カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RIDEBACK2話脚本:世界の再構築

アニメ『RIDEBACK』は、カサハラテツロー氏の漫画をアニメ化した作品。
元ダンサー・尾形琳を中心に、人型可変ビークルライドバック”を巡る混乱を描く。監督は高橋敦史氏で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏・飯塚健氏。

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本記事を含めた、当ブログのRIDEBACKに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23RIDEBACK

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  • 今回の話:

コンテ:高橋敦史監督、演出:吉野智美氏・末田宜史氏、脚本:高屋敷英夫氏。

琳は大学にて、ライドバック(人型可変ビークル)部3年の珠代に、ライドバックでの勝負を持ちかけられる。

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冒頭、武蔵野文芸大学のライドバック(人型可変ビークル)部3年の片岡珠代の兄・龍之介と、父・南風の会話がある(アニメオリジナル)。龍之介が警察幹部、南風が政治家なのがわかる。高屋敷氏は、話や設定を簡潔にまとめるのが上手い。

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一方、武蔵野文芸大学では、以前琳が決めてみせた、ライドバック・フェーゴでの大ジャンプを、すずり(琳を慕う1年生)が褒め称える。彼女と琳、しょう子(琳の親友)のアニメオリジナルでのやりとりは、おにいさまへ…(脚本)の奈々子・智子・マリ子のアニメオリジナルの仲良し関係に似る。

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琳達が会話しているのは食堂なので、飯テロがある。高屋敷氏の担当作では、飯テロは定番中の定番。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)、宝島(演出)と比較。

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そこへ、ライドバック部3年の河合と、2年の菱田が現れ、ライドバック部の入部届を琳に渡す。しょう子は、フェーゴ暴走の件をまず謝れと彼等に抗議。原作とかなり違う流れだが、河合・菱田・しょう子・すずり、とキャラの立て方が上手い。

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一方、珠代は岡倉(ライドバック部顧問)に琳の資料を送り、琳が気になるのではないかと煽る。また、琳に、今度の土曜日にライドバックで勝負しろと迫る。こちらも珠代のキャラ立てや掘り下げが、アニメオリジナル交えてサクサク進んでいて上手い。

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負けたら下僕になれと珠代に言われた…と琳から聞き、しょう子は呆れる。原作より、すずりが早めに出ているため、琳・しょう子・すずりの会話はアニメオリジナル。やはりグラゼニおにいさまへ…(脚本)の、アニメオリジナルの仲良し場面と似通う。

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しょう子は、言葉と裏腹に、琳が珠代との勝負を受ける気でいるのを察する。主人公を理解してくれる友達の存在は、グラゼニおにいさまへ…(脚本)でも、アニメオリジナルを入れて印象的に描かれている。

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その後、弟との電話で、琳は珠代がライドバック全国大会1位と知る。また、ネットでライドバックについて調べる。
(琳と同室の)しょう子は、琳が勝負を受ける気満々なのを確信する。やはり理解ある親友として、おにいさまへ…(脚本)の智子と重なる。

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シャワーを浴びながら、琳は、フェーゴに初めて乗った時の興奮を思い出し、ボディースポンジを握りしめる。手による感情表現は頻出。めぞん一刻グラゼニ(脚本)と比較。

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そして勝負日の土曜。琳を見守りたいすずりは、チアガール姿で馳せ参じる(アニメオリジナル)。やはり(1話に引き続き)、主人公を非常に慕う姿が、F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)の岸田に似ている。

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桜と青空が映る。こういった、美しい自然の織り成す「間」は色々な作品に見られる。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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すると、琳が現れる。ここも桜が印象的に描写される。おにいさまへ…・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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レース(初心者の琳のため、大分ハンデあり)が始まると、珠代は、琳が自分と同類だと通信で煽り、琳はそれを否定する。
珠代機のサイドミラーに琳が映るが、真実を移す鏡演出は結構ある。F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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大学の都合で通れない箇所があるため、珠代と琳は回り道する。菱田と珠代のやりとりを聞き、琳は笑う。原作にはない「笑顔」は色々な作品で印象深く描写される。グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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一方すずりは、ライドバックの楽しさを実感しつつあり、菱田はそれを歓迎する。また、しょう子も様子を見にくる(原作初期は、しょう子はライドバックに否定的)。アニメオリジナルを交えて、キャラとキャラをうまく繋げて行っている。

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琳は無茶な操作をして、池に転落するが、フェーゴに「おいで」と笑顔を見せる。
ここも、「原作にない微笑」。こういったアニメオリジナルの微笑は、グラゼニおにいさまへ…(脚本)でもインパクトがあった。

