カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

アンパンマン512B話脚本:型をこなすスキル

それいけ!アンパンマン』は、やなせたかし氏の絵本を原作とした国民的アニメ。
監督は(基本的に)永丘昭典氏。
今回のコンテは日巻裕二氏で、演出はおかざきゆきお氏。脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのアンパンマンに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

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  • 今回の話:

わんこそば屋の、わんこちゃんの蕎麦が食べたくなった、ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)は、わんこちゃんを拐う。
わんこちゃん救出に向かうアンパンマンだったが、ばいきんまんの術中にはまりピンチに。

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冒頭、噴水が映る。噴水描写は結構ある(高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏も噴水演出を好む)。エースをねらえ!(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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アンパンマンの友達のカバオ・ちびぞう・クマ太・ウサコは、わんこそば屋の、わんこちゃんが作る、わんこそばができるのを待つ。飯テロは頻出。
カイジ2期・コボちゃん(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、グラゼニ(脚本)と比較。

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わんこちゃんは恥ずかしがり屋だが、仕事は迅速で正確。高屋敷氏は、短い間でも1話以内でも、キャラの内面や性格を掘り下げ、わかりやすくまとめるのが上手い。その技はグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)などでも大いに発揮されている。

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カバオ達は、わんこそばを次々に平らげる。
チエちゃん奮戦記において高屋敷氏は、力士達がホルモンや、お好み焼きを食べまくる話の脚本を担当している。とにかく、食べ物がおいしそうな描写が多い。

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それを陰で見ていた、ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)と、その相棒のドキンちゃんは、わんこそばが食べたくなる。忍者戦士飛影(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、敵役の愛嬌ある側面は、色々な作品で見られる。

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ばいきんまんドキンちゃんは、変装してカバオ達に接近するが、無視されて怒る。ここも愛嬌があり、こういった要素(敵役の可愛さ)は怪物王女(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)などにも、ふんだんに盛り込まれている。

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ばいきんまん達は、わんこちゃんと、ちびぞうを拐う。その頃アンパンマン達は、訪ねて来るはずの、わんこちゃんを待っていた。空腹で待ちきれないジャムおじさん(パン職人)を見て、皆は笑う。
空腹で場が和むのは、おにいさまへ…(脚本)にもある。

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カバオ達から事情を聞いたアンパンマンメロンパンナ(女性ヒーロー)は、わんこちゃん達の救出に向かうが、ばいきんまんの、人形とわんこちゃんを入れ替える戦術にはまる。キャラの悪賢さは、ルパン三世2nd・元祖天才バカボン(演出/コンテ)などでも目立つ。

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アンパンマンを、洞穴だらけの岩山に誘い込んだばいきんまんは、頂上の穴から水を流してアンパンマンの顔を濡らし、戦闘不能にする。水によって大ダメージを与えるのは、ルパン三世3期(脚本)やガイキング(演出)にも見られる。

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アンパンマンらを拘束し、ばいきんまん達は、わんこちゃんが作る、わんこそばを堪能する。おいしいものを食べて笑顔になるのは、数々の作品で印象に残る。
カイジ2期・MASTERキートングラゼニ・DAYS(脚本)と比較。

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一方、アンパンマンとはぐれたチーズ(アンパンマン達の飼い犬)と合流したジャムおじさん達は、アンパンマン号(ジャムおじさん達の特殊車輌)で、アンパンマンの援護に向かう。車内内蔵の釜の火が映るが、火のアップはよく出る。
あしたのジョー2(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、家なき子(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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わんこちゃんの容赦ない追加そばで胃袋が限界になった、ばいきんまんは、バタコ(ジャムおじさんの助手)から新しい顔を供給され復活したアンパンマンに吹っ飛ばされ退場。食後に悲惨な目にあうのは、あしたのジョー2(脚本)でも強烈(減量中に食事して殴られる)。

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一件落着後、空腹のジャムおじさんを見て、皆は笑う。皆で笑い合うのは、色々な作品で強く打ち出される。高屋敷氏は、笑顔を重視する傾向がある。宝島(演出)、トンデケマン(脚本)と比較。

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あらためて皆は、わんこちゃんの作る、わんこそばを食べるのだった。皆でおいしいものを食べて笑顔になるのは、やはり数多の作品で前面に出る。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ど根性ガエル(演出)、カイジ2期(脚本)と比較。

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  • まとめ

まず、わんこそばは岩手県名物。高屋敷氏は岩手県出身であり、岩手県盛岡市にある母校で、(脚本業と掛け持ちで)野球部監督を務めるほど、同氏は郷土愛が強いようだ。わんこちゃんの方言も、本格的なものかもしれない。

そして、今回も飯テロが強力。
アンパンマンの高屋敷氏脚本は、今回で3本目だが、ここまでで飯テロ要素の無かった回は無い。とにかく同氏担当作における飯テロの割合は実に高く、そのどれもがインパクトがある。

飯テロにインパクトがあるのは、食べる事が(高屋敷氏的に)大好きなだけではなく、おいしい食べ物は、人を笑顔にし、心を癒し、心を繋げるものだという強い主張が見られる。だからこそ記憶に残るし、そうなるように導線がしっかりと引いてある。

あと、本作における高屋敷氏脚本回は、ばいきんまんの戦術が割と凝っている傾向がある。今回も、いかにアンパンマンを欺き、誘導し、戦闘不能(顔が濡れる)にするかが結構練られている。他の担当作も、知略が多い。

本作はパターン縛りがあるが(ばいきんまんが嫌がらせ→アンパンマン戦闘不能アンパンマン復活→ばいきんまん敗北)、どうしたらそうなるのかを埋める技術が必要。高屋敷氏の脚本は、パターンとパターンの隙間を精密に計算して埋めている感じがする。

技術といえば、高屋敷氏の脚本やシリーズ構成は非常にシステマチックで、どこをどう組み立てれば「結」に持って行けるのかの計算が巧み。シリーズ構成作ともなると、シリーズ全体に施された「計算」が実に見事。

時代劇の『水戸黄門』は、毎回のパターンが厳格に定められているわけだが(印籠を出す時間帯など)、アンパンマンも、それに近いフォーマット。それはそれで、かなりの技量が無いと脚本が書けない代物なのではないだろうか。

思えば時代劇もキッズアニメも、お決まりのパターンを踏襲しながら、視聴者をスカッとさせる構成が必要になる。一見単純に見えるが、裏には複雑な計算と苦心があるのだと思えた。