カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

まんが世界昔ばなし12A話演出/コンテ:鳥と光と虹

『まんが世界昔ばなし』は、1976年~1979年まで放映されたテレビアニメ。タイトル通り、世界の童話をアニメ化した作品。
今回は『十一わのはくちょう』。脚本が朝倉千筆氏で、演出/コンテが高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、まんが世界昔ばなしの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%98%94%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%81%97

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  • 今回の話:

今回は『十一わのはくちょう』。
継母(実は魔女)により、白鳥に変えられてしまった11人の兄(王子)を助けるため、妹(姫)が懸命に努力する。

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とある国の、(妻を亡くした)王様が再婚。
結婚式の場面で、ロウソクが目立つ。火やランプのクローズアップは、あらゆる作品にある。宝島・空手バカ一代(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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王様の後妻は、美しい継子達(姫1人、王子11人)に嫉妬して、王子達を白鳥に変え、姫を幽閉する。
部屋の窓から光が射し込む画があるが、こういった光を意味深に使う描写は多々ある。ストロベリーパニックおにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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白鳥に変えられた(夜だけ人間に戻れる)王子達は何処かへ飛び立つ。鳥演出は出崎統氏が好み、出崎氏と長年一緒に仕事した高屋敷氏も好む。
ベルサイユのばら(コンテ)、家なき子(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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このうち、家なき子と、おにいさまへ…は監督とコンテが出崎統氏。

姫は城を密かに脱け出し、兄達を探す。彼女は一軒の小屋を見つけ、中に入る。この場面の立体的な俯瞰構図は出崎統氏ゆずりで、空手バカ一代(演出/コンテ)やベルサイユのばら(コンテ)、宝島(演出)に似たような画がある。このうち、宝島のコンテは出崎統監督。

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そこへ11羽の白鳥がやって来る。ここの鳥演出も、色々な作品の鳥描写に重なってくる。ベルサイユのばら(コンテ)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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小屋は、夜だけ人間に戻れる王子達が寝泊まりする場所だった。彼等は、姫が持ってきていた、自分達の靴に気付き、姫と再会する。赤い靴は、おにいさまへ…(脚本)でも印象的だった。ちなみに本作の『赤いくつ』の回の演出/コンテは出崎統氏。

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再会も束の間、夜が明けると王子達は白鳥となり飛び立つ。

「黙ったまま、アザミで11着の上着を編み、王子達にかける」ことで呪いが解ける…と、謎めいた老婆から聞いた姫は、懸命に上着を編む。
木の下に佇む状況は、結構見られる。
おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-・ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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たまたま姫を見かけた、他国の王子は姫を見初めて城に連れていき、母親に彼女を紹介する。この場面ではステンドグラスが目を引く。ステンドグラス描写は、しばしば見られる。ストロベリーパニックおにいさまへ…あしたのジョー2(脚本)と比較。

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そんな中、上着の原料となるアザミを取りに夜な夜な墓地へ行く姫を見た妃(他国の王子の母)は、姫を魔女だとし、死刑に処すと息子に話す。ここでも、ロウソクの火が目立つ。カイジ2期(脚本)、宝島(演出)、蒼天航路(脚本)と比較。

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投獄された姫は、それでも上着を編み続ける。ここも、光が射し込む画が効果的に使われている。
家なき子(演出)、ストロベリーパニックグラゼニ(脚本)と比較。

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そこへ11羽の白鳥(姫の兄達)が飛んでくるが、姫は上着が完成するまで声を出せないので、白鳥達は通過してしまう。
ここも、他作品の鳥描写と比較すると面白い。らんま1/2(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、カイジ(脚本)と比較。

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処刑場に連れて行かれる際も、姫は上着を編み続ける。似たような橋の描写は、本作4A話(演出/コンテ)、ベルサイユのばら(コンテ)にもある。なんとなく、高屋敷氏の癖が感じられる。

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姫が処刑場に着く場面の、遠近を利用した構図はベルサイユのばら(コンテ)、ルパン三世2nd・空手バカ一代(演出/コンテ)にも見られる。こちらも出崎統氏が多用する技術で、高屋敷氏も使う。

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とうとう姫が処刑されようとする時、11羽の白鳥がやってくる。この場面の鳥演出も、他作品と重なってくる。
ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-・陽だまりの樹(脚本)と比較。特にベルサイユのばらとの重なりは面白い。

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(処刑されようとする直前に)11着の上着を完成させていた姫は、白鳥達に上着をかける。すると呪いが解け、姫の兄達は人間に戻る。今回は、元が人間だが、ハローキティのおやゆびひめ・コボちゃん(脚本)など、意思が強い鳥の描写は色々な作品にある。

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姫の兄達は事情を話し、姫は無罪に。後に姫は王子と結婚し、姑である王妃とも打ち解ける。
姫の兄達は、自国を治めるのだった(継母は処刑される)。
虹は、要所要所で見られる。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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  • まとめ

話が話のため、とにかく鳥演出が目立つ。先述の通り、高屋敷氏は意思の強い鳥を色々出すが、同氏は、鳥に対してイメージを膨らませる傾向があるのではないだろうか。

例えば、ガンバの冒険(脚本)では、一羽の鳥がガンバの上に止まるし、おにいさまへ…(脚本)では、一羽の鳥がガラスを突き破ってくる。鳥一羽一羽にキャラクターを付けているのが窺える。

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ルパン三世2nd(演出/コンテ)では、一羽の鳩が活躍する。このあたりも、高屋敷氏の鳥に対する思い入れが感じられる。また、本作8B話『幸福の王子』(演出/コンテ)のツバメは原典通り死んでしまうが、これの救済のように、他作品での鳥の活躍は多い。

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これらのことから推測すると、高屋敷氏は、ただただ映像的に映えるからと鳥を飛ばしているのではなく、鳥に色々と意味を持たせ、役を課していると考えられる。
これは結構、大事なことのような気がする。

また、心情や状況と連動する「光」の描写も興味深い。
これは他作品でも(不思議なことに脚本作でも)目立つので、相当なこだわりがあると考えられる。画像は、カイジ2期・ストロベリーパニック(脚本)との比較。

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また、「虹」についても、今回はハッピーエンドの象徴として出てくるが、他作品でも、希望の象徴、死者と生者を繋ぐもの、人と人とを繋ぐもの…などの意味を持って出現することがあり、年を経るごとに意味が深くなっている。

今回は話と絵柄(作画監督杉野昭夫氏)がシンプルな分、高屋敷氏の演出の癖がわかりやすい。(不思議な事ながら)後年の「脚本作」にも活かされている要素もあり、面白く見れた。