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フェーゴの機体から滴る水滴が池に落ち、水面に波紋が広がる。
意味深な波紋描写は、F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)などにも見られる。

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復帰した琳は、周回してきた珠代を待ち構え、レースを再開する。
機体を復帰させて(どんなに周回遅れでも)ライバルと決着をつけようとする、F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)中盤のアニメオリジナル展開と重なるものがある。

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琳は無茶なアタックをするも、まるでダンスのような華麗なテクニックで着地し、目を輝かせる。
超常の領域にある人間の「輝き」は、あしたのジョー2(脚本)でも表現されている。

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一方、珠代は、猫をよけようとして転倒し、軽い脳震とうを起こしてリタイア。勝負はつかず、全国大会でケリをつけるということに(原作だと琳の勝ち)。
原作と異なるものの、琳の入部や、全国大会への流れがスムーズで、高屋敷氏の話運びの上手さを感じる。

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全国大会に向けてみっちり鍛えると宣言する珠代に、琳は「はい」と微笑む。
ここも「原作にない微笑」。RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニカイジ2期(脚本)と比較。やはりインパクトがある。

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その後、琳はしょう子と土手で話す。フェーゴのEWバンド(ライドバックを操作するためのデバイス)が映るが、大切な物を持つ手の描写は多い。怪物王女カイジMASTERキートン(脚本)と比較。

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これでいいのかと迷う琳に、しょう子は「似合ってたよ」と助言するのだった(アニメオリジナル)。夕焼けの中での友情は、おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)でも描かれた。

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  • まとめ

まず、色々なキャラを立てて、掘り下げて行く上手さが光る。アニメオリジナルも多い(特に、すずり関連)が、アニメはアニメの人間関係が、あっという間に構築されていっている。

この「アニメ独自の人間関係の構築」は、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)やグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも目立ち、比較すると本当に面白い。特に3人単位での「アニメオリジナル仲良し」は、見ていて微笑ましいものになっている。

また、話の密度も濃く、これが22分前後に詰まっているのが信じられない。これは高屋敷氏が、30分2話構成のアニメ作品の、演出や脚本を多く手掛けてきたことが関係するかもしれない。高屋敷氏にしてみれば、22分「も」あるということか。

例えば、高屋敷氏が脚本参加した新ど根性ガエルは、30分2話構成な上にバンクも多く、実質的な尺は8分前後。なのに不思議と、急いでいる感じもしないし、緩急や間も十分ある。この手腕を30分アニメで振るった効果が、今回十分出ている。

今回、情緒や間を色々入れているのに、話の情報量は多い。それでいて、その情報がすんなり視聴者の頭に入っていくように整理されているのも凄い。これには、高屋敷氏の熟練した手腕を感じる。

あと今回、珠代と琳の勝負を軸としながらも、琳の心の動きや、それを温かく見守る、しょう子の存在などを、しっかり描写している点も良い。本作は作画やアクションのクオリティが高いが、こういった、話の構成にも注目したいところ。

原作では、琳がライドバック部に入部するのは、色々あって大分時間がかかる。そのため今回、アニメオリジナル要素が多いのだが、アニメは別世界と割り切って楽しめる(とある悲劇的顛末は共通だが)ようになっている。

このように、一旦原作を解体して再構築し、似てはいるがどこか異なる世界を作る技術は、F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)でも炸裂している。高屋敷氏は、長年一緒に仕事した出崎統氏のように、やる時は原作を大胆に変更する(原作に非常に忠実な場合もある)。

原作を変えるか変えないかは、放映話数の関係もあるのだろう。原作で体感する時間と、アニメで体感する時間は、当然ながら異なる。本作は1クールなので、原作と同じペースでやるのは無理がある。

だからといって、話を“巻き”まくったら、それは漫画のダイジェストになってしまう。それをするくらいなら、アニメ用の“世界”にしてしまう事を選ぶ、というのが本作やF-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)の方針なのだと思う。

ただし、闇雲に原作を解体・再構築していいわけではなく(実際、設定協力に原作者のカサハラ氏がクレジットされている)、“技術”が必要になる。高屋敷氏は“技巧派”であり、きっちりとした技術を使って原作を変えていると言える。

高屋敷氏の原作クラッシュの技術は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ/脚本参加)あたりから、数十年に渡って研ぎ澄まされてきたもの。本作でも、丁寧かつ慎重にそれを行っているように感じられた。