カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

アンパンマン522B話脚本:引き出しの活用

それいけ!アンパンマン』は、やなせたかし氏の絵本を原作とした国民的アニメ。
監督は(基本的に)永丘昭典氏。
今回のコンテ/演出は阿部司氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのアンパンマンに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

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  • 今回の話:

中華料理と拳法の達人、ちゅうか丼まんが町にやってくる。彼の作る中華丼目当てに、ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)と、その相棒のドキンちゃんは変装して、ちゅうか丼まんに弟子入りするが…

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開幕、太陽が映る。これは高屋敷氏担当作では脚本作・演出作ともに定番。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ワンナウツ・F-エフ-(脚本)と比較。

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ジャムおじさん(パン職人)の友人である、ちゅうか丼まんは、ジャムおじさん宅に訪問する途中、町の人々に中華丼をふるまうことに。中国系キャラは、空手バカ一代(演出)、ルパン三世2nd・太陽の使者鉄人28号(脚本)にも出てくる。皆、何らかの達人。

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ちゅうか丼まんは、華麗に中華丼を作り、町の子供達に食べさせる。
飯テロは定番中の定番。
画像は中華料理集。今回と、MASTERキートンあんみつ姫(脚本)。

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それを見た、ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)と、その相棒のドキンちゃんは、子供に変装して中華丼にありつこうとするが、残りわずかで、それをドキンちゃんが一人占め。ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、食べ物を巡る争いは結構ある。

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ばいきんまんドキンちゃんは、もっと中華丼を食べるべく変装して、ちゅうか丼まんに弟子入りし、滝のほとりで修行する。
宝島・空手バカ一代(演出)、おにいさまへ…(脚本)、エースをねらえ!(演出)ほか、滝の描写は、しばしば見られる。

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手本として、ちゅうか丼まんはレンゲを武器のように使う“レンゲ殺法”を見せる。
空手バカ一代(演出)の、主人公である飛鳥(空手の達人)が敗北を認めるほどの太極拳の達人、陳に重なるものがある。

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ちゅうか丼まんの根性論にキレた、ばいきんまんは彼を襲う。そこへ駆けつけたアンパンマンだったが、ばいきんまんの水風船トラップにより戦闘不能に。ルパン三世2nd(演出/コンテ)、忍者マン一平(監督)、カイジ2期・ワンナウツ(脚本)ほか、頭を使う作戦は強調される。

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ちゅうか丼まんは怒り、自分は怒ったら別人になると言って、拳法を駆使して戦い、アンパンマンを救出。
普段モードと本気モードで別人になるといえば、MASTERキートン(脚本)のキートンや、カイジ1・2期(脚本・シリーズ構成)のカイジなどが印象的。

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ちゅうか丼まんに圧倒された、ばいきんまんは白旗を上げるふりをし、その隙に反撃する。悪知恵を働かせる敵役は、忍者戦士飛影カイジ(脚本)ほか、数々の作品で印象深い。

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町の子供達の報告で駆けつけたジャムおじさんと、その助手のバタコにより新しい顔を供給され復活したアンパンマンは、ちゅうか丼まんと共闘し、ばいきんまんを倒す。ルパン三世2nd・太陽の使者鉄人28号(脚本)でも、中国拳法アクションがある。

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一件落着し、ちゅうか丼まんは、あらためてジャムおじさんらも含めた皆に中華丼をふるまうのだった。MASTERキートンカイジ2期(脚本)、宝島(演出)、グラゼニ(脚本)などなど、おいしそうに食べ物を食べる描写は頻出。

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ラストに太陽が映る。太陽で締めくくるパターンは結構見られる。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、じゃりン子チエあんみつ姫(脚本)と比較。

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  • まとめ

ちゅうか丼まんの声は、関俊彦氏が務めている。同氏は、高屋敷氏がシリーズ構成・全話脚本を務めたF-エフ-の主人公、赤木軍馬の声も担当した。なかなかに運命的。

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高屋敷氏の好みなのか何なのか、中国拳法の達人は、色々な作品に出てくる。
特に今回は、滝のほとりでの修行など、ちゅうか丼まんと空手バカ一代(演出)の陳が重なる。基本的に、空手バカ一代がルーツの一つなのかもしれない。

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そして、高屋敷氏の定番の特徴である飯テロにも余念がない。作る過程をじっくり描写したり、材料を列挙したりなど、視聴者がおいしそうに感じる工夫があることに気付かされる。演出作だけでなく、脚本作でも飯テロが強烈な秘訣は、このあたりだろうか。

また、敵役のばいきんまんの悪知恵も目立つ。数々の担当作にて高屋敷氏は、敵ながら天晴と思わせる構成をする。
そもそも同氏は、善悪のラインを明確にしない傾向がある。

人は、おいしい物を食べれば笑顔になるし、仲間や家族と一緒においしい物を食べれば最高においしいと感じるもの、というポリシーも相変わらず強く出ている。本当にここはブレない。高屋敷氏のライフワークの一つと言っても過言ではない。

アンパンマンは、キャラもシチュエーションもフォーマットも食べ物と非常に強く結びついている。その意味で、食べ物にこだわる高屋敷氏が本作の脚本を何本か書いたのは運命的。

また、今まで高屋敷氏が積んできた経験も、大いに活かされている。先に述べた、空手バカ一代(演出)やルパン三世2nd・MASTERキートン・太陽の使者鉄人28号(脚本)との共通点も、同氏の経験の多さの賜物と言える(どれも今回より前の作品)。

こういった、経験の引き出しは、とにかく高屋敷氏の仕事が積み上がる度に豊富になっていくし、同氏がそれを上手く駆使しているのも見て取れるので、作品を追って比較すると非常に面白い。

今回と同じく中国拳法アクションがある、ルパン三世2ndの43話(高屋敷氏脚本)は、正直話も絵も、あまり良くないのだが、その要素を引き継いだ、太陽の使者鉄人28号(脚本)や今回は、それが改善されている。つまりアップデートが上手くいっている。

また、中華料理に舌鼓を打つ場面は、あんみつ姫MASTERキートン→今回(いずれも脚本)と、時代順に並べると面白い(他にもあるかもしれない)。
この中華料理要素と、前述の中国拳法要素を上手く組み合わせて、今回の話ができているのがわかる。

今回の時代(1999年放送)ともなると、高屋敷氏の経験は膨大なものになっている。そして現代ともなると、更に膨大。カイジ1、2期やグラゼニ(いずれもシリーズ構成・脚本)が、同氏の尋常ではない量の経験の上に成り立っているのを、あらためて実感した。