彼も原作より目立つ。
ど根性ガエル15話A(演出)のモブにも、おバカキャラとして目立つキャラがいた。

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この算数トリビアには皆も沸き立つ。皆があまりに子供っぽいので、児島は呆れる。
高屋敷氏は、キャラの幼さ・無邪気さを引き出すのに長ける。ここも、ど根性ガエル15話A(演出)と比較すると面白い。

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渡久地は、このサイン切り替え作戦は三原が言っていたことだと嘘をつき、皆を納得させる(渡久地・児島・捕手の出口以外は、ブルーマーズのサイン盗みを知らない)。ここも今井と藤田が無邪気で幼い。ど根性ガエル(演出)、はだしのゲン2・MASTERキートン(脚本)と比較。

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試合が始まり、リカオンズは4回からサイン切り替え作戦を開始。
出口は、上手くサインを飛ばすが打たれてしまう。ここでも今井・藤田が目立っている。再び、ど根性ガエル(演出)と比較。おそらく個々のキャラを立てるのが、昔から上手いのだと思う。

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それでも出口は色々と思考を巡らせ、先発投手の石山をリードする。高屋敷氏は、捕手と投手の以心伝心描写が上手く、同氏の野球経験(元球児で、高校野球部監督もしていた)も活かされている感じがする。ど根性ガエル(演出)、グラゼニ(脚本)でも、それは見られる。

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ところが、またも打たれてロドリゴ(ブルーマーズ主砲)を迎えてしまう。出口はロドリゴの行動や打ち方から、サインが読まれていると実感し、ミットを持つ手を震わせる。手による感情表現は多い。おにいさまへ…・はじめの一歩3期・F-エフ-(脚本)と比較。

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出口はタイムを取り、児島と渡久地に相談する。そこで一旦、サインパターン1にリセットすることに。渡久地は、三原にそれを指示。三原に犬の尻尾がついており(アニメオリジナル)、愛嬌が増している。キャッツアイ・あんみつ姫グラゼニ(脚本)ほか、とにかく中高年キャラの魅せ方が上手い。

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プレー再開後、出口は理論立てた良いリードをし、石山もそれに応えるが、それでもサインを読まれ、ロドリゴにタイムリーを打たれてしまう。
ここは、出口の思考が原作からよくまとめられていてテンポがいい。まとめ方の上手さも、高屋敷氏の長所の一つ。

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また、放送席が効果的にアニメオリジナルで差し挟まれているが、高屋敷氏は相当に実況が好きと見られ、グラゼニあしたのジョー2・1980年版鉄腕アトム(脚本)ほか、名実況が多い。

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リカオンズは更にサインパターンを変えるが、それも読まれて打たれる。
児島は、そもそも今までの作戦自体が、敵に通用していないのでは…と渡久地に相談するが、渡久地は「何もわかってないのな」と口にする。ここでも、シリーズの軸となっている児島と渡久地の関係を強調する意図が感じられる。

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リカオンズは、今度は1球ごとにサインパターンを変えることに。上手く行っているようだ…と児島は渡久地に声をかけるが、渡久地は「どうだか」と懐疑的。ここも児島と渡久地の関係性のクローズアップが見られる。ルパン三世3期・太陽の使者鉄人28号(脚本)でも、二人単位の関係は強く描かれた。

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そして、1球ごとにサインパターンを変えても、サインを読まれて打たれる結果に。渡久地はそれを見て、リカオンズ間のやり取りが盗聴されている事を確信したと児島に言う。つまり、スタジアム自体がイカサマの巣。建物が生きているような描写は、めぞん一刻はだしのゲン2(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)にもある。

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盗聴の事を意識したのは、この時点で渡久地と児島の二人。ここも、この二人の関係性を印象づける効果を生んでいる。また、緊迫した状況で次回へと続く構成の仕方も上手い。

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  • まとめ

前述の通り、ミーティングルームでのやり取りが、ど根性ガエル15話A(演出)と重なってくるのが興味深い。どちらも、レギュラーから脇役まで、個性を発揮して生き生きとしているのがわかる。

更に、ど根性ガエル15話A(演出)と今回を比較すると、誰がどういう性格なのかが、どちらも一瞬でわかるようになっている。高屋敷氏は、群像を描きつつ個々を光らせる事に長け、ガンバの冒険・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも、それは遺憾なく発揮されている。

それに加えて、年齢問わず子供っぽさ・無邪気さを出していくという高屋敷氏の特徴が如実に表れている。今回で言えば、大のプロ野球選手が少年のように無邪気で、一方ど根性ガエル(演出)では、中学生が小学生並に幼い。

1話のみ脚本の超獣機神ダンクーガ(5話)でさえ、キャラの幼さを引き出しており、その手腕には驚くばかり。
つまりは、キャラ立て・キャラ作りに秀でていると言える。メインを引き立てながらも、脇役のキャラ立ても完了させているのは、つくづく凄い。

あと、今回は出口の思考がテンポよく描かれていて、彼の人間性や能力(敵にイカサマをやられていなければ有能)が見られる。実際、サインを盗まれていると出口が体感したことが、今回の話運びの重要なポイントになっている。

また、いつもの事であるが中高年キャラの愛らしさも目立つ。ルーツはデビュー作の、あしたのジョー1(無記名脚本)の段平あたりと考えられるが、あまりに頻出する特徴なので、高屋敷氏がもともと持っている持ち味だと思っている。

そして、シリーズ全体で重要な、渡久地と児島(渡久地をプロ野球に誘った張本人)の関係の描写にも余念がない。この二人は、互いの行動や言動を見ており、本作に横たわるテーマに深く関わっている。この事からも、しっかりしたシリーズ構成が感じられる。

今回は劣性を強いられる展開ではあるが、出口のお陰でバッテリー間のコミュニケーションや、サインのやりとりをテンポよく楽しむ事ができる(出口役の山口勝平氏も名演)。そこに渡久地と児島の関係性の重要さも絡まり、いつもながら見事な構成だった。